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融合世界 - 第三領域と先駆者『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』29
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融合世界  作者: らる鳥
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第三領域と先駆者『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』29



 実は、私はとても力持ちだ。

 ……と言っても力持ちになったのは今朝のステイタス更新時だが。

 今の筋力ランクはCなので、英雄に近しいとか、人並み外れた怪力とか言われるレベルだった。


 当然、私に鉄棒を掴まれた仮称マフィアBはピクリとも動けず、驚いた様にこちらを振り返る。

「な、何だコイツ?!」

 若干怯え混じりに叫ぶマフィアBだが、私は鉄棒を離さなかった。

 ステイタス更新で筋力ランクを上げても、別に見た目が大きくなったりムキムキになったりする訳じゃないので、一見非力そうに見える私に力負けしている事が、尚更異様に思えるのだろう。

 でもまあ、別に私の用事は彼にはない。


 その場の全員が私に視線を向ける中、

「三つ。焦げてない奴。急ぎじゃないから、新しく焼いて」

 私は店主を真っ直ぐに見て注文を出す。

 そう、許し難い事に、マフィア達が店主に絡む間に、火加減の調節が為されなかった肉達は、見るも無残に焦げている。

 だからまあ、新しい肉を焼き直す間位は、私がマフィアの相手をしようと思う。

 そうしたら、流石に衛兵も間に合う筈だ。

 もし仮に、わざわざ焼き直しを頼んでるのに焦げた肉を渡して来た場合は、そんな屋台は潰れされても構わない。


「ふざけんなてめぇ!」

 驚くほどに短気だったマフィアAが私に鉄棒で殴りかかって来るが、私は掴んだままの鉄棒を引っ張って、何とか鉄棒を取り戻そうと踏ん張っていたマフィアBを盾にする。

 流石に仲間を殴るのは気はなかったのか、急停止するマフィアA。

 なので私は握ったままの鉄棒を離し、マフィアBを解放する。

 だが鉄棒を取り返さんと踏ん張っていたマフィアBは、いきなり私が手を離した事で支えを失い、勢い余って目の前に居たマフィアAを巻き添いにしながら地に倒れ込む。


 実にコミカルな動きだった。

 マフィアAは兎も角、マフィアBは中々面白いので嫌いじゃない。

 しかし警戒すべきは地を転がるこの二人でなく、一連のやり取りに参加せず、じっと私を観察していた最後の一人、仮称マフィアCだろう。

 マフィアCは、AやBとは身に纏う雰囲気が少し違う。


「……随分とお強いですね。でも一つ聞かせてください。何故、無関係な事に首を突っ込むんです?」

 武器を構えるでなく、距離を詰めるでなく、マフィアCは油断なく私を見詰めながら、そんな風に尋ねて来た。


 もうすぐ呼ばれた衛兵が駆け付けて来るだろうから、私とぶつかった所で無駄だと考えたのだろう。

 そして何故かと問われれば、答えは実にシンプルだ。

「肉が焦げてた」

 そう、私は肉が食べたかった。

 まあ肉じゃなくてもそうだが、食べ物に悪い虫が寄って来たら、追い払うのが普通だと思う。

 敢えて言うなら、私が通りがかったタイミングで事を起こした彼等が悪い。


「舐めんなよ!?」

 だがその答えが気に食わなかったらしく、倒れていたマフィアAが起き上がり、再び鉄棒を正眼に構える。

 けれども、

「やめろ。もう衛兵が来る。……お食事の邪魔をしてすみません。ここは引き下がらせて貰います」

 マフィアCがAを制止し、起き上がったBを連れて、三人のマフィアはこの場を離れて行く。

 ただ最後まで私を見ていたCの目に、このまま素直に話が終わりそうにない何かを感じた。



「あの……」

 焼き上がった肉を受け取り、私は豪快に齧り付く。

 塩のみのシンプルな味付けだが、脂の旨みと相俟って強い満足感を与えてくれる。

 ガーデナ1は大袈裟にしても、食べる為に掛かった手間は取り戻せたと感じられるだけの味だ。

 店主は助けて貰ったのに金を受け取るなんてとんでもない、みたいな事を言ったが、私は銅貨を押し付けた。

 だって別に無料で肉を食べたくて助けた訳ではないし、何より無料で受け取ってしまうと後の頼みごとを断り難い。


「助けて下さって本当にありがとうございました。毎日嫌がらせを受けてるのに誰も助けてくれねぇし、衛兵もなかなか来ないから、今日こそ駄目かと……」

 なんて風に、礼を言いながらも弱音を吐く店主。

 だが店主と言っても、まだ二十に未だ少し足りない位の年齢に見える。

 そんな風に言いたくなる気持ちは、わからなくもなかった。


 でもその辺りの事情には、私はあまり興味がない。

 ……それにあんな状況で、明らかに暴力に手慣れた相手に、誰か助けに入ってくれと言う方が無茶である。

 私だって依頼人から力を貰ってなければ、或いは中途半端に事情の分かる町の住人だったら、見捨てていた可能性は充分にあった。


 中央広場での騒動なのに衛兵が来るのが遅いのは、確かに色々と問題があるだろう。

 しかしそれでも毎日絡まれてるにも関わらず、ちゃんと対策を取っていなかった店主にだって悪い部分はある。

「助けた訳じゃない。アレは邪魔だったから。それに周囲より、無防備な貴方が悪い」

 それにしても、朝食を食べた後に串焼き三本は、やはり少し多い。

 注文した時はそれで行ける気がしたのだが、実際に食べてみると、お腹が突っ張って少し苦しくなって来た。

 まあ美味しいから残さないけれど。


「えっと……、それでも、ありがとうございました」

 私の物言いに少し気後れした様子の店主だったが、それでも再度礼の言葉を口にする。

 こちらの意思を理解した上で、それでも礼を言うのなら、流石に私もその言葉を拒絶はしない。

 勿論、この場でこちらから事情を聞き出し、お節介にも問題を解決してあげるなんて事はしないけれども

 ただ、そう、肉は美味しく、礼も言われたのだから、少し位はサービスをしても良いだろう。


「そちらも無事で何より。でも私はハンター。依頼があるなら角鹿亭へ。あと数日は泊まってる」

 ハンターとしては、依頼は泊まってる宿を通してくれた方が都合が良い。

 宿を通した分の手数料は依頼料から減るとしても、すじ道をちゃんと通せば宿からの信用が稼げるから。


 お節介で首を突っ込みはしないけれど、それでもハンターとして正規の依頼が来るのなら、出来る限り助けようとは思ってる。



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