第十九話 旅。四日目
三話目此れで終わりです。
見渡す限りののどかな田園風景。
道すがらに召喚師のジョブに変更。
第三級魔術【鳥類召喚】を使用する。
此れは一定時間、召喚した鳥類で偵察及び探索する為の召喚魔術だ。
複数の鳥類を召喚し、その視界若しくは聴覚を共有する事が出来る。
此れを使ったのはある目的の物を探すためだ。
召喚魔術って使える人少ないんだよね……。
なんでか知らんけど。
過去を回想すると、僕はあの法王国がククル村を襲撃してきた時に、人壁として使われた奴隷達を皆後に解放させた。
そして、ココロ村に帰された元違法奴隷達の名簿もシャルから見させてもらった。
その数十人。
その内五人の顔は覚えてる。
中にはあの森の中で切られた道案内役の弓兵のダークエルフのお姉さんも居た。
僕達が村を歩いて居る時、この村に解放され戻されたはずの元違法奴隷達は一人も見なかった。
たまたまという事もあるが全員というのも不自然。
他のメンバーにも僕の懸念を話して、不自然で無いレベルで探ってもらうようにしてもらった。
予想が正しければ監禁そして人質にされている可能性があるからだ。
確証は無い。
だが僕達がこの村人に襲撃された時、矢には毒が塗られていた。
おそらく村長達は人質を取られ脅されたんだろう。
好意的に考えればだが。
ここまでが僕の推理だ。
とはいえ表向きはこの村の特産品を考えているように振る舞わないといけない。
僕は村の景色を一望する為に小高い丘に登りジョブを変更。
ジョブは魔道弓兵。
二日前迄に溜め込んでいた経験値を使用しレベル三にしてある。
全ジョブ中で最長の射程距離を誇る。
弓兵の【鷹の目】の上位互換版【神の目】のスキルを使用する。
そうして村の隅々まで注視する。
あっ……因みに竜兵士も三レベルにしてます。
「ひぃひぃ……」
……今頃丘の上に到着したよセリス。
護衛役を自ら買って出たのはいいが、肝心の護衛対象より足が遅いってどういう事?
仕方ないか……。
……まあセリスは可愛いからいいけど。
村の土地の一部から湯気が立ち上がっている。
炊事の煙ではない。
高温の温泉の湯気だ。
僕の近くでも湯気を上げてるので間違いない。
僕はそれを丘の上から見ていた。
足元の土を屈んで拾い掌に載せ状態を見る。
「酸性の上、土の状態が良くない……となると土壌自体を改良しないと」
焼畑農業は無理だな。
ただでさえ温泉のせいで乏しい周囲の緑化環境が激変しそうだ。
石灰を作って畑に混ぜないと。
とはいえ石灰は潰す貝殻が無い事には作れないな~~。
「ひぃはぁ……」
肥料は人糞だけでいいかな?
それとも腐葉土を混ぜるか……。
「畑はそれで良いとして何かこの村の特産を考えないと……」
手元の紙に地図を描き木炭で書き込んでいく。
「温泉を使えば人を呼び込めるな」
「ひはぁ~」
高温の温泉を使った料理なんかどうだろう。
温泉卵。
温泉の蒸気で火を通した肉や野菜。
小豆があれば温泉饅頭が出来るんだが。
にがりがあれば温泉豆腐も出来るが無理かな。
「後は高温の温泉を冷ましてお風呂にする方法だな」
「はぁはぁ……カイル君」
木の板で水路を作りその上から熱湯を引っ張って来て距離を調整し流し込めば、人肌に合う位には温度調整は出来るだろう。
木目の水路は見た目的にも美しいし。
問題はお客だ。
個人の行商人を目当てにするかキャラバンをターゲットにするか。
もしくは冒険者?
酔狂だけで旅をする奴はいないだろうし。
「カ・イ・ル・君」
「ふえ?」
「ふえ? じゃないよさっきから呼んでるのに……はあはあ」
「すみません」
考え事をしている僕に話しかけるセリス。
因みに彼女は十二歳だと後で教えてもらいました。
彼女は姉から譲ってもらった中古の緑の革鎧を身につけ僕を睨みつける。
その背の弓矢と腰の小剣に付いた木の葉を払う。
かなり息が切れてる。
体力無いな……この子。
僕はというと専用に仕立てた黒い革鎧のポケットに紙と木炭を直す。
僕の武装は腰の後ろに護身用の短剣を三本。
右太腿にサバイバルナイフ。
背には弓矢を身に着けていた。
「それでなんです?」
「なんですじゃないよっ! 一体何時まで歩くのっ! もう十キロも歩いたよっ!」
「ふえ? 地図が完成するまでですよ。旅の途中で時間が無いですし」
セリスの質問に答える僕。
セリスは絶句する。
「完成って……後どれぐらい歩くの?」
「そうですね。今村を一回りしたのでもう一周ですか」
「また十キロ……」
僕の言葉にうんざりするセリス。
それでよく僕の護衛として来たなあ……。
そもそも僕には護衛なんぞ要らないんだが……。
ククル村で日常的に現れる魔物より弱いのしかこの周辺には居ないし。
「たった十キロぐらいでなに言ってるんですか」
僕の言葉に唖然とするセリス。
そんなに非常識な事言ったかな?
