Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
追放された王太子と公爵令嬢が冒険者になる話 - 第35話 王種⑩
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された王太子と公爵令嬢が冒険者になる話  作者: 埴輪庭
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/50

第35話 王種⑩

 ◆


 シャールが自身の消耗を自覚していなかったわけではない。

 "力"の行使に限りがあることは最初から承知していた。精神の井戸には底があり、汲み続ければいずれ枯れる。それは分かっていたのだ。だがその上で黒い小鬼の命を削り切れると確信していた。あと少し。もう少し削れば倒せる。再生能力にも限界があるはずだ。そう踏んでいた。

 

 彼に足りなかったのは経験である。

 

 これまでシャールは命をすり減らすような死闘の場に己を置いたことがなかった。王宮での剣術稽古は確かに厳しいものであったが、それでも相手は同じ人間であり、木刀や刃引きの剣を用いた訓練に過ぎない。命の遣り取りではなかった。国を出る際に騎士たちを斬ったこともあるがあれは奇襲であり、まともな戦いとは呼べぬものだ。

 

 要するに、限界を見誤ったのである。

 

 己の精神力がどこまで保つか。どの程度消耗すれば回復不能に陥るか。そうした体感的な基準を彼は持ち合わせていなかった。書物で読んだ知識はある。だが知識と実感は別物だ。戦場を駆け抜けた歴戦の兵士ならば己の限界を肌で知っている。あと何度剣を振れるか、あと何歩走れるか、そうした感覚を血と汗で刻み込んでいる。シャールにはそれがなかった。

 

 鼻血が顎を伝って滴り落ちる。

 

 視界の端が霞み始めていた。"力"の酷使による反動が脳髄を蝕んでいるのだ。意識を拡張し続けることは脳に著しい負荷をかける。眼球の奥で何かが脈打ち、こめかみが万力で締め付けられるように痛んだ。

 

 ──"力"はもう使えまい。

 

 もう一人のシャールが冷ややかに囁いた。

 

 網を張り続ける集中力が保たない。感覚拡張領域を維持しようとするたび、頭蓋の内側で火花が散るような激痛が走る。限界だ。これ以上は肉体が先に壊れる。


 ──だが死ぬにはまだ早い。


 もう一人のシャールが続けた。


 ──奴は成長している。見ろ、あの体捌きを。


 黒い小鬼が間合いを詰めてくる。両腕の刃が旋風のごとく繰り出され、左右から挟み込むように斬りつけてきた。シャールはそれを長剣で受け、弾き、そして後退した。


 確かに動きが洗練されている。


 先ほどまでの荒々しさが影を潜め、無駄のない足運び、的確な体重移動、そして獲物を仕留めようとする殺意を孕んだ刃筋。繰り出される一撃一撃はまるで歴戦の剣士のようであった。正確で容赦のない太刀筋だ。腹に浮かんだ顔の技術を吸収したのだろう。

 

 だがともう一人のシャールが問う。

 

 ──オズワルドのそれよりも鋭いか?

 

 オズワルド。

 

 その名を思い浮かべた瞬間、シャールの脳裏に一人の男の姿が蘇った。

 

 白髪交じりの短髪。深い皺が刻まれた顔。だがその瞳には老いを感じさせぬ鋭い光が宿っていた。王宮剣術指南役。シャールが幼少の頃から剣の手解きを受けてきた師である。

 

 ──オズワルドのそれよりも巧みか?

 

 そうではない、とシャールは断じた。

 

 黒い小鬼の刃は確かに鋭い。だがオズワルドの剣と比べれば、まだ甘い。

 

 そうだな、とシャールは内心で呟いた。

 

 視線を上げ、口元を嗜虐に歪める黒い小鬼を見据える。奴は勝ちを確信しているのだろう。追い詰めた獲物を前にした捕食者の余裕がその態度には滲んでいた。

 

 だが──

 

 右腕の刃が弧を描いて振り下ろされる。

 

 シャールはバックステップでそれを躱した。"力"は使わなかった。使えなかったというべきか。ただ純粋に、足捌きだけで斬撃の軌道から逃れたのである。

 

 続いて左腕の突き。

 

 これが本命であることはシャールには分かっていた。右腕の振り下ろしは陽動だ。意識を上に向けさせておいて、真の殺意は下から突き上げてくる。二刀流の常道である。

 

