Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す― - レイズを受け入れるヴィル。
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―  作者: くりょ
レイズを知る。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/703

レイズを受け入れるヴィル。

ヴィルは、しばらくのあいだ俺の顔をじっと見つめていた。

その瞳の奥には、驚きと安堵、そして――柔らかな何かが混ざっているのが、はっきりと分かる。


「よくやった、レイズ……いや」


一拍置いて、ヴィルは言い直す。


「――おまえ」


そう言って、俺の肩に手を置いた。ぎゅっと力を込められた掌の重みは、厳しさよりも、年長者としての確かな信頼を感じさせるものだった。


「驚くことはない。別の世界から来たという話は、確かに突拍子もない。だが――おまえがここにいて、この屋敷で生きている以上、我々はまず“現実”を受け止めねばならぬ」


ヴィルの声は落ち着いている。


「謝る必要はない。だが、一つだけ覚えておけ」


その眼差しが鋭くなる。


「この体は、ある家の縁者と深く関わる者のものだ。外面での立場、過去の因縁、人間関係――それらは消えない。おまえが誰であれ、外部は“レイズ”としておまえを見る。軽率な振る舞い一つで、屋敷全体が動くこともある。その責任は、おまえの肩にもあると自覚せよ」


「……わかりました」


俺は俯いたまま答えた。


「本当に……すみません。あなたと関わりのある人の体を……乗っ取ってしまって……」


声は震え、視界が滲む。

申し訳なさと、安堵と、整理しきれない感情が胸の奥で絡み合っていた。


ヴィルは、静かに首を振る。


「謝る必要はない。だが、まずは事実の確認だ」


彼は一歩踏み出し、落ち着いた口調で続けた。


「おまえがどれほどの記憶を持っているのか。レイズとしての過去、関係者、知っていることを聞かせてくれ」


その声音には、冷酷さはなかった。

実務的で、そして人を切り捨てない者の優しさがあった。


――この屋敷で長く仕えてきた執事長。

情だけでは務まらず、しかし情を捨てることもできない男。


「ゆっくり話せ。可能な限り正直にだ。分からないことは、分からないと言え。隠し事は許さんが、無理に作り事をする必要もない」


そう言ってから、ほんのわずかに表情を和らげる。


俺は深く息を吸い、胸の中に散らばっていた断片を拾い集めるように語り始めた。

ゲームの知識。

“レイズ”という名の役割。

この世界で耳にした断片的な情報。

そして、自分がここに来た経緯――転生に近い感覚であること、レイズ本人の行方が分からないこと。


話し終えるまで、ヴィルは一言も口を挟まなかった。

ただ静かに頷きながら聞き、表情を変えていく。


険しくなり、

寂しげになり、

そして最後には、何かを決意したように静まった。


「……よかろう」


ヴィルは、低く告げた。


「まずは屋敷での立場を保て。無用な外出は厳禁だ。だが同時に、我々で調べる。屋敷の記録、家の関係者、近隣の動き――私も手を貸す」


「そして――」


一拍、間を置く。


「おまえが“死”を扱えるという事実は、祝福にも、呪いにもなり得る。今はまず、それを制御し、どう扱うかを学べ。心と体を鍛え、屋敷に害が及ばぬようにする」


ヴィルの視線が、真っ直ぐに俺を射抜く。


「私が教えたのは基礎に過ぎん。さらに丁寧に、細かく教える。だが――安易に人前で示すな。分かるか?」


「はい……分かります」


胸を張ったつもりだったが、声はまだ震えていた。

それを見て、ヴィルは短く息を漏らすように笑う。


「よろしい。では、今は休め。夕刻にまた来い。必要なら、相談に乗る者も探そう」


そして、最後に。


「忠告しておく。誰もが善人ではない。おまえを利用しようとする者、恐れて封じようとする者は必ず現れる。信じる相手を見極めるのも、おまえの役目だ」


張り詰めた空気の中で、その温もりは確かな支えだった。


夕刻へ向かい、屋敷の影は長く伸びていく。

だが、俺の胸には小さな決意が芽生えていた。


――ここで、何かを成せるかもしれない。

たとえ他人の体であっても、今はこの命を預かる者として、責任を果たそう。


そう、心に言い聞かせた、そのとき。


ヴィルが、再び口を開いた。


「……おまえが悪しき者でないことは、先の鍛練で理解している」


その一言で、胸の奥がじんと熱くなる。


ヴィルは目を閉じ、先ほどの光景を思い返しているようだった。

失敗を重ねながらも投げ出さず、必死に魔力を扱おうとする俺の姿。

それを叱咤しつつ、導いていた彼自身の姿。


「……あれは、誰が見ても師と弟子だった」


ヴィルは静かに笑う。


「その、真っ直ぐに学ぼうとする姿勢。私は、そこが気に入った」


堪えていた涙が、一気に溢れた。


「ヴィルさまぁぁぁ!!」


叫んだ俺に、ヴィルは木刀の柄で床をコツンと叩く。


「……私は執事長だ。敬称は要らん」


少し照れたように目を逸らし、短く告げた。


「ヴィル、と呼べ」


「……っ、ヴィル!」


俺は涙を拭い、その名を力いっぱい呼んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