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書籍化:門番の俺、スキル【見送る】でいつの間にか国を救っていた件 - 『剣聖リアムと呪縛の呼び声』- 10
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書籍化:門番の俺、スキル【見送る】でいつの間にか国を救っていた件  作者: 堀籠遼ノ助(ほりこめりょうのすけ)
第二部 第三章

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『剣聖リアムと呪縛の呼び声』- 10

 魔族が塵となって消えた後も、安息は訪れなかった。

 隣村からの生き残りがもたらした、「オークとダークエルフによる壊滅」の報せ。

 翌日から、着の身着のままの避難民が、雪崩を打って村へ押し寄せたからだ。

 その夜。村の集会場は、重苦しい空気に包まれていた。

 議題は一つ。押し寄せる避難民を、受け入れるか否か。


「……無理だ。俺たちの備蓄じゃ、全員共倒れになる!」

「だが、見捨てるのか!?」


 怒号が飛び交う中、僕は静かに手を挙げた。


「受け入れましょう。食料の問題も、オークの脅威も、僕に策があります」


 男の一人が、苛立ちを隠さずに吐き捨てた。


「また若造の机上の空論か?リーダーを失ったオークは散り散りになって襲ってくる。いつどこから来るかも分からねえ奴らを、どうやって狩るってんだ!」


「だから、集めるんです」


 僕は淡々と答えた。


「森の地形を利用した『殺しキルゾーン』を作り、そこへ奴らを誘き寄せて、一網打尽にします」

「誘き寄せるだと? 誰がやるんだ! 腹を空かせたオークの群れの前に、誰が立つって言うんだよ!」


 男の怒声が響く。当然の反応だ。

 命を懸ける根拠もなしに、人は動かない。


「僕がやります」


 その場が、静まり返った。


「……は?」


「僕が適任だ。奴らの習性は把握している。僕が前衛で注意を引きつけ、誘導路へ引き込みます。あなたたちは、安全な高台から、僕の合図に合わせて岩を落とし、矢を射るだけでいい」


