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第一次「異」世界大戦 - 外交も経済も戦争
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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
52/201

外交も経済も戦争

新世界暦1年3月20日 多島海南方海域 海上自衛隊護衛艦 FFM-203「あがの」


世界樹島近海の警戒任務についていた「あがの」に、P-1から国籍不明艦隊発見の報が入ったのは数時間前のことだった。

とりあえず敵対行動はとらなかった、ということで最寄りの護衛艦が接触することになり、世界樹島北側で警戒についていた僚艦の「のしろ」を残し、「あがの」が全速で向かっている状態である。


一応、海上保安庁に通報はいったものの、付近に急行可能な巡視船がいないのと、明らかに軍艦ならミリタリートゥミリタリーのほうが良かろう、ということで護衛艦が向かうことになった。


海上自衛隊初のフリゲート艦扱いで建造された「やはぎ」型護衛艦の3番艦である「あがの」は、武装としてMk45Mod4 5インチ砲、SeaRAM、対潜魚雷発射管、17式艦対艦誘導弾と、一通り護衛艦として必要な武装は備えている。

Mk41VLSも装備はしているものの、目下のところ中身は申し訳程度にVLAが数発装填されている以外は空っぽである。


そして、その特徴的なCICの中で艦長は溜息を吐いていた。


「とりあえず行って話してこいって、言語どうすんだよ・・・」


P-1からの映像では、第二次世界大戦レベルの水上戦闘艦と護衛空母か何か、といった感じの8隻である。

つまるところ、アズガルド神聖帝国のあった世界の国の艦隊だろう、という目星は付くが、アズガルド語の語学教育は、ようやく教育体系を組めるくらいの目処は付いたかな?という状況である。

もちろん、この艦に話せる人間はいない。


「艦長、間もなくレーダーの探知圏内に入ります」


円形の部屋の中央に置かれたコンソールの前で頭を抱えていた艦長に砲雷長が声をかける。

そう、この艦のCICは円形なのである。

その壁面は、出入口のある1ヶ所を除いて、全周にわたって大型モニターが設置されており、自艦のセンサー情報やデータリンク、戦闘状況は勿論、機関運転状況やダメージコントロールに至るまで、艦のありとあらゆる情報を見回すだけで把握できるようになっている。


そのあまりのSFっぷりに、初めて見た者は例外なく、思わず唸ってしまうという、いくつも護衛艦として新しいことにチャレンジしたFFMの中でも、特に特徴的な部分である。


「総員、戦闘配置、対水上戦闘用意」

「総員、戦闘配置、対水上戦闘用意」


特徴的なアラームとともに、号令が艦内に響き渡る。

友好的な態度らしい、とはいえファーストコンタクトが物騒な物だった、ということに事欠かないのがこの世界である。

警戒はしてしかるべきである。


ちなみに、すでに爆装したF-2部隊が百里から硫黄島に進出している。

なんでもロシアの東京急行や中国の示威行動がなくなって、頻度が大きく下がったせいで、百里のスクランブル待機は、対艦ミサイルを抱いた状態での待機に切り替わったらしい。


「護衛艦隊司令部より緊急連絡、通訳をMV-22で派遣したので受け入れ態勢をとれとのこと。重要人物(VIP)なのでくれぐれも丁重に、とのことです」

「OPY-2が接近する航空機を探知、IFF照合、陸自のMV-22です」

「TACANで誘導してやれ」


そう言いながらも艦長は、相手の言語も不明なのに通訳?と首を傾げるのだった。





新世界暦1年3月20日 多島海南方海域 海上自衛隊護衛艦 FFM-203「あがの」 ヘリコプター甲板


「おー、すっごいね!船だよ船!それも鉄の!」


MV-22はFFMのヘリ甲板に降りることはできないので、1人ずつウインチで吊り下げて降ろす必要があった。

そうやって運んできたのは、通訳であるところのウルズ(お気楽エルフ)と付き人の北条と武田である。


「あーそっすね」


最近、ウルズの無茶振りに慣れてきて多少のことでは動じなくなった武田は無表情である。


「あんまりはしゃいでると落ちますよ」


一方の北条は最近、完全にウルズの保護者である。

というか、お前ら出来てんのか、というほど互いにベタベタしているので、武田は内心で爆発しろと思って、そういう場面に遭遇するたびに2人に中指を立てることにしている。・・・内心とは何か?