 長剣の腹をかすらせるようにして、突きをしのいだ。

 

 刃と刃が接触し、金属の擦れ合う甲高い音が響く。だがそれは真正面から受け止めたのではなかった。刺突の威力を真っ向から受ければ腕が痺れる。そうではなく、剣の側面で軽く触れ、軌道を僅かにずらすだけでよい。そうすれば刃は身体の脇をすり抜けていく。

 

 その一連の動きに、シャールが費やした労力はほぼ零に等しかった。

 

 集中するまでもなかった。

 

 なぜならば知っていたからである。

 

 王宮剣術というものがある。

 

 文字通り、王族や貴族、およびそれらを護衛する騎士団が修得する剣術体系だ。権威」と「実戦」を兼ね備えた技法であり、戦場での乱戦よりも一対一の決闘や暗殺者からの防衛を想定して構築されている。

 

 その最大の特徴は「後の先」にある。

 

 相手に先に攻撃させ、その動きを見極めてから反撃に転じる。待ちの姿勢を基本とし、敵の攻撃を最小限の動きで捌きながら、隙を見つけて一撃を加える。派手さはない。だが堅実で確実でそして何より疲労を抑えられる。王族や貴族は自ら戦場に立つことは稀だ。むしろ不意の襲撃に対処することの方が多い。そうした状況では派手な剣技よりも、冷静に敵の攻撃を見切り、最小の労力で最大の効果を上げる技術が求められる。

 

 シャールは十数年にわたってその技を叩き込まれてきた。

 

 朝に剣を振り、昼に剣を振り、夕に剣を振り、夜に素振りを繰り返す。来る日も来る日も木刀を握り、オズワルドの容赦ない打ち込みを浴び続けた。骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げ、意識が朦朧となっても剣を離すことは許されなかった。王太子たる者、いかなる時も武を手放してはならぬ。それがオズワルドの教えであり、シャールはそれを愚直に守り続けた。

 

 その積み重ねが今、身体に刻まれている。

 

 考える前に身体が動く。敵の刃が来れば自然と剣が上がり、最適な角度で受け流す。足は勝手に最適な位置へ移動し、体重は自然と攻撃に備えた配分になる。意識して行うのではない。呼吸と同じだ。心臓が鼓動するのと同じだ。もはや身体の一部と化した技術がシャールを守っていた。

 

 黒い小鬼の連撃が続く。

 

 右、左、右、左。両腕の刃が絶え間なく振るわれ、シャールを切り刻もうと迫る。だがその悉くが空を切った。受け、受け、避け、避け。最小限の動きで刃を捌き、軌道を逸らし、時に一歩退いてやり過ごす。

 

 そして──突き。

 

 ふわりとした動きで小鬼へ突きを見舞う。

 

 長剣の切っ先が黒い肩口に突き刺さり、黒い血が噴き出した。浅い。致命傷には程遠い。だが確実に肉を抉っている。

 

 これが何度も繰り返された。

 

 受け、受け、避け、避け、そして突き。

 

 手数は圧倒的に小鬼の方が多い。両腕の刃を駆使して休むことなく斬りかかってくる。対してシャールの反撃は稀だ。十合に一度あるかないか。だがその一撃は確実に小鬼の身体を穿っていた。

 

 崩せないのだ。

 

 黒い小鬼の攻撃は確かに激しい。連撃の嵐は苛烈を極め、一瞬でも気を抜けば致命傷を負いかねない。だがシャールは崩れなかった。王宮剣術の堅牢な守りが暴風のような攻撃を凌ぎ続けている。

 

 戦況はシャール優勢へと傾きつつあった。

 

 小鬼の全身には突き傷が増えていく。肩、脇腹、太腿、二の腕。いずれも浅いがその数は確実に蓄積されていた。再生能力は健在のようだがその速度が鈍っている気がする。先ほどまでは瞬く間に傷口が塞がっていたのに、今は数秒の時間を要するようになっていた。

 

 削れている。

 

 "力"なしでも戦える。

 

 シャールの胸中に手応えが生まれつつあった。このまま削り続ければ、いずれ奴は力尽きる。時間はかかるだろう。だが勝てる。そう確信し始めていた。

 そんな中、小鬼が大きく後退した。

 

