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Vtuberの妹の中の人ですが - 34話
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Vtuberの妹の中の人ですが  作者: 針坂時計


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34話

 誕生日の人とかには申し訳ないんだけど、9月という月はとてつもなくどうでもいい月だ。ただでさえダルい長期休み明けで、実力テストが終わっちゃうとなにもイベントもないダルい月。

 みんな気の抜けた様子を隠そうともしないし、先生たちも「気を引き締めろよー」とは言うけど、そんなに厳しく追求する気もないらしい。10月になれば文化祭だの中間考査だので忙しくなるから、夏休み後のちょっとした慣らし期間なのかもしれない。

 とはいえ、私は地頭がいいわけでは決してないので日々の積み重ねは欠かせないのだけど。


 

 で、実力テストお疲れ様打ち上げってことで、ギャル山さんと詩子と一緒に駅前のゲーセンに来た。なんでゲーセンなのかといえばゲーマー二人がいるからである。詩子はゲームにはあんまり興味がないらしいけど、私が好きなものを好きになりたいと言って付いてきた。健気なやつめ。

 と言っても、私もゲーセンは普段あんまり来ないんだけどね。近くにいる時に隙間時間があったら1ゲームだけとかやって帰る感じだ。


 ギャル山さんがスト6をやりたいと言うので数戦付き合った。格ゲーは私もやるけど、元々好きだったらしいギャル山さんに一日の長がある。腕前は互角か私のチョイ負けぐらい。これで大会とか出ないのは勿体ないと思うんだけど、本人は成績落とせないから趣味以上のものにする気はないらしい。


 

 5戦目、なんとか辛勝した。私はコラボキャラの帽子にパワーの人、ギャル山さんはタイガーだった。タイガーは全体的にリーチが長くて制圧力が凄いから気が抜けないんだよなあ。下手に飛ぶとすぐ撃ち落とされるし。私の持ちキャラも似たような性能だから読み合いの緊張感が凄い。

 まあでも、やっぱり友だちとやるゲームは楽しいね。


「くっそー、最後に不覚をとったか」


「ほほほ、またいつでも挑んでくるがよい」


「いや、うちが3勝で勝ち越しだからね?」


「あーあー聞こえなーい」


「二人とも凄いね……わたし、何やってるのかさっぱり」


 おっと、やっぱり詩子が置き去りになってしまったか。格ゲーはどうしてもプレイに集中しちゃうからなあ。


「詩子もやってみる?」


「触ったこともないんだけど…」


「あーちゃんが手取り足取り教えてくれるって」


「あ、それならやろうかな」


 いや、なんでだよ。


『Here comes a new challenger !』


 おん?


「誰か入ってきたね」


「あ、じゃあ終わったらやろうか」


「はーい、頑張って」



 相手は……サイクロンか。投げ+パワータイプだ。投げキャラだけどリーチも対空もあるし、見た目通りの鈍重脳筋タイプではなかったりする(足は遅いけど)。こういうパワーでテクニックを潰してくるタイプは実は割と苦手なんだよなあ。

 とにかくコマ投げの間合いに入れないように、キャンセル出来てリーチの長い通常を起点に攻めよう。パリィとリバーサルは要警戒。焦って大きく動いたり守りに回るとドライブでゴリ押しされて投げられるからね、適度に暴れつつ丁寧に立ち回ろう。飛び道具もあんまり使わない。


 

 一本先取。かなり強引に詰めてくる相手だな、2回投げられてしまった。でもドライブの使い方が慣れてない感じする。6はあんまりやってない動きだ。

 まぁ、まだ1本目。相手もこっちの立ち回りはわかっただろうからここからが本番……と、思ったんだけど。

 ……1本目とほぼ同じ展開で勝ってしまった。やっぱりドライブが慣れてないのかな、そのタイミングで出されてもライジングで潰せるって何度かやったはずだけど工夫しないし。というか間合いの取り方があんまり上手くない感じか。インパクトもパリィもあんまり使ってこなかったし、システムに慣れてないのかも。


「さすが、やるじゃん」


「んーまあ、あんまり慣れてない動きだったね」


「んだねー、うちなら2ラウンド目のぶっぱバーン確反で投げてた」


「う、言うな」


 つい距離をミスってぶっぱしてしまったんだ。暴れて潰したけど、確反投げが何故かこなくて助かった。優勢でもワンミスで流れごとひっくり返されるのが格ゲーってものだ。正直ちょっと冷や汗ものだった。

  

 さて、じゃあ適当に終わらせて詩子と一緒に……と思ったんだけど


『Here comes a new challenger !』


 およ、またか。しかもまたサイクロン。同じ人かな?


