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航宙軍士官、冒険者になる - 025. 助ける理由とプリン
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025. 助ける理由とプリン



 屋敷に戻ったが、クレリアが先程聞いた依頼について訊きたいというのでクレリアの部屋で三人で話をすることになった。


「別にたいした話じゃないよ。午前中にヨーナスさんに頼まれたんだ。タルスさんが盗賊共に奪われた荷を回収するために案内と護衛をしてほしいってね。盗賊のアジトの正確な場所を知っているのは俺とタルスさんだけだからな」


「依頼を受けるつもり?」


「勿論だよ。世話になっているし、日帰りで出来る仕事に大銀貨五枚なんて破格の報酬だしな。回収の人たちの都合もあるけど、出来れば明日か明後日には行っておきたいところだな」


「アランの革鎧の準備ができるのは三日後でしょう?」


「別に必要ないだろう? 近場だし、今まで鎧なんて着たことないけど問題なかったしな」


「そう、では私も行こう」


「では当然、私も同行します」 とエルナ。


「いや、はっきり言って俺だけで十分だよ。それにクレリアこそ、鎧の準備ができるのは三日後だろう?」


「私だってタルス殿には世話になっているし、アランとエルナがいて私に危険が及ぶとでも?」


「… わかったよ。三人で行こう」


「それで、あの、アラン。前から聞きたかったことがあるんだけど…」


 やっぱり来たか。多分、俺の出身とかそういうことだろうな。


「なんで、アランは私を助けてくれるの?」


 おっと、そうきたか。 ふむ、助ける理由か… 特に理由は考えたこと無かったな。


 最初は死にそうな女の子を助けるのに必死だった。命の心配がなくなってからは、そう、手のかかる妹ができたような感覚だったかもしれない。俺は一人っ子だったから子供の頃はずっと弟か妹が欲しかった。


「クレリアを助けるのに別に理由なんか無かったな。当然のことをしてきただけだし。


 俺にもよく判らないけど、クレリアは妹みたいな存在になっているのかもしれないな」


「ええっ! 妹!?」


 クレリアはひどく驚いたようなリアクションをとっていた。そんなにおかしいことだろうか? まぁ、年頃の娘にとっては気持ち悪いと思ってもしようがないかもしれない。でも、それが俺の正直な気持ちなのは本当だ。

 その横でエルナは何故か一人頷いていた。


「そう… 妹…」


 今度はなんか落ち込んでいる。


「ま、変なことを言ったかもしれないけど、それが俺がクレリアを助ける理由かな」


「そう…… わかった。アランには今まで色々と助けてもらって感謝してる」


「なんだよ、今更。俺だってクレリアには助けてもらっているよ」


「アランはこれから何をしたいの?」


 やりたいことか、クレリアは多分俺が何か目的を持ってこの大陸に来たと思っているんだろう。でも目的なんかない。やりたいことも特にないな。今を精一杯生きるだけだ。


「クレリア、俺がどこから来たのか不思議に思っているんだろう?」


「そ、それは…。確かにずっと聞きたいと思っていた」


「もう判っているだろうけど、俺はこの大陸の出身じゃない。


 船でこの大陸に来たんだけど、その船は仲間と共に沈んでしまった。生き残ったのは俺一人だけだ。


 あの船でないと国には帰れない。だから俺はこの大陸で生きていくしかないのさ。


 この大陸には来たばかりで、今はまだ何をしたいっていう目的はないかな。 強いて言えばもっと魔法を勉強してみたい」


「大きくて頑丈な船を作れば、国に帰れるんじゃないの?」


「いや、それは無理だ。説明するのは難しいけど俺はもう絶対に国には帰れない」


「そう… アランも私と同じように国には帰れないのね」


 少し意味は違うが確かに同じ境遇かもしれない。


「わかった! アランが私に協力してくれるように、私もアランのやりたいことに協力する。でも魔法の勉強って… アランはもう凄い魔法を使えるじゃない」


「確かに火魔法は使えるようになったかも知れないけど、他にも色々あるんだろ? えーと、風魔法、土魔法、光魔法とか? やっと少しは落ち着けそうな感じだから、是非覚えてみたいな」