 三歩、四歩、五歩と距離を取り、シャールから離れていく。攻撃の手を止め、ただ睨みつけるようにこちらを見据えている。

 

 シャールは追わなかった。

 

 追うべきではない、と判断したのだ。王宮剣術しか知らぬシャールにとって、待ち構えていた方が優位を保てる。追撃に転じれば態勢が崩れる。敵の術中に嵌る恐れがある。ならば待つ方が賢明だ。

 

 ──逃げる、とは思えぬ。

 

 シャールは小鬼の目を見た。

 

 赤い瞳は殺意に滾っている。獲物を逃がすまいとする執念が燃え盛り、そこに逃走の気配は微塵もなかった。ならば一端距離を取り、息をつこうということか。

 

 それならそれで歓迎だ、とシャールは考えた。

 

 "力"の連続使用による消耗は深刻だった。感覚拡張領域を展開することはもうできないがそれでも精神は著しく疲弊している。頭痛は収まらず、視界の端は今も霞んでいる。小鬼の連撃を受け流すのも決して楽ではなかった。身体が覚えている技術に頼っているとはいえ、集中力は確実に削られている。

 

 休息は歓迎すべきだった。

 

 呼吸を整え、乱れた息を静める。額の汗を拭い、握り直した剣の感触を確かめる。左腕の傷はまだ痛むが動きに支障はない。まだ戦える。まだ、勝てる。

 しかしここでシャールは再び見誤った。

 

 小鬼が何かを構えていた。

 

 一体どこから取り出したのか。いつの間にかその手には短弓が握られている。黒い肉体から分泌された何かが固まって弓の形を取ったのか、あるいは肉塊から這い出る際に既に形成されていたのか。いずれにせよ、弦が引き絞られ、矢が番えられていた。

 

 弓。

 

 その可能性をシャールは考慮していなかった。これまでの攻撃はすべて近接戦闘であり、遠距離攻撃の気配はなかった。だから油断した。距離を取った敵が何を企んでいるか、その予測を怠った。

 

 矢が放たれる。

 

 回避行動──咄嗟に身を捩った。だがそれは読まれていた。

 

 矢は躱そうとした方向へ飛んできたのだ。まるでシャールの動きを予測していたかのように、回避先を狙い撃ちにしている。

 

 ──避けられない。

 

その認識が脳裏を過ぎった瞬間。

 

シャールの眼前で、黒い矢が制止した。

 

「言いたい事は山ほどあるのですけれど」


その涼やかな声をシャールが聞き間違えるはずもない。


「セフィラ……」

 

木陰から現れた人影はまさしくセフィラであった。そして──硝子玉のような目で、シャールを見ている。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作の長編と短編を宣伝。長編は大体ブクマ1000~1500くらいのやつ。短編は直近二ヶ月で書いたやつをポイント降順に。

【長編】

アステールの血を引く者は魔術に優れる事甚だしく、特にハイン・セラ・アステールはアステール史上もっとも強大な魔力を誇る麒麟児であった。
"本来の歴史" では彼は傲慢で邪悪な典型的悪役貴族であったのだが、並行世界では一味違う。
いや、二味違う。
一味目は、彼が極度のマザコンだという点だ。
平行世界のハインもまた本来の歴史のハインと同様に邪悪なのだが、母への愛が魔と邪を覆い隠す。
勇者も聖女も元婚約者も、彼にとってはどうでもいいことだ。
ハインはただ母と静かに安らかに暮らしたいだけで、それを邪魔する者全てが彼の敵である。
では二味目はといえば、それは彼が本来の歴史のハインよりも遙かに強大な魔力を有し、遙かに強大な魔術を操るという点だ。
愛する母に格好いい姿を見せたいがために努力を重ねた天才──ハインに不可能はない。
「悪役令息はママがちゅき」

