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ルミナリーファンタジーの迷宮 - 第一章15  『始まりの音がする街 アルフベル』
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ルミナリーファンタジーの迷宮  作者: 蒼城双葉
第一章 旅立ち編
22/187

第一章15  『始まりの音がする街 アルフベル』

挿絵(By みてみん)


《アルフベル》

 おそらくこの(まち)の名前。

「始まりの音がしそうな名前だね」

 (なぎ)の言いたいイメージもわからなくない。

「アルヒがギリシャ語では始まりを意味しているし、ベルは(かね)。始まりの音って、由来(ゆらい)は凪くんの言う通りなのかもね」

 と、物知(ものし)りな逸美(いつみ)ちゃんが解説(かいせつ)(まじ)えて言った。

「そっか。始まりの音か」

 俺は(あらた)めて街を見る。

 この街は、外から見てもわかる通り、RPGらしい街だった。

 つまりどういうことかというと、街という(わり)にあまり大きくなく、家やお店などの建物(たてもの)の数も(きわ)めて少ないということだ。二十軒に()たないくらいだろうか。

「最初の街なんてこんなもんさ」

 そう言って、凪は街を歩き始めた。



 俺たちは適当(てきとう)なお(みせ)に入った。

 看板(かんばん)には《武器屋(ぶきや)》とあった。

 店内(てんない)に入って武器(ぶき)防具(ぼうぐ)を見てみる。(けん)(やり)(たて)など、簡素(かんそ)(つく)りの物しか売っていないようである。

 俺は(やす)っぽい銅製(どうせい)(けん)を手に取り、まじまじと見てつぶやく。

「ここはプレイヤーにとって、世界観の紹介のためだけの街かもね」

(かい)理解(りかい)が早いね。ぼくもそう思うよ。武器(ぶき)防具(ぼうぐ)はたいして使えないモノしか置いてないだろうね。ここに来るまでにモンスターにはほとんど遭遇(そうぐう)しなかったし、エンカウントしてもスルーもできる。ぼくらには(たい)した武器(ぶき)は必要ないだろう」

「お金もないしね~」

 と、逸美ちゃんが苦笑(くしよう)する。

 だがそうなると、あとはこの店主(てんしゆ)から情報を聞くしかやることはなさそうだ。

「すみません」

 ()びかけると、店主らしきおじさんがこちらを向いた。

「いらっしゃい」

 凪が一歩進み出て、

「聞きたいことがあるんですが」

「なんだい?」

「メニューオン」

 と、凪はメニューを(ひら)き、共有状態(きようゆうじようたい)にしてから、アイテムボタンを押した。(から)一覧(いちらん)表示(ひようじ)されるかと思ったが、なにやらアイテムがいくつかあった。

 いつのまに!

「これはいくらで売れますか?」

「石、これは0ゴールドだ。モミの()、これは1ゴールドだ。(へび)イチゴの()、これは5ゴールドだ」

「じゃあ全部(ぜんぶ)売ります」

毎度(まいど)あり」

 凪の()()ない行動(こうどう)内心(ないしん)では感心(かんしん)しながらも、俺はジト目を向ける。

「おい凪、いつのまにアイテムなんかゲットしてたんだ?」

「キミたちが周りをキョロキョロしてるときに、(ひろ)っておいたのさ」

 なんでもないささやかなことのようにさらりと答える凪。

「アイテムって、どうやって保存(ほぞん)するの?」

「ヘルプに書いてあるよ。メニューを(ひら)いて、アイテムに追加(ついか)ってボタンを押すだけさ」

 ホントにこいつ、いつのまにそこまで確認してたんだ。俺や逸美ちゃんや鈴ちゃんはただレジャー気分(きぶん)で歩いていただけだっていうのに。

「ヘルプの存在(そんざい)にも気づかなかったよ、俺は」

「メニューにヘルプがないゲームなんてないぜ?」

 フン。俺はゲーマーでもなんでもないのだ。いっしょにするな。

 思い出して俺は店主(てんしゆ)さんに向き直る。

「そうだ。あの、店主さん。このお店は、武器(ぶき)以外(いがい)には売ってないんですか?」

武器(ぶき)だけだ。(ほか)の物が欲しい場合、(ほか)のお店に行くといい」

「そうですか」

 残念(ざんねん)

 続けて、鈴ちゃんが質問(しつもん)する。

「ちなみに、この近くには街はあるんですか?」

「ん?」

「ええと、この街の近くにも、街や村はありますか?」

「ん?」

「なんであたしの言葉は(つう)じないの……」

 鈴ちゃんは(こま)ったようにうなだれて、眉尻(まゆじり)を下げた。

 (となり)で、凪がくすっと笑う。

「なんですか先輩(せんぱい)

