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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~ - 28 姫様の真実と愚かな平民
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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第一章 姫だと思ったら王子だったけどあまりにも可愛いすぎるから姫にして俺の嫁

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28 姫様の真実と愚かな平民



 もう夜中って時間なのに、次期公爵の屋敷はかがり火が焚かれてて明るかった。

 だから意気揚々と凱旋(がいせん)のつもりで、レドに乗ってお姫様と二人で降りて行ったんだけど……。


「魔物だー! 魔物の襲撃だー!」

「殿下とお館様をお守りしろ! 至急お逃げ戴くんだ!」

 うん、見張りの兵士達、大騒ぎ。


「ちょっとまずかったですかね?」

「兵達の反応も致し方ないでしょう。ドラゴンの見た目もさることながら、この大きさで契約精霊などと思いもしないでしょうし」

「ごもっともで」


 乗ってくるなら、せめて出がけに見せたロクの方が良かったかな?

 でもロクって速度重視で、二人は定員オーバーだしなぁ。

 ともあれ、取り囲まれて武器を突きつけられて、せっかく助けたお姫様に万が一があっても困る。


「お前ら武器を下ろせよ、お姫様に対して失礼だぞ」

 レドに乗った俺達を取り囲んだ兵士達に怒鳴って、先にレドの背を降りてから、エスコートするようにお姫様の手を取って下ろしてあげる。


「ありがとうございます、エメル様」

 囚われの身になってて、しかもその後は捕虜の解放と説明を手伝ってくれて、きっと肉体的にも精神的にもクタクタのはずなのに、所作にも微笑みにも一切の疲れを感じさせず、お姫様らしい優美さが失われてない。

 すごい人だな、このお姫様は。


「王女殿下!?」

「フィーナシャイア様!?」

「じゃあその隣にいるのは例の平民か!?」

「まさかそのレッドドラゴンも契約精霊だとでも言うのか!?」

 うん、一層大騒ぎになってしまった。


「これ以上混乱させるのもなんだし、レドは姿を消しといてくれ」

『グル』


 なんてやり取りをしてたら、玄関の扉がバンと乱暴に開け放たれた。


「姉上!」

 歓喜の声を上げて飛び出してきたのは姫様――じゃない!?

 貴族の服を着てる男の子だ……。

 しかもこっちへ向かって駆けてくる。


「アイゼ! 無事とは聞かされていましたが、本当によくぞ無事で。こうしてまた会えて嬉しく思います」

「本当に姉上なのですね! ああ……ご無事で何よりでした!」

 お姫様も泣きそうな顔で微笑んで、駆け寄ってきた男の子と抱き合った。


 一体、この男の子は誰……って、今お姫様、アイゼって呼んでなかったか?

 それって、姫様の名前じゃ!?


「囚われの身となり、さぞお辛かったことでしょう。どこかお怪我などはありませんか?」

「いいえ、わたしは大丈夫です。あわやのところで、こちらのエメル様に助けていただきましたから」


 お姫様が俺に目を向けると、その男の子も俺に目を向けた。

 どこからどう見ても男の子なのに、そのショートカットの綺麗な金髪、面差し、そして俺を見つめる瞳に見覚えがある……。

 その男の子はばつが悪そうにわずかに目を逸らすと、それから意を決したように俺に視線を戻した。


「エメル、よくぞ私の願いを聞き届け、姉上を無事に救い出してくれた、礼を言う」

 その声も聞き間違いようがなく……。


「姫様!?」

「う、うむ……」


 ちょ……マジで!?


「改めて名乗ろう。私はアイゼスオート・ジブリミダル・マイゼガント。我がマイゼル王国の第一王子にして王太子。正真正銘の男だ」

「そん……な…………」

 気付いたときには膝から崩れ落ちて、地面に両手をついて項垂れていた。


「じゃあ……俺の姫様は最初からどこにもいなかった……?」

「その……済まなかった。そなたを騙すような真似をして。落ち延びる際に、王太子と気付かれぬよう侍女に(ふん)していたのだが、まさかそれで王子ではなく姫と間違われるとは思わなくてな」

「エメル様の仰っていた『姫様』とは、そういうことでしたか」

 納得のお姫様の声が、夢でもなんでもなく、それが事実なんだって突きつけてくる。


「申し訳ございません、エメル様」

 近づいてきて、そう謝ったのはクレアさんだった。

 ノロノロと顔を上げると、クレアさんが腰から深々と頭を下げていた。


「アイゼ様は何度もエメル様の誤解を解き、事実を告げようとされていました。しかし、そのことごとくを私が(さえぎ)り、エメル様が真実を知る(さまた)げをしていました。そしてアイゼ様が姫君のお姿で過ごされるよう進言し、手配をしたのも私です。全ての責は私にあります。いかようなお咎めも罰もお受けいたしますので、どうかアイゼ様のことだけはお恨みになりませんよう、お願い申し上げます」


「…………クレアさん、どうしてそんなことを……?」

「王都を奪還しこの国を守るためには、なんとしてもエメル様のお力添えが必要でしたので」


 ああ、全部分かった。

 感情を押し殺した冷たく聞こえる声音は、全部お芝居だ。

 クレアさんなら、姫様を……アイゼ様を守ることが第一だろう?

