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地獄の裁判官 - 四件 4
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四件 4

 鏡子の前には薄桃色の紅茶が置かれている。刀葉林が「西洋から仕入れた桃のお茶」と言っていたので多分ピーチティーなんだろう。

 鏡子は一口紅茶に口をつける。ふわっといい香りが鼻をくすぐる。


 鏡子は紅茶を飲んでからポツリと語った。


「閻魔大王は私のことどう思っているんでしょう」

「ん……? ん!?」


 鏡子の発言に刀葉林はキラキラと瞳を輝かせる。鏡子は刀葉林の反応をさして気にすることなく、紅茶に目をやる。


「だって。よく分からなくて。私のことを愛おしいとか……。司命と司録にラブラブとか愛を育んでいるとか言われても、当然みたいな反応するし」

「そりゃあ大事な妻だと思っているんじゃないかしら」

「でもっ。書類上の関係であって……。だから」


 だから。私のことをそこまで気にかける必要なんてないのに――。


 そんな鏡子の様子を見て、刀葉林は小さくため息を吐いた。


「これは先輩からの助言だと思って聞いてほしいんだけどね。閻魔大王がどう思っているかじゃなくて、鏡子さん自身は閻魔大王のことどう思っているかが大事じゃない?」

「え……」


 閻魔大王のことをどう思っているか?


 鏡子は頭が真っ白になる。そんなこと考えたこともなかったからだ。


「鏡子さんは閻魔大王をどう思っているの。そしてどうなっていきたいの」


 そう問いかけた刀葉林はいつもと違って真剣な表情をしている。


「それはっ……」


 鏡子は言葉を詰まらせた。


「私……」


 閻魔大王の顔を思い出す。と、何故か頬が熱くなったような気がした。


「私は」


 ゴクリと唾を飲みこむ。


「私は最初、この場所が嫌だったし来たくないと思っていました。でも今は――。来て良かったとさえ、思っているんです。司命や司録にもなんだかんだで良くしてもらって。こうやって刀葉林さんとも仲良くなって。閻魔大王にも――。だから私」

「……」

「私、これからもここにいたいです。皆の側に、閻魔大王の側に――」


 そう伝えると刀葉林はにっかりと笑う。


「じゃ、それでいいじゃない」

「でも。だからこそ閻魔大王がどう思っているのか知りたい……」

「うーん。そんなに言うなら閻魔大王が鏡子さんのことどう思っているか教えてあげてもいいけど。まぁ、閻魔大王本人じゃないからなんとなーくになっちゃうけれどね」

「!」


 刀葉林の言葉に鏡子は少し身を乗り出す。


「大事だと思っているのは確かだと思うわよ。そもそも閻魔大王は何とも思っていない人と結婚なんてしないと思うし」

「え?」

「きっと鏡子さんが生きている間から気にしていたのよ」

「???」


 鏡子は記憶を辿るが、思い当たる節が特にない。


「刀葉林さんの思い違いってことは……」

「ちょっとした違いはあるかもしれないけれど。だいたい当たっていると思うわ。アタシだって伊達に閻魔大王と長くいるわけじゃないのよ」

「……」


 閻魔大王と生きている間に何かあったのだろうか。


 鏡子には思い当たる節はない。けれど――。

 鏡子には一つ違和感があった。


 天野 正の裁判の時、「自身の心に惑わされてはいけない」と言われたあの言葉。どこかで聞いたような気がする――。

 一体どこで。


 鏡子がずっと黙っていたからか、刀葉林が「大丈夫?」と声をかけてくる。


「あ、はい。すみません。ちょっと気にかかることがあって」」

「そう?」


 刀葉林は優雅に紅茶のコップをつまみ、ピーチティーを飲む。そして少し眉間に皺を寄せて「ずっと思っていたんだけどそろそろ止めない?」と唐突に質問を持ち掛けた。


「止める、ですか?」

「そう、その話し方。アタシ達、女の子同士なんだし。もうちょっと砕けた感じで話してもいいと思うのよ」


 刀葉林は鏡子の手をグッと握る。


「アタシ達、友達になれると思うの。だ、か、ら! 固い敬語は無し。アタシのことも刀葉林って呼び捨てにしてちょうだい」

「え、でも……」

「その代わり、アタシも『鏡子』って呼ばせてもらうから。ね」


 刀葉林が愛らしくウインクをしてみせる。


 確かに地獄で女性に会うのって始めてだし。刀葉林さんともっと仲良くなれたら嬉しい。


 鏡子も刀葉林の手をグッと握り返した。


「えっと、それじゃあよろしくおねがいします……。じゃなくて、よろしくね。刀葉林」

「こちらこそ。鏡子」

ブックマーク、いいね、感想……。ありがとうございます!皆様の応援が励みになります。


薄々気付いているかと思うのですが、裁判と前日談?後日談?みたいなのが実はリンクしています。

今回の裁判は友人関係のトラブルでもあったので、刀葉林と友達同士にさせようとは思っていました。

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