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魔王になる。
屋敷へと戻るレイズの足取りは、まるで戦場に赴く兵士のように重かった。
(開けたら最後……もう後には引けない)
――脳裏に浮かぶのは、かつてゲームの主人公が魔王の城に挑む前に仲間へ告げた言葉だった。
「みんな、覚悟はいいか? もう後には引けないぞ」
そして仲間たちが頷き、扉を押し開ける――。
そのシーンを重ねながら、レイズもまた大きく息を吸い、覚悟を決めて食堂の扉を開いた。
そこに広がっていたのは――期待を裏切らぬ、いや、期待を遥かに超える光景だった。
巨大なテーブルの中央には、どっしりと構える豚の丸焼き一匹。
そして、その端に――申し訳程度の小さな小皿に、ほんの数枚のサラダ。
レイズは思わず口元を歪め、涙を浮かべながら笑った。
「ククク……これではまるで、俺こそが魔王ではないか!」
そして大声で叫ぶ。
「逆だろおおおおおお!!!」
そんな声がむなしく響くのだった。