Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
第一次「異」世界大戦 - 停滞
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
72/201

停滞

新世界暦1年5月7日 旧エルサルバドル上空


「おのれ!おのれ!おのれええええええ!」


憤怒の表情で喚きながら小型飛行艇を操縦しているのは、海兵隊が魔導装甲兵と交戦している隙に逃げ出した聖女である。

意外かもしれないが、一通りの軍事教練は受けているので、飛行艇を飛ばせるし、歩行戦車も操縦できるのである。


本国を目指さずに、侵攻部隊に戻る方を選んだのは、単純に敵が前から来たので、本国はすでに敵の侵略を受けていると判断したからである。


「何度も何度も、崇高なる神の導き(聖戦)を邪魔しやがって!聖者タスマンの教えも理解せぬ蛮族共がああぁ!」


憤怒に染まったその表情は、一言で言えばドン引きである。

そこに聖女(アイドル)として創られるに相応しい端麗な容姿の面影は無い。

ただただ、怒りしか見出すことができない苛烈さである。

それを見るものが誰もいないのは、彼女にとっては幸いだっただろう。


失敬してきた小型飛行艇は、軽輸送用のものなので戦闘用のものほどスピードはでない。

本来なら魔導装甲兵2体も乗せるはずだったのである。

これを失ったのも、聖女にとっては完全に誤算だった。


「あ?」


そんな怒り狂う聖女に冷や水を浴びせる警報が機内に響いた。

魔導障壁の発動を知らせる警報である。

敵の弾速が魔導弾より速いらしい、ということで感知範囲を従来より広くしたため、誤作動も多いと現場では不評だったが、発動しないよりはよかろう、ということになっていた。


続いて、魔導障壁の発動時間終了を知らせる警報が鳴り、魔導障壁が消失した。


その直後、聖女は激しい衝撃を感じ、コンソールに叩きつけられた。


飛行艇もそのまま降下し、地面へと叩きつけられたのだった。





新世界暦1年5月7日 旧エルサルバドル上空 飛行艇後方


目標撃墜(Look Kill)作戦(Mission)完了(Complete)帰還する(RTB)


聖女の飛行艇にAIM-120を撃ち込んだのは、海軍のバックアップのために急遽アメリカ本土から飛んできたF-15Eである。

突入は成功したので、敵が救援を差し向ける気配があれば、それを攻撃するのが任務だったのだが、逆に目標から逃げてきたのを攻撃するのに役立ったわけである。


メキシコシティ近郊にいる敵が援軍を差し向ける気配は無かった、というか気付いた気配も無かったので、もう少しで完全な無駄足になるところだったが、期せずして星がついたパイロットは上機嫌で帰路に就いたのだった。





新世界暦1年5月8日 アメリカ合衆国ワシントンD.C. ホワイトハウス


結局、敵に戦略核攻撃を行う能力は無さそうだと言うことで、E-4Bで飛び回っているのも不便な(カネがかかる)ので大統領はホワイトハウスに戻ってきていた。

もっとも、念のために副大統領(NORAD)国防長官(ペンタゴン)はそれぞれそのままである。


「メキシコシティの敵は依然として動きが無いですね」


陸軍長官の言葉に、大統領は唸る。


「障壁の中に閉じこもって貝のように動かないとは、我武者羅にこっちに向かって来られるよりましとはいえ、厄介だな」


これまでのところ、敵の動きは本国と連絡をとろうとしたらしい飛行艇を一度出しただけで、進軍も撤退も一切の兆候が無かった。


「飛行艇は鹵獲できたのか?」

「まぁ、どうにか。捕虜も少し得られましたが、これまでと異なり、艦長クラスらしいのがいるとのことなので、何か引き出せるといいのですが」


これまでの狂ったように罵声のような同じことを繰り返し叫ぶ捕虜を思い出して、陸軍長官は渋い顔をする。

ベリーズシティで奪取してきた文書の言語解析は進めているとはいえ、音に関しては文書ではわからないので、サンプルが必要なのである。


「まぁ、場合によっては”治療(おくすり)”が必要でしょうし、結果待ちですね」

「せっかく得られた貴重な捕虜(サンプル)だ。丁重に、な」


それ以上は2人とも捕虜の話題には触れずに、話題を転換する。

情報を得る手段を深堀しても、後々いろいろ(議会やマスコミ)面倒だからである。


「そういえば、その鹵獲した飛行艇から逃げ出したのがいるって?」

「小型の飛行艇が1機だけですが。警戒中だった空軍機が撃ち落としてます」

「それは回収したのか?」

「原型はとどめているものの、回収するとなるとそれなりの重量がありそうですし、結構面倒ですので現状では放置です。鹵獲した飛行艇内にも搭載されていたのがありますし、危険を冒してまで回収する必要は無いかと」


