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融合世界 - 第三領域と先駆者『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』12
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融合世界  作者: らる鳥
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第三領域と先駆者『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』12



 林を少し歩けば、木こり達が作業してる現場へと辿り着く。

 どうやら宿の主人は彼等に、夜間警備でアンデッドを屠った腕の良いハンターだと私を紹介していたらしい。

 木こり達は私が町を守って戦った事に礼を言い、今日も宜しくと言ってくれた。

 別に仕事なのだから何はなくとも頑張るが、でもそんな風に言ってくれると、当然気分は良いしやる気も上がる物だ。


「任せて」

 私は頷き、短くそう告げる。

 それ以上の言葉は、思い付かないし照れ臭い。

 取り敢えずは期待に働きで応えようと思う。



 木々の間に動く物がないか、地に足跡が残っていないかを調べながら、私は林の中を歩く。

 この林は植樹された人工の林であるにもかかわらず、それなりに広い。

 それでも確りと枝は落とされ、管理されてる様子を見るだけでも、この領域の人々がどれだけアンデッド対策に力を入れているかが良くわかる。


 そう言えば、林を歩いていて一つ気付いた事があった。

 私の知識の上では、こう言った材木採取用の人工林は、建材にし易い針葉樹を植える場合が多いそうだ。

 まあ所謂スギやヒノキの類である。

 勿論その地域地域で育成し易い樹木は違う為、一概には言えないだろう。

 例えば太古の英雄が、樫の森を得る為に巨大な魔獣に挑むなんてのは、割とありがちな話だとか。


 広葉樹と針葉樹の違いは、その文字通りに葉の形や大きさで見分けれるそうだが、……正直私にはその辺りは良くわからなかった。

 恐らく私に知識をくれた依頼人が、大して植物に興味を持ってないのだと思う。

 しかし私が所持するスキルの中には『動植物知識:E』と言う物が存在するのだ。

 実際には知らないのに、スキルとしては知識がある。

 その矛盾に気付いた私は、近くにあった一本の木に触れて首を傾げた……、その時だった。



『名称:トルレェナの木

 ミルノーシェ領域の北西部で一般的に見られる樹木

 乾燥させたトルレェナ木材は硬いが着火し易く、また燃焼時間も長い為に燃料として適している

 但し火事を起こしやすい為、建材としてはあまり適さない

 トルレェナ木材の保管は、専用の薬剤を表面に塗布する事で燃え難くして行う』



 視界の端にいきなり文字が流れ、

「ヒッ?!」

 思わず口から変な声が漏れる。

 大慌てで口を抑えて当りを見渡すが、既に木こり達の作業場からは大分と離れていた事もあり、私の挙動不審な行動を見た者は居なかった。

 どうやら動植物知識のスキルは、動植物限定の鑑定に近いスキルらしい。

 いやでも、紛らわしいし驚かされたし、少しばかり腹が立つ。

 また依頼人に会う機会があれば、この件に関しては少し文句を言ってやろう。


 ともあれ、それなりに有益なスキルであるように思えた。

 色々試してみれば、別に手を触れる必要もなく、ハッキリと形を捉えて視認すれば詳細を知る事が出来るらしい。

 トルレェナの木はこの領域では一般的な物らしいから簡単に詳細を知れたけど、恐らく珍しい物になるとランクを上げる必要がある筈だ。


 ……それにしてもこの領域って、ミルノーシェ領域と言う名前なのか。

 何と言うか、名称がちゃんとあるなら、それ位は依頼人が教えててくれても良かったのに。




 私が林を歩き始めて数時間。

 大分と太陽は空高く昇ってる。

 そろそろ引き返せば、丁度昼を少し過ぎた位には木こり達の作業場に戻れるだろう。

 そんな風に考えて踵を返そうとしたその時、視界の端、遠くの方で何かが動いた。

 その瞬間、私は何かを考えるよりも早くに身体を地に伏せ、気配を隠す。

 それは殆ど反射的な動きだったが、この状況で取るべき行動としては正解だ。


 動いた何かは私に気付く事なく、のそりのそりと、ゆっくり遠方を移動している。

 しかし相手は、完全に予想外の相手だった。

 遭遇するにしても狼か猪、最悪の場合で熊を想定していたが……、



『名称:ガルム虎

 暗い朱色の毛皮を持つ肉食獣

 成獣の体長は2m~3m、体重は150kg~300kg程

 ガルム虎は別名夕闇の狩人と呼ばれ、夕方に狩りを行う習性がある

 自らの体毛が夕闇に溶け込む事を理解し、利用する狡猾さを持つ』

 


 まさか虎が出るとは想像の埒外だ。

 だが見付からずに相手を認識し、更にそれがなんであるかを知った。

 今、場のアドバンテージは私が握り、行動を決める権利を持つ。


 そう、即ち退くか戦うかを決める権利を。


 ガルム虎が狩りをする時間が夕方ならば、人がこの虎に遭遇する事は少ない様に思う。

 この領域、ミルノーシェ領域の人間はアンデッドを恐れるが故に、日暮れの前には余裕を持って人里に戻るから。

 だがこの虎が何処から流れて来て迷い込んだのかは知らないが、残念な事に人工の林の中には獣が少なく、恐らく奴は腹を空かせている。

 であるならば、虎が餌となり得る木こり達を見付ければ、時間帯を気にせずに襲い掛かる可能性も決してないとは言えなかった。


 ……よし、狩る事にしよう。

 恐らく、この虎は林の見回り依頼で想定された危険を越えた相手の為、狩らずに退いて報告しても仕事の放棄にはならない。

 寧ろ私がこの虎に喰われてしまえば、行方不明者が出た事で木こり達も警戒はするだろうが、詳細な情報は不明なままになる。

 だから多分、素直に退いて報告するのが正解だ。


 でもそうすればハンターや傭兵を募って虎が駆除されるまでの間、或いは虎が大勢の人間に逃げてしまえば、木こり達はずっと不安を抱えて仕事をする事になるだろう。

 私は、私に期待してくれた木こり達に、そんな不安を抱えて欲しくはなかった。

 あまり賢い選択では無いかも知れないけれど、勝算はある。

 それに最悪の場合は、四回分も溜まっている番犬の加護を使う事も出来るのだ。

 あの犬が助けてくれれば、最悪の場合でも逃走位は可能だろう。


 故に私は、背負った弓を取り出し構え、矢をつがえて虎へと挑む。


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