第88話
温泉に行くぞーってなってから四日が過ぎ、俺達がこの街を離れる日がついに来た。
見送りには大勢の人たちが駆けつけてくれた。
その中には社長のカノンさんを始めとしたLumi♡Twinkleのメンバー。そして、Flora Kissのアヤネさんにアリヨク率いるDevil's Winkのメンバー。……ちなみに俺に毒打ち込んだ魔族はこのDevil's Winkの社長さんらしく、当然見送りに来てくれた。
「コウ!!絶対良くなって帰ってきてね!!私達……皆待ってるからね!!」
「はい!!ラビルさんも……体には気を付けてくださいね!!今まで支えてくれて本当にありがとうございました!!」
「コウちゃん!!ほんとーーーに助けてくれてありがと!!次はコウちゃんの番!!絶対に良くなって……今度こそ一緒に歌おうね!!」
「ふふ。アイスさんもこれからも体調気を付けてくださいね?」
「温泉で体を癒して、また僕と戦っておくれ?僕はずっと……君の帰りを待っているからね……!」
「はい!……アヤネさんも元気で……!」
「てめぇ!!勝ち逃げなんて許さねぇからな!!ぜってぇ戻って来いよ!!」
「ふふ。アリヨクさんも無理しないでね?」
「……ふん!!」
ってな感じで皆と別れの挨拶を済ましていく。
その中にはイリヤや他のメンバーとの挨拶もあったが……まぁそこは長くなるので割愛で!!
ちなみに……ギーツはこの街に残るらしい。
この街のアイドル達をこれからも……いや、これまで以上に守っていくのと、一応魔族であるDevil's Winkの社長さんを見張るという理由で、この街に残るそうだ。
「優勝したのに……申し訳ないでござる。でも……拙者はやっぱりこの街を……アイドル達を守る守護者としてこの街でやっていくでござるよ!!ただ……何かあった直ぐに言ってくだちぃ!!コウたんの為なら草の根分けてでもぉおおwww駆けつける所存www」
役立たずだからいらん、と言うエイシャを無視してギーツは変なポーズを決めつつ俺に宣言した。
まぁ俺としても、これからもアイドルの人達を守って欲しい。だって皆俺にとってももう他人ではなしな!!他人ならいいって訳でもないけど!!!
皆との別れの挨拶をしていると、ふと少し離れた所でクルミが俺を見ているのに気が付いた。
そんなクルミに……俺はゆっくりと近づき、口を開く。
「クルミ……約束守れなくてごめんね?」
「………ほんとよ!!この裏切り者!!………なんて言える訳ないでしょ?」
「クルミ……」
「そんな事……全然気にしてないわよ……!それより、さっさと良くなりなさいよね!?それで……また……一緒に……!!」
言葉の途中から、クルミの目から涙が流れ始める。それにつられる様に、俺も涙を流してしまう。
「ぜったいにまた一緒に……歌うわよ!!……今度こそ……約束なんだからね……!!」
「うん……!うん!……私絶対に良くなって……またこの街に戻ってくるよ……!」
その言葉を皮切りに、俺達は強く抱き合った。
「待ってる!私何時までも……コウを待ってるから……!!」
「クルミ……!」
「……ミルクよ……!」
「……え?」
クルミは腕を解き、少し離れて泣きながら笑顔を作り言った。
「私の本名!!ミルク・スウェイス!!……あんただけには特別に教えるんだから……忘れないでよね!」
「ミルク……!うん……わすれないよ……!」
クルミは……ミルクは本名を名乗ってくれた。とっくに記憶喪失じゃ無いだろうとは思ってたけど……。
ふとミルクの後ろを見ると、優しそうな男女がミルクと俺を暖かな目で見守っている。……多分あの人たちがミルクの両親なのだろう。
「ねぇミルク……」
「なに?」
「私はね……コウキ…だよ!コウは愛称……本名は……コウキ・ヤマグチ……だよ!」
「コウキ……!!」
「ふふ。これを教えたのはミルクが……始めてだよ!」
まぁ最初ミリヤ達に言って、うまく伝わらなくてコウになったのだが……こっちの言葉をちゃんと覚えてこの名前を教えたのはミルクが初めてなのは事実だ。
「じゃあ……ミルクも元気でね!!無理はしないで……頑張ってね!!」
「ふふ!!当たり前じゃない!!まだまだあんたには及ばなくても……私はあんたのトップアイドルなんだからね!!だから……あんたも元気でね!!」
今度はお互い手を取り、笑顔で別れの挨拶をする。
この四カ月間本当に大変だったが……隣でめげずにひた向きに頑張っているミルクの姿を見て、俺も頑張れたのだ!!
クルミは……ミルクは俺にとって、この世界に来て一番の……大切な親友だ!!
きっとまた元気になってこの街に戻ってこよう!!この約束は今度こそ……守ってみせる!!
こうして俺は、アイドルという最初は考えてもみなかった経験をさせてくれたこの街を……皆に見送られながら去るのである!
今回は急いでいないので、馬車での移動だ。
馬車の窓から身を乗り出し、皆に大きく手を振ると、皆も大きく手を振って口々にエールをくれる!!
そんな皆を見て、大変だったけどこの街に来て本当に良かったと思った!
「コウ……元気になって、またこの街に戻ってこようね!」
「はい!お姉ちゃん!!」
ミリヤの言葉に返事して、俺は温かい気持ちでいっぱいになる。………ただ……。
ふと、馬車の窓から張り紙が見えた。
それは……手配書で、そこには……黒騎士が書かれていた。
なんと、街を破壊して姿を消した黒騎士は、今やこの街で立派なお尋ね者なのである!!なんてこった!!
この街は俺にとっても大切な街だ、いろいろな経験をさせて貰った。
でも……だからこそ心の底から思う事!!あんな感動的に見送られて、実は……なんて絶対に言えない!!そう!!
黒騎士の中身が俺だと、絶対にバレる訳にはいかない!!!