97.引き取り連絡がない双子
双子って本当にそっくりなのね。両親とともに見に行ったウテシュ王国の王子を眺める。初対面の時と同じ感想しか浮かばないのは、ガブリエルにとって重要ではないからだ。興味を惹かれることもないし、当然異性として意識もしない。
叔父アウグストが捕まえた侵入者。その意識のままだった。
「なあ、いつ出してくれるんだ?」
「ネロが悪いんだよ。父上も怒ってると思うぞ」
ネロとミロ、名前は認識している。双子は同時に生まれると聞くが、顔も似ているのは不思議。ガブリエルはそんなことを思いながら、塔にある部屋の中を眺めた。昔見たことがあるけれど、実際に使われている状態を初めて見た。
客間と違い、豪華な家具はない。でも最低限の家具はあった。実用一点張りの木製家具に装飾はない。豪華さも優美さもかけ離れたベッド、机と椅子。二人の部屋も分けられていた。中央に明り取りを兼ねた穴があいた円柱状の建物、その穴のすぐ外は廊下になっている。
中心が明り取りの穴、廊下、部屋の順番だ。廊下側は半分以上壁で塞がれていた。端に扉があり、その部分が檻になっている。王家の貴族牢も似たような造りだが、ガブリエルにその記憶はない。王太子妃教育でも、牢を見学することはなかった。
扉の周囲を檻にするのは、囚われていると示すため。扉の影に隠れた囚人が飛び出す危険を避ける意味もあった。脱走を企んでも、音や臭いが筒抜けになる利点もある。
「お父様、どうなさるの?」
「ウテシュ王国に連絡をしたが、受け取りに来ないんだ」
ガブリエルはにっこりと笑った。なるほど、父はこういったお話を彼らに聞かせるために、私を同行させたのね。弟ラファエルは勉強を理由に残されたのだから。
「では、ずっとこのままですか?」
「邪魔だし迷惑だからな。対応を考えるとしよう」
他国へ任せる可能性も含め、曖昧な言い方をする。慌てたのは牢内の二人だ。両端にある扉から何とか会話が出来る程度で、騎士とも離された。不安を増長する会話に、彼らが黙っていられるはずがない。
「待て! 父上に連絡させてくれ」
「ネロの指を付けて送ったら、助けてくれるかも」
「そういう時は、ミロ。お前が犠牲になるべきだろ」
まさかの喧嘩が始まり、どちらの指を切るかと騒ぎ立てる。ガブリエルはこてりと首を傾け、父を見上げた。
「お父様、ウテシュ王国は指を切り落とす野蛮な国なのですか?」
王太子妃教育で習っていないわ。そんな口調で無邪気に尋ねる。父ヨーゼフも悪乗りし、大声でとんでもない発言をした。
「野蛮かと言われれば、そうだな……戦の好きな国だ。きっと王子の指があれば、動くかもしれん」
「まぁ……絶対にお付き合いしたくありませんね」
国境が接していなくてよかった。それにしても、従者として同行した騎士達は厳しい尋問を受けたというのに、気にする様子もないのね。最低だわ。ガブリエルは大人びた感想を表情に浮かべ、ゆっくりと長い息を吐いた。