第三話 修行中。
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あれから二年経ち二歳になりました。
暇を見つけては【世界の英知】の知識を元に魔術の修業に打ち込みました。
その内容はと言うと……。
まずイメージ。
頭に現実の物を強固な想像で思い描く。
具体的な例を言えば、まずは石を再現する為に想像する。
石は……。
やや灰色でかなり硬い。
前日に雨が降ったので湿っぽい感じがする。
そして土と草の香りがする。
付着していた土は舐めてみるとやや苦い。
近くで石を叩きその音を確かめる。
すると鈍い音がする。
これを現実の石と変わらないレベルで想像する。
これを別のもので繰り返す。
その種類は何百種類。
これでようやく基本が出来ました。
これが魔術の【型】もしくは【殻】と呼ばれる物だ。
此れを魔力で形成した物が幻術。
次に此れを鋳型に性質を変えた魔力を注ぎ込む事で魔術は完成する。
例えば【炎の針】という攻撃魔術がある。
此れを起動させる為には赤熱化した金属の釘を高速で打ち出すというイメージで出来る。
此れが攻撃魔術だ。
此れはあくまで一例。
なので全ての魔術が同じとは言わない。
だが此処で壁にぶち当たった。
魔力の存在である。
知識としては知ってる。
だが出し方が分からないのだ。
今まで魔術を使わない世界に住んでたから仕方ない。
誰か目の前で見せてくれるか或いは教えてくれればいいのだが……。
だが魔術を覚えるのは急務である。
何故かというと……。
◇
「今日は山でオカズを採るぞっ!」
「「おー」」
「ふう……」
シスターは何故か妙なハイテンションで三人に号令をかけた。
だら~と全然やる気の無い声を上げるクリスとサキの二人。
どこか馬鹿にしたような感じで僕を抱えたサラが手を広げてため息を吐く。
あ……僕を入れたら四人か。
「獲物が取れなかったら夕飯抜き」
「「は?」」
「ふう?」
シスターの発言に三人が呆気にとられる。
「シスターなんで? 野菜や穀物はまだあるじゃない」
「働かざるもの食うべからずというじゃない。最近私ばかり働いてるような気がするのだから、たまにはね……」
「嘘ばっかり、わたし知ってるの。行商の護衛に来た人がシスターの好みの人」
「うあ~酷いがな。近寄る口実に肉とか毛皮を持っていくつもりかよ」
「え……知らないなあ。金髪のイケメンなんて、あ……」
「語るに落ちたの、この駄目駄目シスター」
三人のジト目に顔を逸らすシスター。
「ええいっ! 行くわよ」
「えー」
「酷いがな」
「横暴なの」
シスターの横暴に三人は不満を上げる。
「文句は聞かないっ! ツベコベ言わないっ!」
「「「ぶーぶーぶー」」」
「それ以上言ったら収穫祭のおやつ代なしっ!」
「「「……」」」
シスターの最後の言葉で三人は沈黙した。
かなり横暴なシスターである。
◇
ククル村から帰らずの森を西へ二キロの場所。
遠方は密集した木々が太陽の光を遮り薄暗い。
昼間なのに夜のように暗く視界が利かない。
近くの木々は樹齢百年は超えそうなのが多い。
木の太さが三メートル以上の物が沢山ある。
足元には降り積もった木の葉が腐葉土になりサラの足を捕る。
「なかなか獲物が居ないの」
僕は汗一つ搔いてないが彼女の甘い体臭を休むこと無く嗅いでいる。
別に荒い息をして幼女の匂いを堪能してませんよ?
僕が居る場所はそうなるんですから仕方ないです。
「サ~ラ」
背負われた僕は怪しい発音でサラの名前を呼ぶ。
なんで僕も居るのといった質問の意味を込めて。
「しかたないの、働かざるもの食うべからずなの」
キリッとした笑顔で答える。
二歳児にそんな事言ってどうする?
というか二歳児に何を期待してる?
獲物てのは狼だとかオークだとか猪とかだろう?
なに考えてるんですか?
死ぬよ僕
死んでしまうよ僕。
守れるのサラに?
答えてよ。
「ぼ~く、しにたくない」
「大丈夫なの。死にかければ何かに目覚めるのっ! たぶん……」
たぶんかよっ!
思えば此れまで何度この人達の所為で死に掛けたかっ!
サラが魚が食べたいと言って滝つぼに叩き込まれ餌にされたり。
サキが蜂蜜を舐めたいと言われて蜜蜂の巣に突っ込まれたり。
シスターが木の実が食べたいから捕って来いと投げられたり。
しかもほぼ毎日だよっ!
くそっ!
お前達、僕の嫁にするんだから、もう少しお淑やかにしろっ!
あれ?
なんか無理して全員を僕の嫁にする理由がないような……。
目から汗が…。(泣)
児童虐待だろこれ…。
いいもんっ!
