第83話 異世界のモンスターはドロップを落とさない
異世界に来た。今日は街に行かずに周辺の森を探索します。シャーロッテさん?なんでもテイムスキルを入手したらしくテイマースキルを上げてる最中だって。
テイマーが便利なのは既に異世界に出向く者たち共通認識らしい。まぁ、主に自分のせいだけど。
あとテイマースキルのスキルオーブの値段が3桁万円に届きそうだって。毒ポーションの登場で上位モンスターのテイムが楽になったからテイマーの価値が見直されているらしい。これも自分案件。そりゃあ運が良ければオーガプリンセスが楽に仲間に出来る!となればね。もっとも、言うほど楽じゃないんだけど。
「グギャ!」
オークが棍棒を持って襲いかかってくる。なおこちらの世界のオークは、豚頭というより直立豚と表現したした方が近いモンスターだ。
「せい!」
エルフ弓でまず自分が牽制。横に広いから少し横に移動すれば射線が通るのがいいね。弓はフィールドダンジョンで有用というのは発信されているのだろうか?あとで調べてみよう。
「うりゃ!」
疾風が十字槍で牽制し、チビが剣で攻撃する。
紅桃はオークの動きをつぶさに見ている。レベル差があるのを反省して紅桃には後方軍師面をして貰っている。
「にゃ!」
チビの一撃がオークの左足を切り裂く。ガクンとオークの身体が傾く。
「わんぉ!」
疾風の十字槍がオークの喉を貫く。ゆっくりとオークの身体が倒れて動かなくなる。
異世界に来て変わった事。それはモンスターを倒してもアイテムをドロップしたりしない。死体としてその場に残るのだ。
「さて。解体っと」
オークの足をロープで縛り、その辺の木に吊す。
最初は忌避感があったが、五体も倒す頃にはすっかり影を潜めていた。
「チビお願い」
チビに土魔法で穴を掘って貰い、紅桃がオークの首を落とし血を抜く。
血が落ちなくなったら腹を裂き腸を傷つけることなく内臓を掻き出して心臓、胃袋、肝臓、腸を切り分ける。そうそう。心臓に埋まるようにオークの魔石があったよ。
後は落とした頭を穴に投げ込み埋葬する。
「これだけはダンジョンの仕様の方がありがたいんだけどね」
もっとも、ダンジョン仕様だと肉はドロップしない。
「主もすっかり慣れちゃって・・・」
ペンタントちゃんが、よよよとわざとらしく目尻を押さえる。
「あれだ。解体スキルを持っているモンスターをテイムした方がいいかな?」
「このまま任せてくれればそのうち生えてきそうだけど」
紅桃は解体に使ったナイフの血糊を拭って腰に吊る。それもそうか・・・
それからオーク5匹。ゴブリン8匹。角兎10羽。雉のような鳥10羽を仕留める。
困ったのはゴブリンだ。採れるのが魔石しかない。討伐証明は耳らしいので削いでおくが、魔石を採るには胸を割かないといけない。実に面倒くさい。持っているのも石斧や棍棒とリサイクル出来るものがない。穴に埋めるためにチビに地魔法を使わせているのでチビの地魔法が地味に上がるのはありがたいけど・・・
「お・・・ゴブリンの巣穴だ」
なだらかな丘陵に穴らしきものがあり、蜂の巣よろしく入口のところにゴブリンが歩哨に立っている。
「カイヤ・・・」
呼びかけると、カイヤが
自分の影から顔を出す。
小さく頷くと再び影に潜る。
ドサッ
歩哨のゴブリンの首が落ち、そのまま突っ伏す。その背後にはいつの間にかカイヤが立っていて再び地面に沈む。
影潜りで相手の背後に回り一撃で首をはねる通称シャドーアタック。ただしスキルではない。そういう攻撃方法である。
「よいしょ」
スペースから油を染み込ませた木を取り出し、入り口に配置。火を付けて燻す。
「風魔法が欲しいね・・・」
パチパチと木が爆ぜる音を聞きながら呟く。
風魔法以外だと水魔法の使い手も居なかったなと思う。出来れば用意しておきたい。そう言えばこちらの世界のモンスターもテイム出来るのだろうか?
「グギャ」
ゴブリンが涙目になりながら穴から出てくる。
「せい!」
紅桃が出てきたゴブリンをひっつかまえて穴の奥に投げ返す。
「チビ。穴を潰して」
「はいにゃ!」
チビが穴に向かって呪文を唱える。ストーンウォールだ。
「他に煙が立ちのぼったところは?」
「眼下になし!」
上空に舞い上がっていたカイヤが叫ぶ。
「しばらく燻そか・・・」
それからしばらくストーンウォールを叩く音が響くが、やがて静かになった。成果はゴブリンの耳42個と魔石42個。
ホブゴブリンの耳と魔石が1個と錆びたショートソードと革の鎧にギルドタグ・・・恐らく駆け出し冒険者の遺品だろうものが出てきた。
南無阿弥陀仏・・・