「風魔法ならこのエルナは騎士団でも指折りの風魔法の使い手だ。


 そういえばエルナのことをちゃんと紹介していなかった。


 アラン、こちらはエルナ・ノリアン。私付きの近衛騎士だ。いや、だった。


 エルナ、こちらはアラン・コリント。私の命の恩人だ」


「アラン殿、私の名はエルナ・ノリアン。クレリア様付きの近衛騎士です。よろしくお願いします」


 改めてエルナを観察してみる。年は俺と同じくらいだろうか。背が高く赤毛でなかなかの美人だ。


「アラン・コリントだ。よろしく。 姓があるってことはエルナも貴族なのか?」


「そうです。ノリアン子爵家の者です」


「ひょっとして、近衛騎士って全員貴族なのか?」


「全員ではないが、ほとんど貴族だな」


「ふーん、そういうもんか。じゃあ、エルナ、風魔法を護衛依頼の時にでも見せてもらえると嬉しいな」


「了解です。でも私は魔導書は持っていません。アラン殿は?」


「持っていないけど、とりあえず魔法を見せてくれるだけで十分だよ」


「アランに魔導書は必要ないからな」


「クレリア様、それはどういう意味なんですか?」


「まぁ、後のお楽しみだ。実際に目で見てみないと、とてもではないが信じられないと思う」


「… わかりました」



 少ししてドアがノックされた。


「ヨーナスです。夕食の準備ができました」


 いつもの食堂に行くとタルスさん家族とベック、トールは既に席についていた。


「アランさん、なにか素敵な甘味を作って頂いたようでありがとうございます。ヨーナスに聞いてもどんなものか教えてくれないのよ」 と奥さん。


「私の国で流行っている甘味です。作るのが簡単な割に美味しいですよ」


「まぁ、本当に楽しみ!」 とタラちゃん。


 夕食に出された料理はいつもと同じく量もたっぷりでとても美味しかった。さて、いよいよデザートの時間だ。


「ヨーナスさん、準備を手伝いましょうか?」


 陶器からプリンを出すのには少しコツがいるのだ。


「いえ、既に私の指示で準備できていますよ」


 確かに既にプリンが運ばれてくるところだ。さすがヨーナスさんだな。皆の前にプリンが並べられていく。


「これが甘味?」 とタラちゃん。


「そうです。プリンという料理名ですね。上に載っている茶色の部分と一緒に食べてみてください」


 お手本に一口食べてみせる。うん、美味い。冷やすことによって試食した時よりも全然プリンらしくなっている。


「つ、冷たい!?」

「これは!?」

「うおーっ! なんだこれ!」

「めちゃくちゃ美味い!」


 評価は上々のようだ。少し大きめに作ったので満足できるだろう。


「さすがだ、アラン。これほど美味しい甘味を食べたのは初めてだ」


 いち早く完食したクレリアが感想を言っている。


「そうか、気に入ってくれて嬉しいよ」


「アランさん! 素晴らしい甘味です! 私もこれほど美味しいものを食べたのは初めてです」


 良かった。奥さんも気に入ってくれたようだ。


「この甘味が本当に作るのが簡単なのですか?」 と奥さん。


「そうですね、コツさえ掴めば凄く簡単ですよ。ですよね? ヨーナスさん」


「はい、私もアランさんが作るところを拝見させていただきました。なんとも不思議な調理方法ではありましたが驚くほど簡単です」


「アランさん、この甘味は素晴らしい! 私も堪能しました。宜しければレシピを買い取らせていただけないでしょうか?」とタルスさん。


 タルスさんが商人の顔になっている。プリンのレシピくらいで大げさではないだろうか。


「いえ、買い取りなんて大げさな。お世話になったお礼に喜んでお教えしますよ」


「そうはいきません。これほどの料理のためならこの街には喜んで大金を出す商人が沢山いますよ。是非ウチの系列店の食事処で使ってみたいのです。この料理ならば直ぐに資金は回収できるので遠慮なく買い取らせてください」


 凄いな、レストランまで経営してるのか。こう言われたら断るのもなんだな。


「わかりました。では明日にでもレシピをまとめましょう。料理人の方と一緒に作ってみるのもいいかもしれないですね。そのほうがコツも伝えられますし」


「素晴らしいわ!これが明日も、いえ明日からずっと食べられるのね!」 とタラちゃん。


 さすがに毎日プリンだと飽きると思うけど。


「私はアランさんが他にどんなレシピをお持ちなのか凄く気になるわ!」 と奥さん。


 レシピは確かに多く知っている。帝国で二年前に発売された「地球の料理大全集」も購入している。えらく高くてクレジット・ローンの三十六回払いだった。そういえば、あの支払いってどうなるんだろうか? まぁいい。


 地球のメジャーな料理を全て収録した優れもので購入したことは後悔していない。ナノムのメモリーにも入っているし当然、気に入った料理はアップデート済だ。


 レシピはあるけど、食材が少なすぎる。少なくとも調味料関係がもっと充実しないとほとんどのレシピは使えないだろう。


「国では色々と調味料が充実してましてね。あの調味料がないと私が作れるものは限られているんです。なにか思いついたら教えて差し上げますよ」


「楽しみにしていますわ」


 そういえば、誰も俺の出身を訊いてこないな。きっとタルスさんが訳ありだとみて訊かないようにしてくれているんだろう。


 好評のうちに食事は終わった。


 ヨーナスさんと指名依頼の事を話すと、明後日には運ぶ人員や馬車は用意できるようだ。明後日の朝に出発することになった。



 部屋に戻ってベックとトールが今日何をしていたのかを話していた。


 村での必需品は大体購入することができたようだ。明日、残りの買い物して遅くとも昼には村に向けて出発するらしい。


 護衛の冒険者も既に手配済みで、資金に余裕があったので少し奮発したら直ぐに決まったらしい。頼んだことのある冒険者達で、実績もあるパーティーだということだ。


 パーティーというのは冒険者が仲間と作るグループのようなもので、依頼は通常、パーティー単位で受けるらしい。

 そういうことであれば俺たちもパーティーを作るとしよう。


「そういえば報奨金は明日受け取ることができるんだよな。明日の朝、受け取りに行ってみないか? お前たちもお土産を買う金いるだろ?」


「それ、いいですね! そうしましょう」


 その後は三人で風呂に入った。朝から色々とあって結構疲れていたのですぐに寝てしまった。




迷走感が半端ないw

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