第四十六話 疑問
二話目です
「そうだね。切っ掛けは法王国がククル村に侵攻した時かな」
「は?」
突然の僕の言葉に面食らう豚王子。
「あの時ククル村が法王国に蹂躙されそうになった事件、でも僕は違和感があったんだ」
「違和感だと?」
首を傾げ混乱する豚王子。
「法王国の精鋭が帰らずの森を大雑把な方角だけを目指してくぐり抜け、別働隊として到達するのはかなり無理があるんですよ」
「鍛えられた精鋭なら地図だけでも目的地にまで到達するのは当然だろう? 何処にが無理があるんだ?」
僕が何を言ってるのか分からないという表情を浮かべる豚王子。
「気にしないで下さい。貴方に言ってる訳ではないんです」
「では誰に向かって言ってるのだ!」
「さてね~~遠く安全な所にいるんだろうと言っておきます」
僕の言葉にますます首を傾げる豚王子。
僕は豚王子を無視して自分の考えを話す。
最初にククル村を奇襲しようとした法王国だが。
あの時部隊は二つに分けれていた。
ククル村の正面を襲った囮として本隊に見せかけた大部隊。
そして帰らずの森方面から奇襲を仕掛ける真の主力である精鋭部隊。
ククル村の正面を襲った大部隊の説明は省く。
今回は関係ないから。
問題は帰らずの森の方から奇襲するはずだった僕と遭遇した精鋭部隊。
当初僕は彼等は【ナビ】で村に有る【マーカー】を目印に、帰らずの森を横断していると思っていた。
だけどその方法は無理だ。
何しろドラゴンを圧倒できる強者。
最低でも子爵クラスの実力者が精鋭部隊に居ないと話にならない。
そして彼等は正確な魔物の生息地を知らないから避けて移動が出来ないはず。
その事を後で僕は村の人に聞いた。
孤児院のメンバーは遊び感覚で森に入っていたが気にしないでおく。
因みに大多数の村人達が孤児院のメンバーが、遊び感覚で森に入ってるのを見ると今でも頭を抱える。
まあ重装備で森に入るのが普通なのに皆、軽装備所か普段着だからね。
他所から来た強者程、自分の中の常識が崩れ砕けていくんですよね。
分かります。その気持。
まあ、その強者の冒険者を護衛で雇った行商人達が、狂人を見るような目で孤児院メンバーを見る目よりはマシだけど。
『ククル村の女子供より俺達は弱いのか……』
『それ以上言うな……』
酒場で自棄酒を飲む冒険者から、哀愁漂う声が聞こえた事も有ります。
……最近僕も経験値を稼ぐ為に森に入ってる事は黙ってよう。
熟練者の冒険者が軒並み現役引退するだろうし。
幼児に負けたと。
話しがまた逸れた。
法王国が本格的に襲撃して来る少し前の事。
僕がクリスに一服盛られたのは、まだ記憶に新しい。
そんでもって帰らずの森に置いてきぼりにされたのも。
僕があそこで生き残れたのは、基本的には殆ど運によるものだ。
その運を最大限に活用した暗殺者のジョブが無かったらやばかった。
この2つが重ならないと僕はあそこで死んでいました。
最高峰の隠密系スキルを持ってるからね。暗殺者は。
「そんな訳で、どうやって奴らが帰らずの森を踏破したかってのを吐かせたという訳です」
「それで?」
「地図ですよ」
「……」
「精度はかなりいい加減でしたが、大雑把な強力な魔物を避けるルートを書き記したルート図でした」
無論普通の地図ではなかった。
紙や羊皮紙に書いた物でもなかった。
刺青。
それも特定の条件で浮かび上がる代物だ。
手が混んでいるが、捕まった時の事を考えてだろう。
表向きは【ナビ】で村まで侵攻してると思わせて。
実際は彼等は地図を頼りに森を抜けていたのだ。
最初は僕も【ナビ】で村の位置を特定していたと思っていました。
何しろそれを裏付ける証拠もあったし。
だけど違和感はあった。
魔物の存在である。
強力な魔物に一度も遭遇せずに一直線に村にたどり着けるのか?
