Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
Haphazard Fantasy ~エイルの不思議な冒険~ - 狂気
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Haphazard Fantasy ~エイルの不思議な冒険~  作者: 加藤大樹
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/192

狂気

 耐え難い現実を目の当たりにして、エイル・ノルデンは膝から崩れ落ちた。耳の奥が、きーんと鳴っている。目を回し、口から泡を吹きながら、少年は気絶と覚醒を繰り返している。


 夢想では、母親のティルザが優しい笑顔で自分を抱きしめている。

 現実では、焼け焦げた死体が吊るされている。


 夢想では、妹のリーセのうるさい泣き声に耳を塞ぎながら、彼女の成長を待ち望む自分がいる。

 現実では、焼け焦げた死体が転がっている。


「こ――」


 覚醒が気絶に勝ったエイルは思考を再開する。そこに、彼の本質である優しさは欠片も残っていなかった。


「殺してやる」


 その言葉を噛みしめるように、つぶやいた。エイルの片目からは憎悪の炎が噴き出して、めらめらと燃え盛っている。


「僕たちに酷いことをしたやつらは、全員、ぶっ殺してやる」


 エイルにさらなる異変が起こった。


 少年の小さな心臓が不規則に脈動すると、どぶの底に溜まっている汚泥のような、どす黒い血液を身体に送り出した。

 邪悪な血液が、エイルの血管を黒く汚す。

 少年の胸から、顔に手足に全身に、蜘蛛の巣のように、穢れた血が広がっていく。

 それは、皮膚の下から不気味に浮かび上がっていた。


「僕が、この手で、酷いことをしたやつらを、八つ裂きにしてやるんだ」


 エイルは肩を大きく震わせて、けたけたと笑い始めた。彼の妄想の中では、人形と化した賊が「ぎゃー!」と悲鳴をあげて、手をもがれ、足をもがれ、少年に命乞いをしていた。


「く、くく……うふふ……あはは……」


 ふたり分の死体を前にして、エイルの心は復讐心に染まってしまった。ああ、かわいそうなエイル! 少年は十一歳にして、殺人衝動に呑み込まれてしまったのである。


 笑い転げている少年は、急にぴたりと動きを止めると、表情を無くして真顔になった。

 少年は唇を震わせて、何事かをつぶやいた。

 すると、今度は大声で泣き始めた。手遅れの焼死体を涙で消火でもしようというのか、大粒の涙をいくつも落として、しゃくりあげながら、わんわんと泣いた。


「母さん! リーセ!」

 エイルはふたりを呼んだ。だが、応える者はいない。


 程なくして、またぴたりと動きを止めて表情を無くすと、賊を処刑する妄想に浸り、笑い始める。


 エイル・ノルデンは壊れた玩具のように、泣いて笑ってまた泣いてを、延々と繰り返していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