2-36 オフ会 スイーツ店のち車中
よろしくお願いします。
白とピンクの精神に来る外装をしたスイーツ屋に入る。
可愛い制服の女の子たちが元気に働くお店だ。むしろ男の方が得する店に思える。
席に着くなり、3人娘は目をキラキラさせて開いたメニューを見つめ始めた。
「ねえねえ、ククル、これ美味しそうじゃない!?」
「ふぇーっ、なんだそれぇ!?」
「私はもうちょっとシンプルなのが良いわね。こういうの」
「「えーっ、なんでぇ!?」」
ロロの言葉にクラリエさんが同調し、シルニャンが否定する。
キャッキャッキャッキャッと、女子女子しておるわい。
俺は邪魔をしないよう、一人静かにメニューを眺めた。
お新香サービスとかないかな? スイーツ店はこれで二回目だけど、一回目に行った時にガチでお新香が欲しいと思った。甘いものを食うとキュウリの糠漬けが恋しくなるんだよな、俺。
……まあ、無いよな、うん。
どうせロロが迷うんだろうけど、一応目星をつけておく。
キャッキャッすること10分ほど。長いが可愛い。
3人ともようやっと決まったので、注文する。
やはりロロは迷ったので、俺が片方受け持つことにした。
そんな俺とロロの行動を、クラリエさんがほけーと見つめる。八重歯が覗いて可愛いな。
どうしたの、とロロが尋ねると、クラリエさんは我に返ったように目をパチパチした。
「え、あ、ああ、ホントにコウヤさんはご飯……これはお菓子だけど、ロロと半分こにしてくれるんだなって思って」
ロロはドヤ顔で答えた。
「だって私達仲良しだもの!」
「はわぁ、私と同い年なのにこんな贅沢な生活を……やべぇ」
クラリエさんがロロをリスペクトし始め、ロロのドヤ顔がさらに深まる。
それにしても、クラリエさんは前から俺とロロがご飯を半分こしてるって知ってたんだな。
チャット友達とかなのかな? あるいは、ゲームが好きだしその関係かもしれない。
ほどなくして、ケーキやらセットのドリンクやらが運ばれてきた。
ロロは当然のことながら、クラリエさんも八重歯を覗かせてぱぁーっと顔を綻ばせる。
そんなクラリエさんが、次いで運ばれてきたシルニャンのスイーツを見て、にゃーと鳴いた。
「う、う、ウサちゃんケーキ……ッ! お、おまっ」
「どうしたのよ、良いじゃないウサちゃんケーキ。普通だわ?」
「へ、はっ!? そそ、そうだよな、うん、普通だった!」
そうして何故か俺の顔を見るクラリエさん。
俺と目が合ったクラリエさんは、またにゃーと鳴いて真っ赤な顔で俯いた。俯きつつもウサちゃんケーキをチラッと見る。
「こんなんぶっ壊れるだろ……」
そんな事をポツリというクラリエさんだが、何を言ってるのかさっぱり分からない。
ウサちゃんケーキが食べたいサインまであるようだし、何かのネタなのかもしれないな。
「ウサちゃんケーキはそんなに人気なの?」
俺が尋ねると、シルニャンは若干顔を赤らめながらコクリと頷いた。
「はい。もともと有名ですけど、最近さらに再ブームになってます。食べてみますか?」
「いいの? じゃあちょっとだけ貰おうかな」
シルニャンはウサちゃんケーキを切り分けてくれた。
ウサちゃんケーキは、ロールケーキの細い版だ。コンビニなんかで売ってそうな控えめサイズって感じ。
断面にデフォルメされたウサギの顔型のクリームが入っており、上手に切ると金太郎飴のように切った断面にもウサギの顔が出来るみたい。
「じゃあ、お礼に俺のケーキもどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
俺とシルニャンはスイーツを少し交換した。
あ、だけどシルニャンと交換しちゃって大丈夫だったか?