ほとんどの敵はメキシコシティ方面にいるとはいえ、中米諸国にも一部兵力は残っているため、それを殲滅しない限り陸路での回収は困難である。


「とりあえず、メキシコシティ以外にいる敵の掃討をどうするか」

「大規模な障壁はないとはいえ、航空戦力のみで殲滅するのは困難ですし、かといって抽出できる地上戦力は今回の作戦の規模で限界でしょう」


その言葉を聞き、はぁ、と大統領は溜息を吐く。


「被害集計は済んだのか?」

「軍に関してはある程度」


結局のところ、メキシコシティで避難せずに残っていた市民の数が不明なので、完全な被害集計は不可能だったということである。


「まずアメリカ陸軍で48万8957名が行方不明(MIA)。海兵隊は8万855名がMIA。メキシコ陸軍、同23万5680名。中米諸国連合軍、損害不明、休養で後送されていた機甲部隊を除いて全滅の模様」


死体を確認していないので行方不明、というわけだが、まぁ、どうなったかはお察しである。


「続いて負傷者ですが、重傷2万1583名、重傷化すると思われる者12万3685名」

「負傷者少なくない?」

「確認できていない者は全てMIA扱いですので」


線量の高いエリアの捜索は全く行われていない状況なので、自力で脱出できたものだけが負傷者にカウントされているのである。

もっとも、そんなエリアに留まっていれば、いずれ完全にMIAの仲間入りだが。


「他に兵站を担う民間会社の人間が20万人ほど行方不明ですね」

「軍の再建は可能なのか?」

「人員については現役と予備役、半々で投入していたとはいえ、戦車の喪失は致命的ですね。一線級のM1A2、M1A1はほぼ全量喪失と見ておくべきかと」

「人員の喪失だけでも頭が痛いのに、装備もか」


全くありがたくないことで歴史に名を残すことが確定した大統領は、やれやれと頭を抱える。

人の命を数字でしか見ないのが政治家とはいえ、その数字は1人で背負うには多すぎた。


米軍の主力戦車はM1エイブラムスで統一されているが、調達、運用期間が長いせいでバリエーションが多すぎて、陸軍と海兵隊で同じように見えて微妙に違う仕様が入り乱れている。

とはいえ、120mm装備のM1A2とM1A1はほぼ全量、約5000輌がメキシコシティ戦線に投入されていたので、相当数が失われたと見るべきである。


アメリカに残る戦車は、予備役として保管されている、未改修で105mm砲装備のM1が約2000輌。それが全てである。

ぶっちゃけ、陸軍としては入れ替えるなら、改修しまくって70tとかいうわけのわからない重量も見えてきている戦車ではなく、新しいのを入れたいのだが、開発していないものは作れない。

継続というのは意外とバカにできないものである。


「軍産複合がどうのと騒ぐ奴らがまた沸いてくるな」

「戦争特需なんて碌なものじゃないんですがね。後に残るのは過剰投資の生産設備だけですよ」

「人員整理された労働者を忘れとるぞ」


どっちにしてもありがたくない置き土産である。


「とりあえずメーカーに緊急生産計画を立てさせます」


いずれにせよ、反対意見を押し潰す理由(戦時体制)はあるので、今はとにかく軍の再編を最優先にするしかないか、と大統領は問題を先送りするのだった。


逃げ出して撃墜された飛行艇を回収に向かわせるべきだったと、方々が後悔することになるのは、言語解析が終わり、捕虜の尋問が可能になってからのことである。

次回からしばらくアメリカはお休み。

被害は適当。あとで修正するかも。


次は金曜日?一応、土曜日まで見といてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