第92話 そいつ
俺の名前はウリル。冒険者パーティー“銀狼の咆哮“のリーダーであり剣士だ。
俺らはある護衛依頼でソロの冒険者と出会う。それが人生の変わり目となった。そいつは飄々として多彩な魔法を使う。それも高位の魔法で無詠唱でだ。
護衛依頼の最中に依頼主のマリオさんがそいつに魔法を教えてもらう事になった時に俺らもそれに乗っかり半信半疑で習ったら魔法を取得できた。
それも無詠唱でだ。
その教えは今まで伝え聞いていた物とは違っていた。そんなことを教えても良いのかとさえ思った。
そいつに聞くと大丈夫だと言うが、どう聞いても秘伝にしか思えない。
そしてそいつは何か危なっかしい。常識を知っているのか知らないのかさえ分からない。いつも俺たちの考えの斜め上を行く。
本当に面白い。
そいつとは色々とやった。何度か護衛依頼を一緒にこなしたり屋台をやったりと面白かった。戦争にも参加した。
それでアイツはトントントンと冒険者ランクをAまであげ、終いには士爵になり家を持つようになった。
そうしたらアイツは家から出て来なくなった。お金もあることが原因だが。
だから俺とダリルとランガの3人はいつもアイツの家に行くようになった。
心配だからだ。
いつもアイツの家に行くと色んなものが増えて飯も美味かったが、そんな事は些細な事だ。
ただ単純にアイツが心配なのだ。
いつも集りに行くようで心苦しかったが、アイツは嫌な顔一つせずにいてくれる。
ますます、心配だ。
商人であるマリオさんもアイツから教えられた事で商人として大成して、アイツに恩義に感じ今まで以上に発展させてアイツのギルドの口座にお金を振り込んでいる。
そんなアイツの考えた事や物は確実に売れる。それで店や物を運ぶときに狙われる。
マリオさんと話し合って俺ら銀狼の咆哮はそれらを守る為にマリオさんと契約した。勿論、冒険者を引退後も後進の鍛錬まで行う。
全てアイツの財産を守るためだ。
契約時には俺ら3人の給金の10%をアイツの口座に内緒で振り込んでくれとマリオさんにお願いした。死ぬまでだ。
アイツには返せない程の恩義がある。
それを少しでも返したい。
だからアイツの家に行きアイツが元気にしているのを確認すると安心する。
ホント、アイツが心配だ。
マリオさんと俺ら3人は契約を機にそれぞれの恋人と結婚することになった。
今度、家族を連れてアイツの家に行く。みんなでだ。
それでコイツが俺らの恩人だと教えてやるのだ。俺らの孫までな。その後は生きていないであろうな。
でも知って欲しい。アイツは俺らの人生の恩人なんだと。
ああ、アイツといると楽しい。いつまで居れるのだろうか?
アイツはいつもフラフラと出掛けては何かアレしている。いつも斜め上だ。
ああ、アイツといると楽しいな。
なぁ、お前もそう思うかコウ?
「は、は、ハックション!」
う〜ん、誰か噂でもしているのでしょうか。時間もありますね。
そうです。銀狼の3人がいつでも来ても良いように何か新しいツマミでも作りましょうか?
何が良いでしょうか?
ああそうだ。あれにしましょうか?
とコウはソファーから立ち上がると足元に魔法陣が輝く。すると視界が切り替わり大きな何処かの広間と思われる場所に転移させられる。
「ようこそいらっしゃいました勇者様方!」
お読みいただきありがとうございます。
ここまででトルドア王国での事は一区切りとなります。まだまだ続きます。
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