全員美人だし元は取れるだろう。
それに本当に危ない時はクリス兄さんが助けてくれたし。
クリス兄さんの優しさが身に染みる。
くそ早く魔術を使えるように成らないと命が幾つあっても足りないよ。
「サラが守って上げるから大丈夫なの」
その前に連れて来ないでください。
お願いです。
土下座して頼みますから。
今出来ないけど……。
それはそうと……。
「そ~れなーに」
あえて気にしないようにしてた。
だが流石に無視するのもと思いサラの右手の持ってる物を指差す。
持ってるのは普通の木の枝。
なんで普通の木の枝なのか突っ込みたい。
「武器なの」
「きのえだなのに?」
「殴る打つ突き刺す事が出来る万能武器なの」
「やりのほうがい~よ」
「やり? ああ槍ですの? 木の枝がいいですの。使えなくなったら燃料に出来ますし無駄が無い」
いや最初の台詞の初め二つは同じだよね。
刺すってなにっ!
どこに刺すんだっ!
次に燃やすのかいっ!
僕が脳内で突っ込みを入れてるとサラは沈黙する。
いや何かの気配を感じたのだ。
ガサガサ。
「ブブフガフウ」
「メスダ、ブフフフ」
「オスモイルゾ」
オークだ。
豚の顔と人の肉体を持つ魔物。
オークは亜人もしくは人族の敵とされてる魔物だ。
その身は異臭のする粗末な獣の毛皮を纏いる。
手には木製の棒を尖らせただけの物や錆びた剣や槍を持ち武装していた。
オークは新米冒険者でも倒せる程弱い魔物だ。
だがその繁殖力は旺盛だ。
冒険者ギルドでも無期限に討伐対象にしている程だ。
それが三匹。
子供が二人で倒せる数ではない。
「サ~ラぼくが、すこしでも時間をかせぐから逃げて」
オークの繁殖相手は同族ではない。
人間もしくは亜人だ。
捕まれば想像絶する地獄がサラを襲う。
僕は食糧にされるが直ぐ殺されるからましだろう。
だからこの選択は間違いではない。
生まれて初めて見る人型の魔物に下半身を濡らしながらサラに提案した。
「…」
沈黙するサラ。
「サ~ラどうしたの」
「いえ、私達の事を恨んでるのと思ったので……」
「なんで? ぼくサラたちの事すきだよ」
「そうですか……」
「だからいいよ」
「その必要は無いですの」
クス。
可愛らしく笑うサラ。
「え?」
「大きくなったら嫁の一人になって上げます。だから将来強くなってサラの事守ってくださいの」
「サ~ラ?」
「ですが、今はサラが守ってあげますの。【付与魔術】起動。我が武器に宿れ」
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
サラの言葉が終ると共に三匹のオークが爆発した。
正確に言えばサラが手に持った光り輝く木の枝で撲殺したのだ。
サラの右手が動いたかと思ったら次の瞬間だった。
サラ……何者なの?
「ピギッ!」
背後からオークの弓兵が現れ矢がサラの後頭部に放たれる。
不味いっ!
下手すれば致命傷だっ!
僕は目を瞑り咄嗟にその身を盾にする。
僕に死が訪れるその瞬間、意識が背中に極限にまで集中された。
ゴオウンッ! ギィンッ!
何かが僕の体から放たれ矢を弾く。
その時世界が一変した。
今まで見えなかった物が見え出したのだ。
普段見える景色とは別に僕やサラから漏れてる黒く蒸気のような物。
サラは兎も角、僕の方の蒸気のような物は一部が変化し楯のようになり矢を弾いていた。
これは何っ?
「ようやく目覚めたの……それが魔力なの」
「まりょく?」
「そう魔術の基本になる物なの、生命の危機に晒されないと発現しないから皆、貴方の魔力を引き出す為に苦労したの」
それで僕はあんな目に有ったのか……。
なんか納得いかないんだが気のせいか?
「後で皆にお礼を言いなさい。今はそれより……」
サラは後ろを振り向く。
そして僕達に矢を放ったオークを睨み付ける。
「螺子くれし釘よ。火と共に放たれよ【炎の釘】起動」
ゴオンッ!
「グアアアアアッ!」
サラの詠唱と共に起動される【炎の釘】。
それは投擲用槍サイズの炎の槍となりオークを焼き尽くす。
普通は十五センチ位の炎の釘が数本なのだが……。
サラてば規格外。
こうして僕達はノルマを果たしたのだ。
……後日。
他の皆に魔力が目覚めた事を報告しお礼を言ってた時の事だが……。
「そうか…ようやく魔力を使えるようになったがな……」
「うん。クリスもありがとう」
「良かったがな、これで駄目ならドラゴンの所に特攻させようて話になってたから」
「えっ……じょうだんでしょうクリス~?」
「……」
「えっ?」
思いっきり目を逸らされました。
感謝の気持ちが無くなったんだが……。
というか振り返って見るとこれって児童虐待では……。
……気にしないようにしょう……。
なお後日イケメンの金髪の護衛の所に差し入れに行ったシスターだが……。
男が同性愛者だという事を知り涙で枕を濡らす事になるのは余談である。
お読みくださり有難うございました。