幼い頃、家に居場所を感じられなかった「僕」は、母の再婚相手のサダフミおじさんに厳しく当たられながらも、村はずれのお山で出会った不思議な「お姉さん」と時間を共に過ごしていた。
背が高く、赤い瞳を持つ彼女は何も語らず「ぽぽぽ」という言葉しか発しないが、「僕」にとっては唯一の心の拠り所だった。
しかし村の神主によって「僕が魅入られ始めている」と言われ、「僕」は故郷を離れることになる。
あれから10年。
都会で暮らす高校生となった「僕」は、いまだ"お姉さん"との思い出を捨てきれずにいた。
そんなある夕暮れ、突如あたりが異常に暗く染まり、"異常領域"という怪現象に巻き込まれてしまう。
鳥の羽を持ち、半ば白骨化した赤ん坊を抱えた女の怪物に襲われ、絶体絶命の危機に陥ったとき。
──目の前に現れたのは"お姉さん"だった。
「お姉さんと僕」

ライカード王国魔導部隊所属の魔導散兵である君は迷宮の調査探索中、怪しげなポータルを起動させてしまう。
気付いた時には一切見覚えのない風景が広がっていた。
迷宮であることは間違いないが、壁の質感、床の質感、空気の味なにもかもが違う。
未知の迷宮に飛ばされてしまったということなのだろうか。
君はいぶかしみながらも探索をすすめていく。
やがて出口が見えた。
踏み固められた街道、そよぐ木々、風。
なにより道の先にある都市はライカードのものではなかった。
そこは迷宮都市アヴァロン。
君はそこで冒険者として過ごすこととなる。
祖国ライカードへの帰還を夢見ながら
「ダンジョン仕草」

宇宙開拓時代の西暦3889年、ろくでなしの青年…君はとある大勝負に敗北する。
要するに賭けで負けたのだ。
しかし君には金もなければ家もない。
哀れ君は人身売買のブローカー経由で人体実験に参加し、サイバネ手術を受けることに。
体は機械化され、神経は拡張されるも、存在の違和感ともいうべき感覚に苦しむ事になる。
「人間に戻りたい!」
君はそう願い、再度の手術を受けるべく金を稼ぐことにした。
君が目をつけたのは「惑星開拓事業団」だ。
危険な惑星調査の仕事は金になる。
命の危険もあるが、なに、機械の体がなんとかしてくれるさと君は軽く考える。
「★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)」

【短編】

剣士カイトは勇者アルヴィンから追放を告げられた。
そして──!!!!!!
「意識高い系勇者パーティから追放された俺の末路」

「愛している」——その言葉と共に、母の刃が私を貫いた。
過保護な母に命を奪われた絵里が転生したのは、乙女ゲームのような異世界。
伯爵家の令嬢エリスとして第二の人生を歩み始めた彼女を待っていたのは、お約束の婚約破棄だった。
「愛の温度」

ヘルナロウ王国では今、婚約破棄が流行していた。
頭の悪い婚約破棄は最悪である。
当事者たちだけではなく、周囲の者たちや国そのものにも被害を与えるのだ。
ヘルナロウ王国もまた、アホな婚約破棄のせいで被害を被っていた──国家予算の一割を吹き飛ばすほどの大被害である。
「この女は我が妹をいじめた」
「前世が聖女の令嬢に心を奪われた」
貴族の子息たちは次々と愚かな理由で婚約者を糾弾し、その度に決闘、自害、領地間の経済断絶といった惨事が続発する。
頭を抱えるのは宰相グラモン侯爵。
就任一年で彼の白髪は三倍に増えた。
国王も手をこまねくばかりだったが、王妃ヘルザベスがある提案を持ちかける。
──「令嬢たちに、正しい謀略を教えましょう」
講師は「影の女公爵」と恐れられる王妃の姉クロエを筆頭に、王国屈指の策謀家たちである。
「婚約破棄亡国論」

死者三十人超──熊が人を喰い荒らすA県で、知事・熊殺三太夫は「これは戦争だ」と宣言した。
だが都会からは「熊を殺すな」の大合唱。
現場を知らぬ理想主義者たちに知事はとある決断を迫る。
「熊が来る!」

世話焼き雑用メンバーを追放するいつもの話。
「いつもの追放もの」

太平洋戦争架空戦記。
「白い悪魔」

夕暮れの駅のホーム、今にも線路へ吸い込まれそうな女性に男は全力で体当たりを食らわせた。
男の名前は藤巻俊一。
いわゆる、「ぶつかりおじさん」である。
「感電」

極端なフェミニズムが蔓延するアルカディア王国、その王太子であるシャルルはいわゆるスパダリである。
しかしそんな彼でも、さすがに国のあり方についていけないとへこたれてしまった!
その結果──
「フェミ★婚」

