第93話 レベリング配信③
次に釣られて来たのはミニ・ワーウルの群れが三匹。
私とライムスは協力してミニ・ワーウルをやっつけたよ。
するとどういうわけか、次にやって来たのもミニ・ワーウルの群れだった。
たまにゴブリンやキック・ラビット、スライムたちもやってきたんだけど、やっぱり一番多いのはミニ・ワーウルだったよ。
「そっか。ミニ・ワーウルは狼のモンスター。狼といえば肉食ってわけだね?」
『ガルルゥ!』
『グオウ!!』
『グルァッ、グルルルル!』
「ライムス、そっちの一匹は任せたよ!」
『きゅぴーっ!!』
私の指示を受けて、ライムスはグニィ……と力を溜めて、一気にジャンプ!
今までだと体当たり攻撃だったけど、今はスライム・ヘッド(剣)を装備しているおかげで、強力な刺突攻撃になっているよ!
あんな攻撃が直撃したら、ミニ・ワーウルなんて一撃で倒されちゃうよね。
それを本能で察しているのか、ミニ・ワーウルは一生懸命にライムスの攻撃から逃げ回っていた。
そして私の目の前には二匹のミニ・ワーウル。
私はパラライズ・ソードを構えて一気に駆け出した。
「とりゃーーーっ!!」
『ガルウッ!!』
ガギィンッッ!!
パラライズ・ソードとミニ・ワーウルの牙が衝突して、まるで鍔迫り合いでも起きたかのように鋭い音を周囲に響かせた。
それだけミニ・ワーウルの牙は頑強ってことだね。攻撃を喰らわないように気を付けなきゃ。
『ガルルルル……』
「ふふっ。背後からこっそり狙うだなんて悪い子だね?」
パラライズ・ソードでミニ・ワーウルを受け止める傍ら、二匹目のミニ・ワーウルが背後からゆっくりと迫ってきていた。
でも、もう既に対策は済ませてあるんだよね。
私はこっそりとポケットに左手を入れて、あるモノを握りしめた。
『ガルアアーーーーーッッ!!』
このチャンスを逃すものか!
きっとミニ・ワーウルはそう言いたいのだろうね。
でも残念。
むしろチャンスをもらったのは私のほうだよ。
「やあ!」
私はパラライズ・ソードを全力で押し込んで、ミニ・ワーウルを跳ね返した。
それから、後ろから飛び掛かってきたミニ・ワーウルに一本の小瓶を投げつけた。
この小瓶の正体は、察しの良いリスナーならもう気付いているだろうね。
私が放り投げたのは塩コショウだよ。
ミニ・ワーウルの数が増えてきたから、これは使えそうだと思ってポケットに忍ばせておいたんだ。
ミニ・ワーウルは狼のモンスター。
そして狼といえば嗅覚が優れていることで知られている。
同じ特徴を持つミニ・ワーウルにとって、この攻撃はかなり効くだろうね。
そんな私の予想通り、ミニ・ワーウルはジタバタと転がって苦しそうにしているよ。
『ギャンギャンッ! ギギャアアアッ!!』
「少しの間そこで倒れててね」
そして私は再びパラライズ・ソードを手に取って、一匹目のミニ・ワーウルに飛び掛かる。
周囲に飛び散った塩コショウがまだ漂っているのか、こっちのミニ・ワーウルの動きも少し鈍いね。
それに目尻からは涙を浮かべている。
目と鼻が良いっていうのは普通はメリットだけど、こういうときには弱点になっちゃうんだね。
「やあっ!!」
ザシュンッ!!
『グルァーーーッ!!』
断末魔の雄叫びを上げて、ミニ・ワーウルがぽふんっ! と煙になったよ。
そして1つの毛皮をドロップしたけれど、私はそれには脇目も振らずに、地面に顔を擦りつけるミニ・ワーウル目掛けてパラライズ・ソードを容赦なく振り下ろした。
「えいっ!」
ザンッッ!!
『グッ、ギャガァ!!』
ぽふんっ!
「やった、ミニ・ワーウルをやっつけたよ!」
満面の笑顔を作って、カメラの前でポーズを決める。――と、その時。
私は久し振りに、世界の声を耳にした。
ぱぱぱーん!
――おめでとうございます。個体名・天海最中のレベルがアップしました。
「あ! ねぇねぇみんな。いま、頭の中で世界の声が聞こえたよ。やったあ、これでLvが14になった! よーし、この調子でもっともっとレベルを上げていくよ! ……と言いたいところだけど」
私はグリルの上から漂う美味しそうな匂いを前に、ぐうう、とお腹を鳴らす。
ライムスなんて、目をうるうるさせながら、まるで懇願するかのように私のことを見上げているよ。
こんなお願いするような顔で見上げられたら、私としても甘やかすしかなくなっちゃうよ。
だってこんなにもカワイイんだもんっ!
私はライムスを抱きかかえて、リスナーに向けて宣言した。
「ちょっとお腹も空いてきちゃったし、30分だけ休憩することにするよ。とりあえず、道具は片付けちゃおうか」
周囲にはまだ美味しそうな残り香が漂っている。この分だとモンスターが寄ってきて休憩にならないだろうからね。
すると、そんな私の行動を見かねて須藤さんがおもむろに口を開いた。
「最中ちゃん、片付けは必要ありません。ライムスくんと一緒に、ここで休憩しててください」
「それが出来たら楽でいいんですけどね。でもモンスターが寄ってきちゃうから――」
「問題ありません。私のスキルを使えば疑似的な結界を発生させることができます。簡単に言えば、ここが休憩スペースになるってことです」
「あー、ナルホド?」
須藤さんのスキルは分からない。
影乃纏として配信しているときは、いっつもスナイパー・ライフルを使ってたからね。
近接戦では大抵一撃で倒しちゃうし、たぶん、須藤さんくらいになるとスキルを使う必要ってないんだろうなぁ。
詳しくは分からないけど、須藤さんがそういうならお言葉に甘えさせてもらうよ。だって須藤さんは最強だし。
そういうことができるって言われても、疑問には思わないよ。
ここまで読んで頂きありがとうございます!!