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異世界殺人―クロスゲート・サスペンス― - 第十四話 砂の亡霊
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異世界殺人―クロスゲート・サスペンス―  作者: 橘靖竜
第二章 砂の迷宮

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第十四話 砂の亡霊

 ――乾いた風が、頬を打った。

 目を開けると、そこはどこまでも続く砂の海だった。

 空は灰色がかった金色、太陽は淡く滲み、影のない世界。

 リオはゆっくりと体を起こし、腕輪を確かめた。

 銀の輪の表面には、焦げたような模様

 ――観測鍵の片割れが埋め込まれている。

 

 姉ユナが消息を絶って一年近く.....。

 クロスゲート・テクノロジーズという会社でプログラマーとして働いていたはずだった。

 自分なりに調べていくうちに”クロスワールド・ゲート”の開発に関わっていたことがわかった。

 頭がよく、いつも優しい姉。

 この世界に来るようになって半年が経つ。

 様々なところへ入った。魔術も覚えた。

 (必ず見つけるよ、姉さん......。)


 「……ここが、“アメ=レア”か。」

 声はすぐに風に溶けていった。

 砂の粒が、ざらざらと靴底にまとわりつく。

 どこを見ても、人の気配はない。

 あるのは、崩れかけた塔の影と、砂に半分埋まった石碑。


 リオは塔の壁に手を当てた。

 かすかに、脈のようなものを感じる。

 「記録……まだ生きてるな。」


 腕輪が小さく反応した。

 青い光が走り、宙に文字が浮かび上がる。

 《認証信号:欠損データの回収を開始します》


 その瞬間、砂の下から何かが動いた。

 ――ゴソリ。

 風が止まり、空気がざわつく。


 リオは身を引き、腕輪の光を上げた。

 砂の中から、白い影がゆっくりと立ち上がる。

 人の形をしているが、顔がない。

 光と砂が混ざり合ったような体。

 胸のあたりに、かすれた文字が浮かぶ。

 《ERROR_LOG》


 「観測……亡霊……」

 リオの喉が震えた。

 ――セラが言っていた。

 記録から完全に消しきれなかった意識の残骸。

 観測が途切れた者は、世界のどこかに“断片”として残る。


 亡霊は、ゆっくりと顔を上げた。

 耳のない頭から、低い声が響く。

 「……かえ……せ……記録を……」


 次の瞬間、砂が爆ぜた。

 白い腕がリオの胸を貫こうと伸びる。

 リオはとっさに腕輪をかざし、叫んだ。

 「《観測固定(Fix)》!」

 空間が一瞬止まり、光が拡散した。

 しかし、亡霊はすぐに形を変え、背後に回り込む。


 (くそっ……!)

 砂の中から無数の手が伸び、足を掴む。

 リオは転倒しかけたその瞬間――


 鋭い音が空気を裂いた。

 白い閃光。

 亡霊の胸をまっすぐ貫く銀の線。


 「……捕縛対象、無力化を確認。」


 女の声だった。

 砂の向こうから、白い外套をまとった長身の影が歩み出る。

 腰には銀色の剣。

 風が吹くたび、三つ編みにした長い髪がなびいた。

 瞳は金属のように冷たく、光を跳ね返す。


 リオは息をのむ。

 「……アデル?」

 女は剣をおさめ、砂を払った。

 「久しぶりね、リオ・アーデン。」

 「なんで、ここに……?」


 アデルは短く息をついた。

 「王国警備局から命令よ。

  “記録層に異常な波動”――つまり、ここ“アメ=レア”で異変が起きている。

  私が来たのは、その調査のため。」


 「記録層……」

 「人々の“観測記録”が積み重なってできた層よ。

  本来なら、誰も入れない場所。

  でも、あんたやハレルのような“転移者”が現れたせいで、境界がゆるんでいる。」


 アデルの瞳が、リオの腕輪をとらえる。

 「その腕輪……観測鍵の片割れね。」

 「……ああ。姉さんを見つけるために必要なんだ。」


 「ユナ、という名だったか。」

 アデルは少しだけ表情をやわらげた。


 「彼女の意識データを追跡しているの。

  最新の記録では、**この迷宮の中央部――“砂の核”**にいる可能性が高い。」


 「……本当か?」

 「保証はない。でも、カシウスが動いているのは確か。

  “記録世界プログラム”を使って、記録そのものを書き換えようとしている。」


 リオは唇をかみ、砂を握った。

 「……つまり、姉さんを“消そう”としてる。」

 「そう。彼女を取り戻すには、先に“プログラムの核”を止めなきゃいけない。」


 沈黙。

 砂の海の上に、風だけが流れる。

 アデルは剣の柄に手をかけ、振り返った。

 「来る気、ある?」

 リオは笑った。

 「もちろん。もう、一人で探すのはやめる。」


 アデルの口元が、ほんのわずかにゆるんだ。

 「じゃあ、決まりね。観測官候補、再任――ってところかしら。」


 二人の足元で、砂がさざめいた。

 その下で、眠っていた亡霊たちの残響が静かに消えていく。


 リオは腕輪を見下ろした。

 観測鍵の欠片が淡く光り、遠くの空へ信号を放つ。

 (ハレル……聞こえてるか?)

 青白い光が砂の中に吸い込まれていった。


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