それはさておき。
見つけた。
【神の目】によって発見した建物。
場所は二キロ先。
村人十人を監禁してると思しき場所。
おそらく元は納屋か何かだろう。
そこに木の枝なんかを乗せて偽装している。
それだけではなく幻術で納屋は茂みに偽装してあった。
入口には鋭い目つきの男が周囲を警戒していた。
たぶん間違いない。
あそこだ。
召喚した鳥を一羽向かわせる。
ギイイ。
弓を引く音がしたので後ろを見るとセリスが僕に向けて弓を向けていた。
「動かないで」
「どうしたんです? 魔物はいないですよ」
「御免なさい。こうするしかないの」
「人質を取られてるんですね?」
僕の言葉に息を呑むセリス。
「なんでそれを知ってるの?」
「捕まっていた此処の住人を解放して送ったのは僕の商会ですよ。一人もこの村にいないなんておかしいでしょう?」
「そう……なら話は早いね。人質にさせて貰います。貴方が一番弱そうだから」
「それで僕を盾に他のメンバーも捕まえて、村の人質達と交換交渉ですか?」
その言葉を放った事を僕は後悔した。
セリスは罪悪感に押しつぶされそうな顔をしていたからだ。
「そこまで分かってるなら話が早いわ」
「言っとくけど例え僕達と人質を交換したとしても彼らは後に君らの口を封じるよ」
「そんなのやってみなければ分からないじゃないっ!」
僕は溜息を付く。
「一応言っとくけど、僕達はこの国の王族に呼ばれて来ているんだ」
「嘘」
「嘘じゃない、それに同行者の一人は元王族、それにもう二人も王族だ。下手すれば国交問題になるよ」
「し……信じない……」
「良いけど。下手したら戦争だよ」
「……どうしたらいいのよ」
弓矢を下げ泣き崩れるセリスの肩に手を乗せる。
「大丈夫、僕達にまかせて。奴等の隠れ家は探し当てたから」
「ご免なさい……」
僕の言葉に泣きだすセリス。
セリスの頭を撫でてあやす僕。
通信機のペンダントのスイッチを入れサキ姉さんに繋げる。
『サキ姉さん聞こえますか』
『腐……どうしたの?』
『奴等の隠れ家を見つけました』
『そう……なら襲撃をかけましょう。場所は?』
『場所は……』
そう言いつつ隠れ家の場所を伝えている時だ。
【鳥類召喚】で呼び寄せた鳥を向かわせた奴等の隠れ家から音と映像が届く。
甲高い悲鳴。
破られる服。
裸体を晒す八人の女性。
プチン。
堪忍袋が切れる音がした。
『僕が奇襲を仕掛けます』
『え?』
『ではこれで』
『ええええええっ!』
僕は通信用のペンダントのスイッチを切る。
「セリス。住人の二人ほど見せしめに殺されてない?」
「……うん。私のお母さんとお婆ちゃんがね」
「そっかあ~~」
「村の皆を守る為に自ら進んで犠牲になったの」
「そうかあ~~ふふふっ……僕の目の前で女の子に酷い事をしやがって」
「え?」
「しかも見せしめに女性を殺しただと……許せるかっ!」
「ええっ!」
僕の剣幕に驚くセリス。
僕は溜め込んでいた残りの経験値全てを魔道弓兵と竜兵士に注ぎ込み、二つのジョブを六レベルにする。
弓を構え毒を塗った矢を解き放つ。
魔道弓兵。
これは全ジョブ中最長の射程距離を誇る。
その能力は三レベル毎に射程距離が倍になるという破格の能力。
理論上では視界に入ればどんな物も射抜けるジョブだ。
故にレベルアップは上位ジョブの中でかなり遅い。
だがその能力を完全に発揮するには、ジョブ所有者が自ら魔術金属で矢を製作しなければならない。
しかも製造の際、薬物で特殊な処理をするため使い捨てを前提としている。
その矢は狙いたがわず見張りの男を射抜き殺すだろう。
矢が男を完全に射抜く前に素早く竜兵士にジョブを変更。
竜兵士。
全ジョブ中最速の速度と最高の跳躍力を誇る。
その能力は三レベル毎にジョブ所有者の跳躍力と移動速度を倍加させる。
理論上は成層圏まで僅かな時間で到達出切るぐらいだ。
また僅かな足場で自重を支える事が出切る。
これも三レベル毎にその規模が変わる。