俺はロロを見た。別に気にしてなかった。
「これ、ロロティレッタもどうぞ。ククルも」
シルニャンはいそいそとウサちゃんケーキを2人にも分けてあげた。
「おっ、それじゃあ私もあげないとダメね。はい、どうぞ。ついでにククルにも」
「わぁあ! じゃ、じゃあ私のもあげるよ!」
何故か交換合戦が始まった。
ということで、俺もクラリエさんとスイーツを交換し合った。
自分の分を合わせて4種類のスイーツが食べられるロロは、満面の笑顔になった。お菓子大好きの性質は付き合っても何ら変わらないな。まあ当然か。妊娠した時に変わるって言うけど、まだまだ先の話だしね、なあロロにゃん?
シルニャンはすました顔で食べているけど、どこか楽し気だ。
クラリエさんは八重歯を丸出しにしてにぱぁーと笑っている。この子は凄く楽しそうだな。
そして俺は……うん、超楽しい。
女子と遊びに行った事なんてなかった中高生時代の暗黒の記憶が光の中に消えていくよう。
そんなお茶会を1時間ばかり過ごし。
「で、で、次はどうするんだ?」
クラリエさんが目をキラキラさせて2人に尋ねた。
シルニャンはロロを見つめ、ロロが俺を見つめ、それに合わせて全員が俺を見つめた。素晴らしい跳弾アタックだ。
これで俺も女子ならば、ウインドウショッピングと提案した事だろう。女子の町だし、非常に無難だ。
だけど、こちとら男である。
3人娘のお買い物に付き合わされたら、どうなるか分かったものじゃない。
気疲れはマッハだろう。
ならばどうするか。
考えは2つある。
1つは、ゲーセンなどのアミューズメント施設に行く。これもまた鉄板ではあるけれど、面白味もない。
そこで俺は、もう1つの考えを提案してみた。
「2人に時間があるなら、今からこの4人でパーティを組んで、クエストに行ってみない? お休みの日なのにおかしいかな?」
3人はきょとんとして顔を見合わせた。
そうして真っ先に声を上げたのは、クラリエさんだった。
「い、行きたい!」
思わず席を立つくらいの勢いだった。
「面白そうですね。賛成です」
続いて、シルニャンも賛同してくれた。
「やれやれ、ククルに私の凄さを見せる時が来たか」
やれやれ系ヒロインを始めたロロは席を立ち、カーディガンを脱いで、いつもの黒いロングコートを羽織った。実に簡単な戦闘準備である。
「闇の解放は、20%ってところかしら」
それに同調するように、シルニャンも頭に角を付け、背中に羽を付け、さらに仮面を装着。
「え、え、え? な、なにそれ。私そう言うのないんだけど」
二人の戦闘準備にクラリエさんが戸惑った。
俺も戸惑った。
俺達は今、エアシップという乗り物に乗って移動している。
俺達が受けたクエストの討伐対象が、このメローから15キロ離れた場所にいるからだ。
テフィナの移動と言えば転移ゲートが主流だが、大昔はそうではなかった。その頃には、仕組みこそ違うものの地球とそう変わらない乗り物が多数活躍した。
現在も、転移ゲートは町の中にあるのがほとんどなので、町から離れた場所への移動は乗り物を使うことが多い。
テフィナで今生産されている乗り物は、総称してエアシップと呼ばれる。
タイヤはなく、空中に浮かんで飛ぶ乗り物だ。
限界高度や速度に差はあるが、形は大別して2種類。2輪車か4輪車みたいな形状だ。もちろん前述の通り、タイヤはないが。
俺達が乗っているのは、軽のワンボックスカーの天井を取ったような形状のエアシップ。
これはメローの町でレンタルしたものだ。料金は1時間毎に200テス掛かる。
運転者はシルニャン。
というか、免許を持っているのがシルニャンだけだった。
3日間の講習を受ければ誰でも免許が取得できるそうなので、俺もそのうち取ろうと思う。
しかし、シルニャンはペーパードライバーだった。
メローの町から伸びる道を20キロくらいでノロノロと走る。
