序章編ー5
5
スーパーで買い物をしたハルトは家の鍵を開け、食材の入った買い物袋と学校鞄を持ちながら玄関へ入った。
一緒に下校したユズキは一旦自分の家で私服に着替えてから来る。
「ただいま」
「お帰りお兄ちゃーん!」
出迎えてくれたのは一緒に暮らしている妹のチヨ・ディバマリス。
母親譲りの綺麗な赤紫色の瞳を兄に向けながら近づき、勢いよく彼に抱きつく。
中学生ながらまだまだ幼さを感じる少女だ。
「おいおい、危ないだろ」
「だって甘えたいんだもーん」
「これじゃまるでずっと会ってなかったみたいだ」
甘えてくる妹の小さな頭を優しく撫でたハルトはリビングの黒いテーブルの上に買い物袋を置く。
「今日もユズキが晩ご飯を作ってくれる」
「本当!?やったー!」
「迷惑かけるなよ?」
「分かってるよ。わたしだって子供じゃないもん!」
得意げに威張って言うチヨを見たハルトに不安が過ぎるも自分の部屋に向かう。
その時、家の呼び出し音が鳴り響く。
「多分ユズキだと思うから出てくれ」
「うん!」
2階に上がるハルトに言われた通り玄関のドアを開け、お客を出迎えるチヨ。
そこにはオシャレな私服姿のユズキがエプロン等が入った鞄を持って立っている。
「こんばんはチヨちゃん」
「ユズキお姉ちゃーん!」
「わぁ!ち、チヨちゃん!?」
突然抱きつかれたことに驚いたユズキだが、自分の胸元で頬を擦り、甘えてくるチヨの頭を微笑みながら優しく撫でる。
「ユズキが迷惑だろ」
「だってユズキお姉ちゃんが好きなんだもーん!」
自分の部屋で私服に着替え、下に降りてきたハルトは呆れた表情で妹を見つめる。
幼い頃から実の姉のようにユズキが優しく接してくれていることからチヨは彼女のことを『ユズキお姉ちゃん』と呼ぶ。
「チヨちゃんは相変わらず甘えん坊だね」
「えへへ!」
玄関で靴を脱ぎ、リビングに入ったユズキは早速鞄から可愛らしいエプロンを取り出し、それを手際よく身につける。
「今晩ご飯作るから」
「あぁ、頼む」
「わたしも手伝う!」
「オレと同じでチヨも料理が下手くそだから手伝ってもユズキの足を引っ張るだけだろ」
「確かにそうだけど……」
「なら、チヨちゃんは盛り付けるの手伝ってくれる?」
「うん!」
食材を買い物袋から取り出し、料理を始めたユズキを見て『良いお嫁さんになる』と心の中で呟いたハルトは黒いソファーに座る。
「あっ!そういえばお兄ちゃん、お母さんから連絡があったよ」
「ク……お義母さんから?」
「うん、ご飯食べた後でもいいから連絡してだって」
「……分かった」
浮かない顔をして返事を返したハルトであった。