 なのに、アイゼ様を守るためにって言わなかった時点で、大事な大事なアイゼ様に責任を感じさせたくなかったんだろう。


 そもそも、お姫様の救出も目的だったのに、それにも触れてないんだから、お姫様にも責任を感じさせたくないに違いない。

 そして、わざと冷たく聞こえるように言って、俺の怒りを自分に向けて、全部の責任を被るつもりなんだ。


 そこまでしてでも、クレアさんはアイゼ様を守りたかったんだな。

 その気持ち、すごくよく分かるよ、分かっちゃうよ。


「そんなの……怒るに怒れないじゃないか……」

 いま俺、どんな顔してるのか分からないけど、声が震えてしまっていた。


 アイゼ様が唇を噛み、目を伏せる。


「済まぬエメル、クレアに責はない。私は全て気付いていながら、その策に乗り、そなたを利用したのだ。責は全て私にある」

「いいえ、私の責任です。エメル様、どうぞ、お気が済むように私を――」


「フィーナシャイア殿下をお救いして、平民が戻っただと!?」


 話をうやむやにするのにナイスタイミングなのか、俺を苛立たせるバッドタイミングなのか、空気を読まない大声が突然響いて俺達の会話をぶった切る。

 それをした張本人、次期公爵が屋敷から出てくると、驚き目を見開きながらズカズカとこっちへ近づいてきた。


「おお、フィーナシャイア殿下、ご無事で何よりでした」

 次期公爵は俺を無視して真っ先にお姫様の元へ進み出ると、跪いて恭しく臣下の礼を取る。


「ええ、エメル様のおかげで、こうして無事にアイゼと再会することが叶いました。そなたにはアイゼが世話になったようですね、大儀でした」

「ははっ、もったいないお言葉」


 お姫様が、すごくお姫様らしい言葉遣いと立ち居振る舞いで、次期公爵の(ろう)(ねぎら)う。

 次期公爵は顔を上げると、今度はアイゼ様へと顔を向けた。


「アイゼスオート殿下におかれましても、姉君が無事お戻りになられたこと、お喜び申し上げます」

「うむ」

 アイゼ様が鷹揚に頷く。


 次期公爵の振る舞いは、ことさら俺を無視するような態度で、なんかもう怒りが全部そっちに向くって言うか……。

 いいよな、アイゼ様にもクレアさんにも怒れないけど、次期公爵にはその分の怒りを全てぶつけても。


 次期公爵は立ち上がると、そこでようやく俺の存在に気付いた、みたいなわざとらしい態度を取って、どこまでも上から目線で俺を見下してくる。


「平民、ご苦労だった」

 自分の策が上手くいかなかった腹いせとか、当てつけだろうな、これ。

 だから立ち上がって、鼻で笑ってやる。


「そうそう、俺が(・・)一人で(・・・)全部終わらせた(・・・・・・・)後に、次期公爵の兵がノコノコと間抜け面でやって来たけど、手ぶらで帰って貰ったから。おかげ様で俺、英雄様(・・・)になれちゃったよ。なのに残念だったな、そっちはなんの手柄も立てられなくて」

 次期公爵の頬がひくりと歪む。


「その兵もどこで道草食ってるのか知らないけど、来るのも遅ければ帰ってくるのも遅いんだな? 情報は鮮度が大事なんだけど、まあ、詳しい話は戻って来てから聞けば?」


 奥歯を噛みしめながら手がワナワナ震えてて、剣を抜きたいのかも知れないけど、アイゼ様とお姫様の前だし、こちとら仮にも救国の英雄様だ。

 さすがにそんな真似は出来ないんだろう。

 ざまあみろだ。


 周りの兵士達は、次期公爵の押し殺した怒りに、ハラハラオロオロしてるけど、知ったこっちゃない。


 振り返ると、俺と目が合ったアイゼ様が少し辛そうな顔をして、わずかに躊躇った後、俺に近づいてきた。

 さすがの次期公爵もアイゼ様を邪魔しないようにと数歩下がる。

 俺の前に立ったアイゼ様は、俺より背が低いから俺を少し見上げるようにして、でも今度は目を逸らさなかった。


「エメルよ、そなたには酷なことをしたと思う」

「それは……」

「そなたは私の願いを叶え、ラムズの出した条件も見事に達し、我が国にとって真の英雄となった。その功績には報いなければならぬ」

「……」


「そう、報いてやらねばならぬのに、先の約束は叶えてやれそうにない。心から申し訳なく思う」

「……いえ、その……俺は…………」

「しかし、改めて約束しよう。私の名において、今度こそ私に出来ることであればなんでも望みのままに褒美を取らせよう」


 望みのままに……か……。

 姫様が本当は王子だったと、男だったと知って、それで俺が今一番望むことって、なんなんだろうな……。



 俺が今回戦争に首を突っ込んだのは、『立身出世、貧乏脱出、お嫁さん探し』の三つのスローガンを打ち立てたからだ。


 じゃあ『立身出世』で、肩書きだけの特務騎士じゃなく、ちゃんと中身もある騎士とか精霊魔術師部隊の要職とかに取り立てて貰うか?

 お給料だってガッポリ貰えるだろうし、貧乏とおさらばなのは確実だ。

 それで同僚の女の子といい感じになれれば、お嫁さんも見つかりそうだし。


 それとも『貧乏脱出』で、素直に褒賞金を貰っておくか?

 貧乏農家の次男坊には一生掛かっても稼げない使い切れないお金を貰えば、無理に出世や生活のことを考えなくていいし、後は一生好きな仕事をするもよし、適当に遊んで暮らすもよし。

 これが一番しがらみも、後腐れもなさそうだ。


 でもせっかく英雄って立場になったんだし、何より一番叶えたい『お嫁さん探し』で、素直に誰かいい人でも紹介して貰うか?

 救国の英雄ともなれば、女の子達もキャーキャー言ってくれて選り取り見取りは確実だろう。


 もうさ、なんの問題もなく、『立身出世、貧乏脱出、お嫁さん探し』が全部叶っちゃうよな。



 うん、違う……。

 そんなの、全然違う。

 どれを選んでも同じだ。

 そんなの、全然欲しくない!


 俺が本当に心から欲しいのは……!



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