第六十六話 新しい調理法
此れで作っておいた話は終わりです。
また溜めます
二十分後。
ククル商会の建物の裏。
「おやおや~~会長~どうしました?」
そこで作業をしてる料理人は僕の姿を見るなりそう聞いてきた。
料理人は四十代後半で見た目は達磨のような外見の男だ。
彼は汗を流しながら此方の方を見ながら作業をしていた。
彼は食堂で出す料理を任されてる料理人の一人だ。
「グラタンが出来上がったぞっ! 」
「油が無い何処だあああああっ!」
「味見をお願いします料理長っ!」
「馬鹿やろっ! 皿が出てないぞっ!」
他にも料理人は居るが全員が狂ったような速度で働いていた。
シュ―。
シュウ―。
もうもうと、立ち昇る蒸気。
独特の臭いからその蒸気が温泉から立ち昇った物だと分かる。
まあ~~それ以前に目の前で温泉からの蒸気が立ち昇ってるから臭いを嗅ぐまでも無いんだが……。
其処は温泉の源泉近くに建てた小屋だ。
鉄パイプが源泉から小屋まで引かれているのが分かる。
鉄パイプは温泉の蒸気を逃さず小屋まで導く為の工夫だ。
腰の辺りの高さに合わせて設置された鉄パイプに開けた穴から蒸気が出ている。
腰の当たりから上方に蒸気の出ている噴出孔は網で覆われてる。
その網は食材をその上に乗せて調理するために必要なのだ。
「皆を見学に連れてきました。ああ……それと料理美味しかったですよ」
「そうですかい!」
料理人の男は人の良い笑みを浮べ喜ぶ。
そのまま食材が落ちない様に被された網の上にベーコンや野菜を並べる料理人。
「新しい鍋はどうです?」
「実に具合が良いですな。今まで以上に調理の幅が広がりますから」
「それは良かった」
「ちと掃除だけが面倒ですが」
「そこは我慢して」
「ははっ! 燃料代を気にせず調理に専念出来ますから、この程度なら気にもしませんよ!」
その隣には大きな風呂桶サイズの大鍋が設置されている。
この大鍋は中空が存在する二重構造で作ってある。
蒸気を二重構造の外側と内側の隙間に通す事で、中が加熱され煮炊可能という専用鍋だ。
但し大鍋は風呂桶サイズなので人力では動かせない。
なので右手前のハンドルで鍋を傾け、中身を取り出せるようにしている。
この鍋を傾ける工夫は、前世の病院施設で働いてた時に使っていた物をそのまま再現したものだ。
まあ学校の給食設備でも採用してる大鍋だね。
つまり此処は温泉の蒸気のみを利用した燃料要らずの調理場だ。
まあ~~煙に付着してくる硫黄の掃除をしなければいけないけどね……。
これ等の施設は豚王子絡みで操られていた、キキとキルから襲撃を受けた翌日に作りました。
ククル商会開発部には多大な苦労をを掛けさせましたよ。
本当に。
元々此れはこの地での特産品を考えての行動だ。
因みにこの施設の存在はシャルには伏せて内緒にしていました。
後で吃驚させたかったからだ。
「どうです。使い心地は」
「ちょいと扱いに慣れが必要ですが、一度に大量の調理が可能なんで助かってます」
「評判は?」
「温泉の香りが付いて旨いと評判です」
熱い蒸気に晒され汗を流しつつ答えててくれる料理人。
「どうですか? これがこの地の特産品と燃料問題の両方の解決を考えた物です」
僕が振り返ると皆はポカンとしていた。
あれ?
施設がショボかったかな。
「これを兵舎や格宿泊施設にも注文に応じて作る予定です」
「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」
まだ無反応か。
駄目だこれは失敗したかな~~。
「流石に一家に一台とはいかないので、ここと同じ設備を一定間隔で作り、合同調理場として利用して貰います」
「会長ここと同じ物を他の場所にも作るんですか~~」
痩せた料理人の一人が立ち止まり僕に質問する。
「ああ~~恐らく注文が殺到するだろうね~~」
「ああ――……だったら此処だけの名物になりませんね~~」
少し残念そうに言う。
「悪いね。売り上げが落ちるかもしれないよね」
「とんでもない。毎日ここでは地獄のような量の注文が殺到するんでむしろ大助かりです」
手を自分の前で振る痩せた料理人。
「それは商売人としては致命的な考えだと思うが」
「いや~~後数日で過労死が出るかもと皆で噂してましたから」
「あ~~本当?」
「本当ですよ」
バタン。
一人の料理人が今倒れた。
「おいっ! 誰か倒れたぞっ!」
「医務室に運べええええええっ!」
倒れた料理人を運んでいく仲間。
「まあ~~この通りですわ」
「あ~~それはすまんね。なるべく早く改善できるようにするから」
僕は眼の前で起きたその光景に冷汗を流す。
「期待してます」
などと僕達はワイワイと話していた。
さて。
「とまあ、特産品は此れで充分と思います。燃料の問題解决もね」
僕はみんなの方に振り返える。
「……」
シスターは沈黙してる。
「とはいえ、流石に露天の屋台まではフォロー出来ませんが」
「……」
「なのでそこは目を瞑って、今まで通りで良しとしましょう。どうですか?」
「……」
サラも沈黙したままだった。
あれ?
やっぱり失敗したかな?
と思っていました。
ザザッ。
その時キキとキルが一歩前に出る。
思わず僕は後ろに下がる。
「「凄いいいいいいいいっ!」」
「ふえ?」
僕は戸惑いの声を上げる。
二人はダッシュで僕にかけ寄る。
思わず僕はギョッ! となり驚く。
「凄いのっ! 凄いの! 流石キキ達の将来の旦那様っ!」
「なのなのっ!」
ギュウウウウウウウウウウウっ!
そんな音がしそうな程二人に抱きしめられました。
僕の顔の両頬に柔らかい物が押し付けられています。
「おおう~~」
蕾のように膨らみ始めたその感触に僕は戸惑う。
「腐……あの独特の香りの正体はこれかあ~~」
腕を組みしきりに感心するサキ姉さん。
「う~~んがな。まさかこんな調理方法があるなんて」
顎に指を当て感心するクリス。
「シスター的には美味しかったからどうでも良いけど」
「駄目駄目シスター。この地に来た意味を考えろなの。この年増」
シスターのボケた発言にサラは毒舌でツッコむ。
「サラちゃん酷いっ! 意地悪ううううううッ!」
あっ……シスターが涙を流しながら走っていく。
夕飯までには帰ってきてね。
「ああ~~でも大量に施設を作ればここの儲けが少なくなるでっしゃろ?」
よ~~よ~~よ~~。
シャル……。
涙を流しながら蹲らないで。
仕方ないでしょう。
このままじゃ下手すれば料理人が過労死するんだから。
「まあいいでっしゃろう。代わりに施設の建設費と維持費で儲ければ」
あっ……。
復活した。
しかも涙が引っ込んでる。
というか……切り替えが早いっ!
でも僕はそんなシャルも好きさ……。
「「「「「わーいっ!」」」」」
アカ、クレナイ、ルージュ、シンク、エンはあまり意味が分かってないみたいだ。
適当に手を叩いて盛り上げてる。
いいけどね。
「これは凄いね。マリ姉さん」
感心した声を上げるセリス。
「あらあらそうね」
頬に手を当て感心するマリさん。
僕は皆の反応を見て、この新しい特産物というか事業が上手く行く事を悟った。
後にこの調理法が広まり有名になるが此処では割愛する。
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