ウェイク編ー3
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「食べた食べた!ユズキちゃんの料理は美味しいねー!」
「ありがとうございます師匠」
「ユズキちゃんは良いお嫁さんになるよ」
「そ、そんなこと」
「顔を赤くして可愛いねーユズキちゃん」
「め、目が怖いですよ師匠」
「むふふふ!その成長してる体も良いお嫁さんになれるかどうか確認したいものだね」
やらしい目つきでユズキの華奢なスタイルを舐め回すように見つめるレゼルに殺気を放つハルト。
「師匠、ユズキが嫌がることをしないでください」
「おや、またユズキちゃんの彼氏に睨まれてしまった」
ハルトのお陰で助かったと安心したユズキは胸を撫で下ろし、食器を拭く。
「ところでご用件を教えていただけますか?」
「あぁ、僕が話さなくてもどうせクロウナ様が話すだろうけどね」
意味深な言葉を呟き、ハルトの向かい側に座る。
「まずEランクが異能を使って殺人事件を起こしたことは知ってるかい?」
「はい」
「実はクロウナ様からの命令でヘギラスに暗躍する過激派組織コントラッグについて調べていたら偶然にもその事件にコントラッグが関わっていてね」
コントラッグは無能者たちによって構成された過激派組織。
テロや内戦を引き起こしたりする危険な組織として国際的に危険視されている。
「殺人事件を引き起こした容疑者はコントラッグの構成員らしい」
「コントラッグがあの事件に」
「厄介なことに最近は過激派に限らず穏健派もテロとか危険なことをしているからね」
「そこで疑問になるのが無能者がどうして異能を使うことができたのかということです」
「その理由がこれだ」
そう言って彼は自身のショルダーバッグからカプセル状の薬のような物が入ったクリアケースを取り出し、目の前のテーブルに置く。
「これは?」
「容疑者から押収した違法薬物だ」
「違法薬物?」
「あぁ、この薬を飲めばEランクでも異能を発現することができる」
「これを飲んだことで異能を使うことができたということですか」
「あぁ、まさかこんな薬物が裏で流通しているとは思ってもいなかったよ」
「これを飲めば永久に異能を使えるようになるんですか?」
「いや、そんな都合のいい品じゃないよ」
「制限時間付きということですね」
「その通り」
コントラッグが開発した違法薬物『ウェイク』は異能を発現できるが、持続時間は10分くらい。
「異能を無理矢理発現させるからにはそれなりのリスクがあると思うのですが」
「察しがいいね。逮捕された容疑者も副作用で警察病院に移送された」
「やはり副作用が」
「人それぞれらしいが、容疑者の場合は重度の幻覚症状を患った」
持続時間が短いだけではなく、重度の副作用があり、薬物依存に陥ってしまう危険な薬物なのだ。
「もし自分が無能者だったらこの薬に頼りたくなる気持ちも分からなくはないがあまりにリスキーな品だよ」
「異能者と無能者の軋轢が深刻化していく一方ですから」
「こればかりは解決しようがない社会問題だと感じているよ」
ハルトの頭の中にある出来事が蘇る。
それは放課後に偶然同じ学校の生徒が他校の無能者に対し、容赦ない暴力や暴言を繰り返していたことだ。
ある意味今の世界の現状を分かりやすくした出来事だが、それが積み重なっていけばテロや内戦に繋がるだろう。
「これが偽りの平和か」