他にもやばい魔物が山程居るのに?
どうやって無傷であそこまで?
そこに疑問を持ったのには理由がある。
法王国の精鋭は、ククル村の住人に較べて余りにも弱かったからだ。
では何故か?
最初はマリさんが高レベルの弓兵のジョブの持ち主だったから彼等は無傷だった。
そう考えました。
事実彼女に聞いた所、実力は準男爵クラスだとか。
これなら通り抜けるだけなら出切るかもしれないと思いました。
しかしそれでも腑に落ちなかった。
『村に着くまでまだ距離があるのにマリさんを斬った』事。
あれが変だった。
帰らずの森はある程度慣れてる僕でさえ、かなり迷い結局サバイバルになった。
高レベルの弓兵のジョブの持ち主をあそこで始末して、どうやって彼等はククル村まで辿り着くつもりだったのかと?
答え合わせは簡単だった。
奴らは右手の甲に簡単な地図の刺青を施していたのだ。
気が付いたのはマリさんと雑談してる時の事だ。
村に滞在中、マリさんと一緒だった法王国の精鋭の話をしてる時に気が付きました。
マリさん曰く『法王国の奴らは異常なまでに冷え性だった』。
とマリさんが僕に経緯を説明している時に おや? と思いました。
帰らずの森を抜ける道中での事だ。
何故か奴らは布で巻いた焼けた石を頻繁に右手の甲に当てていたらしい。
その後も何故か弓兵のジョブの持ち主でも無いくせに道を幾度と無く変更していたとか。
高レベルのマリさんの忠告を無視して。
道を変更したが結果魔物には遭遇しなかった。
マリさんはそれを不信に思ってはいたらしい。
だが本当に不思議と魔物と遭遇しなかった。
だから彼等の何らかの感知系スキルによる効果と思っていたらしい。
僕も聞いた当初はそう思っていた。
だがふと気が付いたのだ。
僕は。
なんで今はそれほど寒くないのに焼けた石に布を巻いた物を持っていたのか?
それが気になり僕は、鉱山奴隷として売り出す予定だった法王国の元精鋭にの所に足を運んだ。
そして嫌がる右手の甲を暖めたら地図が浮き出てきたという事だ。
地図は何処からか提供された物ではないのか?
法王国では刺青の習慣は無い。
それで分かった。
何故なら入れ墨の事実が漏れれば大変な事になるからだ。
教祖の教えでは人間族の体は神から授かったもの。
そんな教えが浸透しているから法王国の住民は刺青を彫る習慣は無い。
まあ全員がその戒律を守ってる訳ではないが極少数。
それをあえてやるのは秘密が漏れるのがヤバイからだ。
だから分かった。
以前僕が法王国に潜入した時、その習慣の事は聞いて知ってました。
相手は法王国のレジスタンスでしたが教えて貰いました。
そのレジスタンスの構成員は二種類。
長い間拉致され奴隷として過ごしてきた人達。
法王国の出身でありながら国の横暴さに嫌気が差した人達。
彼らに教えて貰いました。
拷問を含む尋問を繰り返した所、その法王国の精鋭は白状しました。
他国から提供された地図だという事を。
その他国と言うのが実はアガスという訳だった。
最初は誤魔化してたが懇切丁寧な尋問で快く話してもらいました。
とはいえ誰が裏切り者かまでは分からなかった。
第三者を介して地図が渡されてたからだ。
提供先も分からなかったらしい。
だが法王国にも諜報機関が有るので提供した国まで分かったらしい。
それ以上はどうしても分からなかったらしいが……。
その件を他の人に明かすのは時期尚早と思った僕はこの事を隠蔽した。
下手に明かせば反法王国同盟にヒビが入ると思ったからです。
無論元精鋭の口は封じておきました。
毒殺して。
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