「というか、ウルズさんが来ることに同意したってことは、危険はないんですか?」

「無い無い。こっちから仕掛けない限りは平和的に接触できるから」


引きこもり気味で小心者(チキンハート)なウルズは、基本的に日本政府に請われても、危険があったり興味が沸かなければ何のかんのと理由をつけて島から出ない。

北条も完全にウルズに甘々で、最終的になんのかんのと上手い具合にウルズの要望を通してしまうので、ますますウルズは島でダラダラしていた。


「たまにはお仕事して私も役に立つってところをアピールしとかないとねー」


そうウルズは言うが、普段から役に立つ気がねーならずっと島にいてくれたほうが「無い物」として扱えるから上がいらん期待抱かずにすむ分、楽なんだよ、と北条は内心思うのだった。





新世界暦1年3月25日 日本国東京湾 横浜港大桟橋 王立ラストール海軍外洋偵察艦隊(臨時編成)旗艦 艦隊給油艦「アトランティック」


タグボートに支援されて、着岸しようとしているアトランティックの飛行甲板から、提督は桟橋に整列した軍楽隊を始めとしたホスト達を見遣る。

振り返れば、自国の港でもよく見かける赤レンガの倉庫が見えるが、その背後には高層ビルが並んでいる。


「首都の隣の都市だ、ということでしたが、かなり発展しているようですね」


提督の視線に気付いた航空参謀が声をかける。


「そのようだな。さんざ脅されたからもっと突拍子もない街並みかと思ったが、案外普通で安心した」


日本国を名乗る国の海軍艦艇と接触した後、あれやこれやとやり取りをしたものの、敵意はなく、状況がわからず、情報が欲しいので外交関係を結びたい旨を強調して伝えたところ、じゃあ、遠路はるばる来たんだし、寄ってけば?みたいな軽いノリで招待されてここに来たのである。

この桟橋まで来たのは、旗艦と重巡1隻だけで、残りの6隻は湾内に入ってすぐ別れ、別の艦の先導で軍港に向かった。


「それにしても、あれが軍艦とは俄かに信じられませんなぁ」


そういう通信参謀の視線の先には、接触後はホストシップとしてずっと付き添っている軍艦の姿がある。


「だが、アズガルド神聖帝国が敗れた相手だ。我々の常識では計れない何かがあるのだろう」


日本国に接触して、一番驚いたことは、すでに同盟国であるアズガルド神聖帝国と関わりを持っていたことである。

しかも、あのアズガルド神聖帝国が手も足も出ずに敗れたと言う。

その話を日本側から聞いても信じられなかったが、たまたま日本を表敬訪問中だったアズガルド神聖帝国海軍中将とアズガルド神聖帝国駐日大使からも聞かされて、哨戒機に敵対行動をとらなかった自分の決断を誉めてやりたくなった。


ちなみに、アズガルドの海軍中将に冗談で「我が国が日本国と敵対することになったらどうするか」と聞いたら、真顔で「最も古い同盟国である貴国との条約を破棄して、互いに戦わねばならなくなるとは残念だ」と言われた。

条約破棄して中立宣言どころか、日本側について戦う発言に、提督はそれほどの相手だったのかとしばし絶句したのだった。


「しかし、それにしても、みかん、うまかったな・・・」

「ええ・・・これまでの人生で食べた中で最高の食事でした・・・」


提督と参謀たちは遠い目をして、日本の軍艦と接触したときに分けてもらったみかんを思い出した。

長期間の航海で、ここのところ食事は缶詰や燻製などの保存食ばかりだ、という話を雑談がてらにしたら、向こうの艦長が哀れに思って一箱分だったが、みかんをくれたのである。

なんでも実家が農家で、いつも腐るほど送られてくるから艦内で配るのだという。

つまり私物だから、気にする必要は無い、とわけである。


結果、艦隊司令部要員と旗艦士官が役得となったわけだが、全員泣きながらひと月以上ぶりの新鮮な果実を味わった。

久しぶりの柑橘類だから上手かった、というのももちろんあっただろうが、母国でとれる柑橘類はあんなに甘くない気もする。品種が違うのだろうか?