例を言えば、それまで大木を足場にしていた者がレベルを上げると、大気中を漂う鳥の羽毛に乗り自重を支えるられる位の差だ。
理論上は大気中の埃すら足場に出切る。
元々は生身で大空に滞空するドラゴンを狩るために生まれたジョブだ。
それぐらい造作も無い。
但し多くの戦死者を出したジョブとして非難を浴びたが……。
それぐらい不遇の扱いを受けたジョブだ。
だけど目的地まで走り抜けるにはこれほど最適なものは無い。
「ええっ! こんな悪路をっ!」
僕はセリスの驚きの声を背にし木の枝や民家の屋根を足場に最短距離で走りぬける。
その間に先程放った矢が見張りの命を奪う。
何事かと中から男が一人外に出てくるがその頭部に全体重を乗せた蹴りを喰らわせた。
男の首が変な方向に曲がったが気にしない。
納屋の中を見回しながら【眠りの大気】を詠唱する。
「なんだ? 子供」
「いや小人族か?」
「くそっ! 良い所なのに」
「ひひひ」
「はは」
「へっ!」
「ふひひひひ~」
「ゲラゲラ」
「はあはあ」
一人が刃物をチラつかせながらせ脅迫していた。
他は下半身をむき出しにした男が残り八人。
……合計九人の男達が八人の女性に暴行を働いていた。
無法者という事は分かる。
今はそれ以上の事は分からない。
だけど今はそんな事考えるのは後の話だ。
目の前で手足を拘束された全裸の十代前半から二十台後半の女性が泣き叫んでいたからだ。
その中にあのダークエルフのお姉さんも居た。
「【眠りの大気】起動」
男女問わず巻き込み魔術を起動させる。
効果は覿面。
殆どが眠りこける。
「くそ魔術だとっ! この餓鬼っ!」
一人だけ刃物を持った男が此方に迫ってくる。
「ふっ!」
所有ジョブで一番室内戦に長けた暗殺者のジョブで撃退する。
サバイバルナイフの柄を男の後頭部に叩き込んだ。
この間僅か五分。
……ようやく終った。
◇
「それで~~どういう状況なんだがな」
「……え~~と」
三十分後に納屋に到着したクリスが閉口一番にそう僕に声を掛ける。
僕は脂汗を流しながら目を逸らした。
「zzz~」
「えへへ」
「ふふ」
「大好き」
「あらあら」
「う~ん」
「うふふ」
「すーすー」
僅かに残った服の切れ端で体を隠したお姉さん達に僕は抱きつかれてた。
僕の顔の彼方此方にはキスマークがある。
やめてっ!
いい香りがするの。
柔らかい感触がダイレクトにいいいいいいっ!
鼻血が出そうです。
ブハッ!
あっ……鼻血が出た。(ふきふき)
あの後気絶した男達を縛り上げ女の人達を解放した所、こんな状況になった。
まあ危ない所を助けられた、吊り橋効果と言うのもあるんだろう。
うん。(視線を逸らす)
それより既に純潔を奪われた人も居た。
監禁されて二日目だ。
仕方無い。
あのダークエルフのお姉さんだ。
泣いていたお姉さんを僕が慰めても駄目だった。
仕方ないので将来僕のお嫁さんの一人にならないかと誘いました。
その結果。
その場の全員から絶賛。
そしてこんな状況になりました。
なんでもこの村に住むダークエルフの習慣では、身を穢された者はお嫁に行けないそうです。
だから大抵そんな事になった場合、悲嘆にくれ自殺を選ぶそうです。
まあ、それを承知した状況でも、貰い手がいるならば話は別ですが……。
……まあいいが。
因みに嫁になる約束をしたのはダークエルフのお姉さんだけです。
「というわけです」
「話は分かったがな」
ギリギリッ。
「いだだだっだっ! なんで僕の頭を掴んでるんですかっ!」
「先程言ったばかりなのにもう嫁を増やしてるからだがな」
「良いじゃないですかああああああっ!」
「良い訳あるかっ! 自重しろおおおおおおおおおおっ!」
「いだっだだだだっだだだだだだだっ!」
こうして僕は折檻されました。(泣く)
まあ嫁も増えたし良いか。
いいけどさ。(涙目)
評価をお願いします。
出来ればポイントをお願いします。
次回も溜めてから一気に投稿します。