うちのフェレットくんがシロクマと間違えられた話
うちにはフェレットくんが一本いる。
名前は夏くん。スターリングシルバーというカラーの子だが、実際には真っ白だ。黒い毛が少しだけ混じって銀色に見えるとのことだが、少なくともうちの子はどう見ても真っ白だ。
数年前のことだ。
今はもうすぐ6歳のおじさんだが、その頃はまだ若々しい男の子だった。
私は彼を連れて近くの公園に行くことを楽しみにしていた。
私がペットキャリーを出し、リードとハーネスを準備していると、夏くんが興味津々でやって来た。
『どこかへ出かけるのか? どこへ行くんだ?』
「公園だよー。みんなにかわいいキミを見てもらおう」
『病院か? おれ病院好きだ。大好きだ。行こう』
「違うよー。公園だってば」
なぜか夏くんは獣医さんが大好きだ。連れて行くととてもソワソワと動き回って、先生にも看護師さんにも懐いている。注射を打たれるのも麻酔を打たれてレントゲンを撮られるのも、遊んでもらっていると勘違いしているようだ。
「はい、ついたよ」
車を駐車場に停め、ペットキャリーから出すと、途端に生気が消えた。
夏くんはどうやら公園が苦手なようなのだ。
家では元気に駆け回るのに、広い場所にぽんと置くと動きが固まる。すぐに私のズボンや上着の中に隠れようとする。
それでもかわいい彼を色んな人に見せたくて、私は人の多いところへ抱いて連れて行った。今から思えば『飼い主の自己満足に付き合わせてごめん』と思う。
確かその日は日曜日で、公園には子どもたちがたくさんいた。
わざとらしく子どもたちの中を私が歩くと、私が抱いている不思議などうぶつを、子どもたちが見つけてくれた。
「わぁー!」
「見たことないどうぶつだ!」
あっという間に子どもたちに取り囲まれた。
私はホクホク。
夏くんはビクビク。
「かわいいー」
「なでていーい?」
「かまなーい?」
「そうやって聞くの偉いね」
私は私にしがみつく夏くんを引き剥がし、子どもたちに差し出した。
「うちの子は噛まないけど、噛む子もいるからね。ちゃんと聞くの、偉い、偉い」
芝生の上に下ろした夏くんを、子どもたちが寄ってたかって撫でてくれた。
夏くんは緊張して、ぬいぐるみのように固まっていた。
撫でながら、子どもたちが聞く。
「これ、なんてどうぶつー?」
私が答える前に、めいめいに思い浮かんだどうぶつの名前を口にした。
「ねずみー?」
確かに顔がちっちゃいし、耳は丸いし、ねずみっぽく見えないこともない。
「いぬー?」
さすがにこんなちっちゃい犬はいない。チワワよりも二回りぐらい小さい。
「ミーアキャットー?」
そんな名前が出てくるなんて、さすがにイマドキの子どもは凄いなと思った。
5歳ぐらいの女の子が、夏くんの顔を覗き込みながら、言った。
「くまー?」
今まで聞いた中で一番意外な名前だった。
ありえない。こんなちっちゃなくまさんは、ありえない。くまのぬいぐるみでもなければ──
しかし、そう言われてみると、確かに──
『くまっ』
シロクマに似てないこともないな──と、思った。