 僕は、震えそうになる膝を机の下で押さえつけ、男たちの目を真っ直ぐに見据えた。


「僕の計算では、生存率は八〇パーセントです。……ただ座って飢え死にするよりは、分が良い賭けでしょう?」


 男たちは、言葉を失っていた。


 そこにいたのは、かつての「偽剣聖」と揶揄された臆病な少年ではなかった。


 村の未来のために、自らの命を計算盤の上に置ける、冷徹な軍師の姿だった。


「……おい、若造」


 さきほど怒鳴っていた男が、低い声で尋ねた。


「なんでそこまで、この村のために身体を張る? お前は、元はと言えばただの流れ者だろうが」

「……恩を返したいんです。行くあてのなかった僕を拾ってくれた、この村に。……ただ、それだけです」


 その言葉に、男はバツが悪そうに視線を逸らした。

 重苦しい沈黙。

 やがて、男は大きなため息をつくと、ガタリと椅子を鳴らして立ち上がった。


「……ふん、いいだろう」

「え?」

「だが、俺も同行させてもらうぜ。若者に先立たれちゃ、寝覚めが悪くてかなわねえ」


 ぶっきらぼうな、しかし温かいその言葉に、僕の胸が熱くなった。

 その時だった。

 僕のもう片方の隣に、ぬっと大きな影が並んだ。


「……八〇パーセント? 随分と低い見積もりだな、参謀殿」


 カインだった。

 彼はニカっと笑うと、僕の肩をバシッと叩いた。


「俺も行く。俺が隣にいれば、生存率は一〇〇パーセントだ。……そうだろ?」


 その言葉に、僕は目を見開いた。

 カインだけではない。


「おいおい、団長だけカッコつけんじゃねえよ!」


 一人の若者が立ち上がった。


「俺も前衛に出るぜ! そしたら一二〇パーセントだろ!」

「じゃあ俺もだ! これで二〇〇パーセントだな!」

「いや、お前がいたら足手まといで下がるだろ」

「なんでだよ!」


 ドッと、会場に笑いが起きた。

 さっきまでの重苦しい空気は、もうどこにもなかった。あるのは、頼もしい仲間たちの熱気だけ。


「……はは。計算が、狂っちゃいますね」


 僕は、滲んでくる涙を隠すように、苦笑した。

 孤独な計算など、もう必要なかった。ここには、計算不可能な「信頼」という力があるのだから。


 ――こうして、北の開拓村は生まれ変わった。


 オークの脅威を排除し、その肉を糧とし、避難民を新たな労働力として取り込んだ村は、やがて鉄壁の『砦』へと変貌を遂げていくことになる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 それから、数週間後。

 遠く離れた、王都の東門。

 門番のヨハンが朝の掃除をしていると、見覚えのある青年が、書類を抱えて通りかかった。

 かつて、老学者アルバスの旅立ちを見送った青年、エリオットだ。彼は今や、王立図書館の副書庫長を務めている。


「……おや。ヨハンさん、おはようございます」

「おお、エリオット殿。精が出ますな」


 エリオットは足を止めると、ふと思い出したように微笑んだ。


「そういえばヨハンさん、ギルドで興味深い報告書を目にしましてね。……北の開拓村の話なのですが」

「ほう。北、ですか」

「ええ。なんでも、出現した下級魔族を、村の自衛団だけで撃退したとか」


 エリオットは、抱えていた書類の束を愛おしそうにポンと叩いた。


「報告書には、こうありましたよ。村長のカインという男の武勇と、『リアム』という若い軍師の知略が、村を救った、と」


 ヨハンの箒を動かす手が、ぴたりと止まった。


「……軍師、ですか」

「ええ。かつては『偽剣聖』なんて不名誉な呼び名もありましたが……どうやら彼、ようやく見つけたようですね。自分だけの、剣の振り方を」


 エリオットは、遠い北の空に想いを馳せるように、目を細めた。


「今ではその村長と共に『北の双璧』なんて呼ばれて、近隣の村々からも頼りにされているそうですよ」


 そう静かに語ると、エリオットは満足そうに一礼し、業務へと戻っていった。


 一人残されたヨハンは、北の空を見上げた。


 臆病だった少年が、自らの頭脳という武器を見つけ、背中を預けられる仲間と共に居場所を守る英雄となった。

 その確かな成長に、ヨハンは静かに目を細める。

 その時、脳裏に澄んだ音が響いた。


《ピーン!》

《対象者リアムの旅路に一つの結末を観測。経験値を【獲得】しました》

《スキル【見送る者】のレベルが60に上がりました》

《新たな能力『見送った者が指揮を執る際、その集団の生存率がほんの少しだけ高まる』を【獲得】しました》

《―――臆病な魂が、守るための知恵へと昇華したことを観測》

《レベル60到達ボーナスとして、能力【遠見の目(自身の視力を一時的に強化し、遠くを見渡せる)】を【獲得】しました》


 ヨハンは、湧き上がる力の奔流を、静かに受け入れた。


 彼らが築く北の砦。それはやがて来るであろう、巨大な厄災に対する、人類最初の防波堤となるだろう。

 ヨハンは北の空へ、短く祈りを捧げた。

 また一人、雛鳥が巨鳥となって、空へ羽ばたいたのだ。

猫になって人生(猫生?)やり直します!


書籍化作業のプレッシャーから、癒やしを求めて新作を投稿しました!


『撫でられるのが仕事です。~裏切られ死んだ俺、猫に回帰して仲間を最強にプロデュースする~』




撫でられるほど仲間が強くなる「魅了スキル」で、悲劇の未来をハッピーエンドに書き換える! というお話です。


読んでいただけると、作者のメンタルが回復致します!

それはもう劇的に!

何卒、よろしくお願いします!


[作品リンク]

カクヨム:https://kakuyomu.jp/my/works/822139840522698810

なろう:後日掲載予定

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