第二章21 『海のドラゴン スイリュウ』
順調にソロモン島へと航海していたが。
その途中、さっき海に出てすぐに見かけた海のドラゴンを発見した。
この距離だったら近づける。
「ちょっと近づいてみない?」
俺はみんなに向き直って聞いた。
さっき薬草で体力も回復したし、もしバトルになっても大丈夫だろう。
逸美ちゃんはうふふと微笑む。
「開くんは小さい頃から恐竜が好きだったもんね。行ってみよっか」
凪は肩をすくめて、
「やれやれ。逸美さんはすぐに開を甘やかす。あれに襲われたらどうするんだ。強そうじゃないか」
鈴ちゃんはくすっと笑う。
「そんなこと言って、先輩もちょっと興味あるんじゃないですか?」
「ぼくはそれほどじゃないけどね。子供のように目を輝かせている開とは違うよ」
俺は子供じゃないぞ、と言い返してみたけど、凪も乗り気だったのか、口ではああ言っていても操縦桿を握り、進路はモンスターへと向かっていた。
近づいてきて、名前が表示される。
スイリュウ。
すなわち、水の竜。
海を泳ぐこの竜は、体長もハッキリとは把握できないほど大きい。十メートル以上はあるんじゃなかろうか。青いウロコに覆われた体は頑丈そうで、これまで見てきた可愛いモンスターと違い、美しさがあり、強く赤い眼光は風格すら感じる。ヘビのような体型で、手足はないようである。頭にあるひらひらとしたたてがみのようなものが、どこか神秘的な印象さえ与えていた。
俺はさっそく、魔法を唱える。
「ここはやるしかないよね! 《雷火》!」
水は電気を通す。
魔法の属性の相性は悪くないはず。
果たして。
スイリュウは、俺たちに襲いかかるように向かってきていたけど、《雷火》をくらって、苦しそうにHPゲージを減らした。
しかし、まだ残りは五分の四ほどある。
こいつは相当に強い。
防御力かHP、もしくは魔法耐性がかなり高いと思われる。
「ぼくも加勢する!」
凪は《ケリュケイオン》をかざした。
「先輩、だからその魔法は使わないでくださ――」
鈴ちゃんが急いで止めに入ったが、
「《ラファール》!」
もう、凪は魔法が唱えてしまった。
が。
俺たちは言葉が出てこない。
「…………」
「…………」
「…………」
凪は《ケリュケイオン》を見直す。
「あれ? おかしいなぁ、魔法が使えない」
「ズコー」
と、鈴ちゃんがこけている。
でも、遊んでる場合じゃない。
「鈴ちゃん、魔法だ」
「はっ、はい!」
声をかけると、鈴ちゃんは慌てて魔法を唱える。
「《牡丹雪》」
鈴ちゃんの魔法では、スイリュウとの相性は特別よかったわけじゃないのか、減ったHPは八分の一ほど。
すかさず、俺も魔法を唱えた。
「《雷火》」
剣に雷と炎が宿り、スイリュウを引きつけ、斬りかかる。
《雷火》をまとった《天空の剣》で攻撃!
実はまだ、アーゴス戦で使った《国士無双》の回数が残っていたから、物理攻撃を交えたこの一撃で大ダメージを与えられた。
さらに言えば、スイリュウはドラゴン。つまり、ドラゴンスレイヤー《天空の剣》がより効力を発揮した結果だろう。
これでスイリュウの残りHPは五分の一を切る。
さらに俺は《天空の剣》による物理攻撃での連撃。
そして、これによってスイリュウのHPは一気に0になった。
よし。
アーゴスよりはさすがに強くはないけど、こいつはこれまでのモンスターよりずっと強かった。
「やったー。倒したね、開くん」
「スイリュウ、もし仲間にしたら強かったんだろうな」
「水中でしか活躍できない可能性もあったけどね」
と、逸美ちゃんが笑った。
「確かに。言えてる」
ちなみに、ドロップアイテムは《スイリュウのたてがみ》だった。スイリュウが強いモンスターだったし、これは高値で売れそうだ。
さっそく図鑑を確認する。
「なんで骨の研究で嗅覚の鋭さがわかるんだろう?」
俺が頭にクエスチョンを浮かべると、逸美ちゃんが教えてくれた。
「鼻の部分の骨に、小さな穴がたくさん空いているんじゃないかしら。神経血管孔と呼ばれるもので、つながった穴がネットワークになり、匂いを感じ取ることができるの。だけでなく、センサーにもなっているわ。ワニなんかがこの神経血管孔を持っているんだけどね。水中での微細な物の動きを認知できるのよ」
「超大型の恐竜、スピノサイウルスなんかも神経血管孔を持っていると言われているね。大型の恐竜が素早く反応し、小さく素早い魚を捕食できるのは、このおかげなんだ」
と、凪が言った。
俺は顎に手をやり、
「へえ。なるほど。大型のスイリュウには適しているな」
「逸美さんも先輩もよくそんなこと知っていますね」
まったくだ。いっしょにいてわからないことがあれば、なんでも教えてくれそうな勢いである。
「ただ、システムや謎を解き明かすのは開にしかできない。そしてオーバーなリアクションは鈴ちゃんしかできない。ぼくらはそうやって協力していけばいいさ」
「はい。て、あたしがリアクションしかできないみたいじゃないですかっ!」
鈴ちゃんにつっこみをされて、凪は「ははっ」と笑っている。
すると。
「あれは……」
島が見えてきた。
きっとあれが、ソロモン島だ。