そんな有様だが、転移ゲートが移動の主流となっているテフィナ人にとっては面白いらしく。
「すげえすげえ! シルニャン、動いてるぞ!」
前の席に座るクラリエさんがキャッキャしながらシルニャンに話しかける。
しかし、シルニャンは目をギンッと開いて道の先を見続けるばかりで、反応しない。
「し、シルニャン? どうした? 動いてるぞって言ったけど聞こえてなかったか?」
「話しかけないで!」
「お、おう、そう言う感じか、ごめんな。なあなあ、ロロロロー、動いてるぞって、近ぁっ!」
シルニャンは構ってくれないと判断したクラリエさんは、座席に膝立ちになって後部座席に座るロロに話しかけてきた。
しかし、太もも同士をぴったりとくっつけながら手を繋いで座っている俺達の状態を見て、クラリエさんは驚愕する。
「ちょっとククル! うるさいわよ! 集中できない!」
「ふぇえ、ご、ごめんな。楽しくてはしゃいじゃったんだよ。シルニャン、ごめんな?」
「ちょ、わか、分かったから。肩揺すらないで、危ないんだって!」
これにはたまらずシルニャンもブレーキ。
そして、ククルさんの太ももに鉄槌を落とした。
ひにゃー、とククルさんが悲鳴が車内に響く。
「自動運転にすれば?」
ロロが言った。
「アンタが免許を取ったとして、自動運転に設定する?」
「するわけないじゃない、そんなダサい事」
どうやら自動運転モードがあるみたいだけど、使うとダサいらしい。
あるよね、そういう暗黙のルールみたいなの。ゲームでオートモード使うのはダサいとか。
「答え出てるじゃない。というわけでククル、うっさいから邪魔。後ろに移動して」
「しゅん……」
ククルさんはしゅんとしながら後部座席へ移動した。
しかし、ロロの隣に座ったククルさんはすぐに元気になった。
「なあなあ、なんかロロって良い匂いするな、大人の女って感じ。シャンプー何使ってるんだ?」
「ルナティア」
「あれかぁ。私、フワッポ」
「フワッポってアンタ、小学生かよ!?」
「にゃんだとぅ! フワッポは万能なんだぞ、そのまま身体だって洗えちゃうんだぞ!」
「だから小学生かよって言ってんのよ」
「にゃにぃ! そんな数式が成り立つのか!」
「学会の発表見てないの? 業界は騒然としたのよ?」
「あー、リンスの新しい活用法の学会なぁ。色々な使い方があるんだなって思いました丸」
どんな学会だよ。
会話の流れ的に恐らく冗談なんだろうけど、ククルさんの冗談は冷や汗ものだった。
俺もロロも、付き合う前はお互いのリンスを利用して悪戯してたからな。
いや、まあ、付き合ってからの方が消費量が多くなったんだけどな。ロロにゃんが蜜技魔法でぬるぬる液を出してくれるんだけど、これにリンスを混ぜるとこれがまあ良い匂いになるのだ。ロロにゃんが俺のリンスの香りを嗅いでたのがよく分かるね。
その後も、キャッキャキャッキャ。
ククルさんが後部座席に来たことで、ロロが俺じゃなくククルさんとイチャイチャし始める。
ククルさんはお喋りが好きなのか、なあなあ、なあなあ、と人懐っこくロロに話しかけ続ける。
ロロもお喋りが楽しいのか、ククルさんと喧嘩みたいな掛け合いをしながら会話を続けた。
しかも二人ともボディタッチが多い。超可愛い。
そう言えば、ロロは俺と付き合う前はこういう風に、冗談交じりに生意気なことをよく言っていたな。友達関係だとこうなのかもしれないな。
尤も、今もデレデレの中に冗談が混じるけど。どちらにしても最高に可愛い。
シルニャンは相変わらず20キロくらいで走行。
その運転姿勢は、妙に背筋がピンとしてるように思える。もう少しリラックスして運転した方が良いじゃないかな? まあ、俺も高校生だったし、車の運転についてはよく分からんけど。
なんにしても、ロロに良い友達ができて俺は嬉しく思った。
読んでくださりありがとうございます。
ブクマ、ありがとうございます!