と、軍楽隊が演奏を始めたのに気付いて、もう一度身だしなみを確認する。

国の代表として初めて日本の土を踏むのである。

友好関係を結びに来たのだから、相手が誰でも堂々と、胸を張って行こうと提督は大きく息を吸った。





新世界暦1年3月25日 アズガルド神聖帝国 帝都アガルダ 首相官邸


「ラストール王国が日本と接触したんだって?」


晴れて首相に就任したアルノルドが秘書官に尋ねた。


「はい、世界状況を調査するために派遣した艦隊が日本の哨戒網に引っかかって、平和的に外交交渉を開始したみたいです」

「なにそれ羨ましい」


ラストール王国はアズガルド神聖帝国の古い同盟国である。

歴史的には、元々対等な同盟関係だったのだが、長い時間が経過するうちに海外領土を拡大していったアズガルド神聖帝国の国力が増大していき、今ではアズガルド神聖帝国を盟主とするような形になっている。

もっとも、海空軍が半壊したアズガルド神聖帝国と戦力比は逆転している可能性もあるが。


「てことは、ラストール王国のドラスト大陸派遣軍は使えるようになるし、少しは楽になるかな」

「まぁ、現状でも別に苦しいわけではないですが」

「本国がガラ空なんですけど!?」


苦しくないのはドラスト大陸軍の戦況であって、国自体は苦しいから!と強調する首相。


地続きになったドラスト大陸にホリアセ共和国が侵攻してきたものの、未開の地域同士がくっついたせいで、密林に阻まれて陸軍は前進できず、航空戦のみ、それも散発的なものにとどまっている。

ホリアセ陸軍は密林を切り開いて道を作ろうとしているようだが、それを妨害しようとアズガルドは爆撃機を出し、それを止めるためにホリアセが迎撃し、といった具合で、戦線自体は開戦時からほぼ動いていない。


「まあ、いいや。そういえば日本との貿易が始まったみたいだけど、支払いってどうしてんの?」


もともと賠償のために採掘権を日本に引き渡したのも、為替レートとかさっぱりわかんねぇよ。という理由だったのだが、日本から早くも自動車を輸入というか、しれっと正規代理店権までもぎとった猛者がいるので支払いが発生しているはずである。


「金で支払ったみたいですね」

「は?」

「金ですよ、金。人間どこの世界でもきんぴかには価値を見出すんですねぇ」


ちなみに、アズガルド神聖帝国は金本位制だったので、最初から賠償も通貨で払えたのだが後の祭りであり、貿易のほうも日本側は通貨ではなく最初から金での支払いを要求したせいで大規模な金の流出を招き、アズガルドの通貨に信用問題が発生し、その一方で突然大量に出所不明の金が流入したことでマーケット価格も暴落して阿鼻叫喚の様相となった。

結果、いろんなところが介入することになり、日本の自動車メーカー数社とアズガルド側の代理店数社がいろんなところに怒られることになるのだが、それはもう少し後の話である。


「そういや、日本から輸入した自動車を市場に出す前にランヴァルドが割り込んで軍に優先して配車したって顰蹙かってたな」

「全てドラスト大陸に送って使うと言う話でしたね。そんなに性能に差があるんですか?」


日本に行っていなかった秘書官はいまいち実感がわかないようだが、あの占領地域の自動車を見ただけでも、あれが使えればどれだけ行軍や補給が楽になるかと思ったアルノルドは、心の中でランヴァルドGJと思ったのだった。

今週は出かけるので、次回更新は木曜日になると思います。

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