大学一年生の健太は突然の家庭崩壊に直面する。
父の浮気相手は部下の男性だった。
だが帰省して開かれた家族会議は、誰も予想しない告白合戦へと変貌していく。
十年以上妻に拒まれ続けた父の苦悩。
抑えきれない性欲に心療内科へ通った過去。
一方の母もまた、幼少期から実父に性的虐待を受けてきたトラウマを抱えていた。
そして健太自身も「実は僕、バイなんだ」と打ち明ける。
壊れた家族。歪んだ愛。
誰もが秘密を隠し、誰もが傷を負っていた。
普通を望みながら普通になれなかった三人が辿り着いた答えは。
「完全破壊家族」

ドラゴン相手に示談交渉、悪党には損害賠償。
法の力で世界を論破する、リーガル・バトルファンタジー。
「悪徳弁護士、異世界へ行く」

曇らせ大好きな青年が魂転移してしまったらしい……
「曇らせる男」

勇者が魔王を倒そうとしなかったらどうなる?
「勇者に放置された魔王の末路」

「愛しい陛下。貴方はただ、その玉座で綺麗に微笑んでいてくださいな」
隣国帝国の八万の大軍が迫る国家存亡の危機。
震えながらも民のため城に残ることを選んだ美貌の国王テリオンに対し、王妃サリィナは優雅に扇子を開いた。
かつて「人形のように退屈」とテリオンに婚約破棄された彼女は、実家公爵家による苛烈な『再教育』を経て、毒を以て毒を制す冷徹な謀略家へと変貌を遂げていた。
「黒薔薇の嗜み」

冒険者パーティ『碧空の翼』の荷物持ちバジルは醜く無能な中年男だ。
そんなある日、彼は仲間に囮として森に捨てられた。
絶望の淵で彼が手にしたのは、若き美女へと変貌する奇跡の力であった。
復讐を誓ったバジルは美貌の魔術師「ジル」となり、かつて自分を見下した男たちの前に現れる。
何も知らない男たちは、かつて蔑んだ男とも知らず、彼女の愛を求めて争い、堕ちていく。
「無能な中年男、男をたぶらかす魔女となり、自分を捨てたパーティメンバーに地獄を見せる」

帝都ティランの会員制サロン「銀枝亭」に集った五人の貴族たち。
話題は庶民の間で流行する「婚約破棄譚」への痛烈な批判だった。
設定の杜撰さ、人物造形の稚拙さ、読者の被害者意識……舌鋒鋭い文芸誌編集主幹カタリナを中心に、知識人たちは存分に嘲笑を重ねていく。
だが談話の果てに浮かび上がったのは──
「阿呆鳥の連環」

呪いの動画を見てしまった。
私は一週間後に死ぬらしい。
でも大丈夫(?)。
地球が三日後に滅びるそうだから、怖くない。
「メテオリック・エクソシズム」

妻を癌で亡くして以来、男は自分が生きているのか死んでいるのかすら判然としないような日々を送っていた。
だが故人をAIで再現するサービスを知り、膨大な写真やメール、声の記録を入力して亡き妻を蘇らせる。
画面越しに再開した会話は空虚だった日常を少しずつ温かく満たしていく、が。
「電影」

ある日を境に、日本中で不可解な事故死が激増した。
一人でいると死亡率が跳ね上がる異常事態。
国民すべての運が急激に悪化したのだ。
かつて「他人と関わるな」が常識だった社会は一変し、人々は見知らぬ者同士で命を預け合うようになった。
「運の尽き」

あるところに女の子がいました。
女の子はもう死にます。
「光り、きらきら」

「私たち四人は対等なの」──女の提案で始まったのは、三人の男が一人の女を共有する異常な日々だった。
弁護士の真司は漁師の啓二、バーテンダーの了と共に、愛する妻・莉子と暮らしている。
かつては嫉妬に狂い、互いに殺意すら抱いた男たち。
しかし奔放な妻に振り回され、同じ苦しみを共有するうちに、敵同士だったはずの三人の間には奇妙な連帯感が芽生え始める。
「オープンマリッジ」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