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悪役令嬢なんて知りません!〜悪役令嬢ホイホイの騎士団長は今日も歩けば出会ってしまう - 悪役令嬢は岩を飛び越え突き進む(前編)
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悪役令嬢は岩を飛び越え突き進む(前編)



 悪役令嬢マリア・トリーゼは洞窟の中をひたすら走っていた。時折流れてくる障害物を必死で避ける。


 漆黒の騎士ジェド・クランバルも流れてくる障害物をジャンプして避けた。何故こんなにも岩が流れてくるかは分からない。敵は採掘でもしているのかもしれない。


「気をつけてくださいジェド様、当たると一機減りますので!」


「走ってる中すまないが、もう1回そのゲームの内容から説明してもらってもいいか!?」



 騎士団長ジェド・クランバルは今度こそ悪役令嬢に巻き込まれて死ぬかもしれないと思った。



 ―――――――――――――――――――



 公爵家子息、皇室騎士団長ジェド・クランバルは悪役令嬢呼び寄せ体質である。


 いつも悪役令嬢に巻き込まれて仕事してないように見えるが、ちゃんと仕事をしている日もある。


 今日は領内の洞窟に異変が起きたという知らせがあり、騎士団一同で調査に来ていた。

 何故皇室騎士団が洞窟調査に? と思うじゃないですか。

 「暇なら行ってきたら?」と皇帝陛下が言ったから。そう、騎士団は暇なのである。

 暇なのはこの国最強にして仕事が出来すぎる陛下のせいでもあるが……そもそも俺達より強い陛下は危険も自分で何とかしてしまうだろう。

 城内に居る皇室魔法士達だってやる事が無さすぎて研究するしか無いので、根暗なオタクとか言われちゃいますし……カッコ良く活躍するのを夢見て入ってきてるんだから活躍させたげてよ。


 という訳で暇な俺達騎士団員は洞窟の調査に来ていたのだが、この領地の警備兵が俺を見て「あれが……例の……伝説の悪役令嬢……」とヒソヒソしていた。おいコラ陰口は良くないぞ、俺はめちゃくちゃ耳が良いから全部聞こえているからな。あと何度も言いますが、俺は悪役令嬢ではない。


 異変が起きたという洞窟は、近隣の村の人達の話だと数日前からずっと何かがぶつかったり壊れたりするような騒音がしてうるさいらしい。

 ゴブリンか何かが住み着いていたらどうしよう、と村の人達が不安になり調査を依頼してきたのだ。

 ちなみに魔物の類は陛下の治世になってからは魔王領に引っ越すようになっているので、余程悪意がある魔物でなければ人の住む所に出没はしないのだが、はぐれ魔獣や野良のゴブリンという説も無い訳では無い。

 騎士団員は万全の注意を払い、洞窟内に足を踏み入れた。


「……確かに、聞いていた通りぶつかったり壊れたりするような音が聞こえますね」


「ああ、だが……」


 だが、それよりももっと気になる事がある。


「このピコピコ聞こえるの何スかね?」


 破裂音の他に、洞窟に入った時からずっと音楽が鳴っていた。

 それは、弦楽器などで弾いたような音ではなく全く聴いたことがないものだった。何かこう……電気の魔法で作られた音楽とでもいうのだろうか?


「これって……やっぱ異世界関連ですかね?」


 最近、異世界人が召喚された事による問題や不可解現象が数多く報告されている。『何か分からない事が起きたらまず異世界人と疑ってかかれ』という文句が流行る程だ。

 俺は言い表せぬ不安を感じていた。経験が告げる……自分は早く帰った方が良いのでは無いか、と。

 その時、副団長のロックが何かを見つけた。


「お、おい! あれ!」


 声の示す方を見ると洞窟内に女性が1人倒れていた。

 ロックが駆け寄ろうとした瞬間、その女性のいた床が崩れた。それに気付いた騎士団全員が助けに走る。ロックも走る。何故か俺が1番早く辿り着くいてしまう。

 当たり前ですよね……我、漆黒の騎士団長ですから。一応実力で騎士団長やらせていただいてますからね。

 だが……この時ばかりは己の足の速さを悔やんだ。


「馬鹿! ジェド、危なっ――」


 ロックお前、今馬鹿とか言ったな? そう言うならお前がもっと早く走れよバカッ!


 俺は……倒れていた女性を庇いながら崩れた洞窟の奥底へと落ちて行った。



「騎士様……騎士様……大丈夫ですか?」


 目が覚めると、先ほど倒れていた女性が目の前にいた。良かった、怪我は無さそうだ。それに自分も頑丈だから当然目立った傷はない。

 ここは何処だろう……かなり深くまで落ちてしまったようだ。

 落ちて来た方を見上げると、すぐ上に謎の数字が見えた。2種類の数字の列があり、一方の大きい方の数字は減っているようだった。えーと、何……これ?


「危ない!!!」


 突然その女性に突き飛ばされる。この女性、意外と力が強く壁まで飛ばされたのだが……その直後に自分のいた所をものすごい勢いで何かが通り抜けていった。

 それは壁に当たると粉砕して、少しすると消えてしまう。


「……岩?」


「急いで!! 次が来る!!」


 女性の指差す方を見ると、大量の岩や鉄球が転がって来た。えええええええ!!!?! 何これ!!!?

 咄嗟に女性の手を取って逃げようとしたが、すぐに止められる。


「違います! そっちじゃすぐに行き止まりになって詰んでしまいます!! 進むのは、あっちです!」


「あっちって……」


 あっち、は岩と鉄球である。


「避けながら! 進むのです!! それしかっ、方法は、ありません!!」


 そう言うと女性は岩を避けたり飛び越えたりしながら器用に進んでいった。えー? 何これ……

  俺は言われたままに避けながら女性を追いかけた。

 色々分からないことが多すぎて説明して貰いたいのだが、1つだけ分かってる事は……


 やはり彼女は悪役令嬢なんだろう。


 そして冒頭に話は戻る。

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