レイズの本音。
目を覚ますと、鋭い痛みが頭を突き抜けた。
「……っつぅ……なんだこれ……」
鈍い頭痛に襲われながら、俺は天井を見上げる。
まるで頭の中で太鼓が鳴り響いているみたいだ。
それと同時に――嫌でも思い出す。
(……レイズになって、まだ3日目だよな?)
木刀を振り回しては泥に突っ込み、
リアナやリアノに支えられ、
イザベルと心の奥を抉るような会話をして、
そしてヴィルに当主の覚悟を問われて……。
普通の人生で言えば、一ヶ月、いや一年分くらいの出来事が
たった3日で押し寄せてきた気がする。
「……いろいろありすぎだろ。ほんっとに……」
小さく吐き捨てるように呟き、
俺は頭痛を抱えながら、もう一度深く息を吐いた。
それはどこか卑屈な気持ちを呼び起こしていた。
「もっとさ……もっとゆっくり、この世界を楽しみたかったのになぁ」
朝の光を浴びながら、心の中でそうつぶやく。
せっかく異世界に来たんだ。美味い飯を食べて、面白いやつらと話して、ちょっとずつ鍛練して、笑って過ごす――そんな日々を望んでいた。
それなのに現実はどうだ。
たった二日で当主に祭り上げられ、血と泥にまみれて剣を振り回し、皆から期待と涙を背負わされている。
「……ほんと、ゲームみたいにイベント詰め込みすぎだろ」
それなのに――。
俺はむきになって、あの完璧イケメンのクリスに突っ込んで……泥まみれになって……。
「……はぁー。」
思い返すだけで情けなくて、笑えてきて、頭の奥がズキズキする。
やってることがカッコいいのかダサいのか、自分でももう分からなかった。
そんなことをひとりで嘆いていると――。
「当主様!」
「レイズ様!」
勢いよく扉が開き、リアナとリアノが並んで入ってくる。
レイズはベッドの上で頭を抱えたまま、深いため息をついた。
「……ほんと、勘弁してくれよ。疲れたんだって……」
必死の訴えも、二人にはまるで届いていない。
リアナはキラキラした目で「今日も鍛練ですか!」と張り切り、
リアノは心配そうに「お体は大丈夫ですか?」と身を乗り出す。
両極端な双子に囲まれ、レイズはさらに頭痛がひどくなった気がした。
「……もう恥ずかしいから、そっとしといてくれ」
力なく笑いながらも、レイズの声には切実さが滲んでいた。
「ちょっと……ゆっくり考える時間もほしいんだ」
それは“当主”としての建前でも、“レイズ”という役割でもなかった。
ただのひとりの人間として、ようやく口にできた――まっとうな本音
そうして再び深い眠りにつく。