 涙目(なみだめ)の鈴ちゃんにジロリとにらまれても、凪はおかしそうな顔のままだ。

「鈴ちゃん、(かれ)はNPC。つまり特定(とくてい)の質問にしか答えられないコンピュータさ。いくら頑張って質問しても無駄(むだ)だよ」

「ちょっとっ、なんで早く教えてくれないんですか! もう」

 鈴ちゃんは()ずかしそうに顔を()()にして、凪の(ふく)(すそ)をぎゅっと(つか)む。

()れなくてもいいよ。ぼくは笑わないさ」

「顔が笑ってるっ」

 と、鈴ちゃんは悔しそうに凪を見上げてにらむ。

「こういう(ふう)に欲しい情報があるときは、街の人ひとりひとりに話しかけていかないといけないんだ」

「あらあら。ゲームは大変ね」

 この逸美ちゃんの(やさ)しい眼差(まなざ)しと凪の楽しそうな顔を見て、俺は内心(むね)()()ろした。ホント、おじさんに(ほか)の質問をしなくてよかった、と。


 さて、俺はみんなに聞いた。

「じゃあ、武器屋(ぶきや)()られる情報もないことだし、次行く?」

「ぼくは(かま)わないよ。鈴ちゃんもいいかい?」

「いいですよ」

「うむ。そうかい。いまみたいに知らないことがあったら、鈴ちゃんもいくらでもぼくを(たよ)っておくれ」

「くぅ。普段(ふだん)はちゃらんぽらんなのに、ゲームの中ではちょっとばかり(たよ)りになるところが腹立(はらだ)たしいです」

「ははっ。ぼくはキミたちといると退屈(たいくつ)しないよ。おもしろい」

 また(くや)しそうな顔で鈴ちゃんににらまれているにもかかわらず、凪はホントに愉快(ゆかい)そうなものである。



 それから、俺たちはこの街にある教会(きようかい)やよろず屋など何件(なんけん)かを回った。しかし、服屋(ふくや)はなく、衣装(いしよう)はまだ私服のままだ。この世界に馴染(なじ)まないから早く着替(きが)えたいな。

 よろず屋では。

(ふく)はこの先に大きな街があるから、そこで買うといい」

 と、おじさんが言っていた。

 そして、他に。

 この街を歩き回って得られた情報は――

 ここから北に少し(はな)れた場所(ばしよ)に、大きな街があるということ。西にはアンデッドの住む洞窟(どうくつ)があるということ。教会では蘇生(そせい)――つまり死んでからのリプレイ以外(いがい)にも、(どく)麻痺(まひ)などの健康状態(けんこうじようたい)(なお)せること、などだ。

 また、さっき凪が作ったゴールドを使い、よろず屋で地図(ちず)入手(にゆうしゆ)した。

「地図があると安心感(あんしんかん)がありますね」

 笑顔(えがお)の鈴ちゃんに俺もうなずく。

「だね。(とく)全然(ぜんぜん)知らない世界だから、これほど心強(こころづよ)いものはないよ」

「でも、地図には大陸(たいりく)がひとつしか()かれてないわよ? これって、この世界はこの大陸ひとつってことかしら?」

 (なや)(がお)の逸美ちゃん。

 この疑問(ぎもん)には、思いついたことを言ってみる。

「おそらく、海の外は未開(みかい)なんだよ。ほら、(ふね)の絵がある」

「ほんとだ。端っこにあるわね」

「しかも外に向かって進んでいる。すなわち、この地図からはみ出した部分の海には、別の大陸か島がある可能性が高いと言える」

(かい)さん、さすがですね」

 と、鈴ちゃんが感心するが、俺の(となり)で凪が()れたように頭をかく。

「いや~。ぼくお手柄(てがら)?」

先輩(せんぱい)じゃなくて開さんに言ったんです」

 この地図、不親切(ふしんせつ)にも街の名前は書いていないけど、この《アルフベル》という街の名前だけは(しる)されていた。その点について逸美ちゃんも、

「他の街の名前も()っているとよかったのにねぇ」

「場所と方角(ほうがく)はわかるんだし、自分たちで探索(たんさく)して()めていこうよ」

 俺がそう言うと、凪が言った。

「これは(おとず)れた場所の名前が、自動的(じどうてき)にマッピングされるシステムだと思うぜ。だから、この街だけ名前があるんだ」

「なるほどね。じゃあ、できるだけたくさんの街の名前を()めたいね!」

「うん」

 と、逸美ちゃんがうなずいた。

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