「モテるねえ」


「そうだねえ……ちゃっちゃとやっちゃうね」


 

 ……うん、同じ相手だわ。攻め方がさっきと同じ。いや、若干工夫してきたけどまだまだ。サイクロンで飛んじゃダメだよ。こっちは対空豊富なんだし。


「6あんまりやってない人っぽいね」


「そういうのって見るだけでわかるものなの?」


「まー動き見てればなんとなくね。あーちゃんは一時期うちと毎晩ヤってたから動き全然違うっしょ」


「毎晩!?」


「あれマジで疲れたよ。ギャル山さん納得できる戦い方出来るまでやめないんだもん」


「いいだろー。ゲーマー同士気持ちはわかるっしょ?」


「それはまぁ」


「毎晩……」


 喋りながらでも勝てるぐらいには余裕がある。格ゲーは経験値が大事だからね、お相手さんも練習だと思っていただきたい。

 あっさり2Rとって勝利。こっちが潰してるとはいえ詰め方はいくらでもあるんだし、まずは持ちキャラの動き覚えるとこからだね。

 さて、じゃあ今度こそ適当に終わらせて……


『Here comes a new challenger !』


 ……また? キャラも同じサイクロンだし、また同じ人だろうか。


「……モテるねえ」


「せやねぇ」


 負けず嫌いな人なのかな。挑んでくる限りは付き合うけども。面倒だからわざと負ける、なんて選択肢はゲーマーにはないのだ。



 ★


『Here comes a new challenger !』


「ま、また……」


「これ何戦目?」


「8回目かな? ずっと同じ人っぽいね……」


 さっきから延々同じ人が乱入してくる。

 いやまあ幾らやろうと自由ではあるんだけど、ここまで粘着されるとちょっと辟易するな。相手の動きもあんまり進歩ないし。せめてもうちょっと工夫してくれればこっちも楽しめるんだけど、それもないし。特定のパターンに固執しすぎなんだよなあ。勝てないなら勝てないなりに色々試せばいいのに。

 あーダメダメ、コマ投げ狙ってんのバレバレの詰め方。そんな見え透いた動きには引っかからんよ。飛べば投げられないんだから。はい中P弱Kチャージ下弱Kライジングっと。スクリューの吸い込み把握してないな、今ワンチャンあったはずだぞ。スカすつもりだったけど。


 はい勝ち。格ゲーの基礎は出来てるけど独自システムの理解がまだまだだね。


『Here comes a new challenger !』


「折れないねえ……」


「凄い負けず嫌いな人だね……」


 あーーーーもう、いい加減面倒くさい。慣れてない人ぽいから何かしら実になるゲームになれば、と思ってたけどもういいや。諦めてもらおう。


 開幕からガン攻め。そんな苦し紛れの生温いドライブが通用するかっ、ドライブってのはなあ、こう使うんだよ! その当てずっぽうのブッパ技はパニカン! 中PキャンODウェイブからのバスター2連発!

 はい、パーフェクト勝利。実力差はわかっただろうから、これで諦めてくれ。


「……こないね」


「うん……あ、席立ったぽい。ほー」


「どしたん?」


「いや、マスクしてたけど凄い美人に見えた。正徳女子かな、あの制服」


「そうだね。受験のときに見たよ」


 相手もJKだったのか。同世代相手だからムキになってたのかな?

 てか流石に疲れたし、JKが延々格ゲーやってると目立つし(遠巻きにギャラリーぽいのもいるし)だから、詩子には悪いけど適当に終わらせて退散しようっと。





 その後は詩子が興味あるという音ゲーをプレイして(開幕20秒でゲームオーバーになってた)、クレーンゲームのぬいぐるみで2000円溶かして涙目になってた詩子に代わってとってあげたりした。


「わたしはゲームの才能ないみたいだね……」


「まぁまぁ、こういうのは経験だから」


 いきなり上手い人なんていないしね。腐らず諦めずに積み重ねた者だけが報われるのだ。


 そろそろ帰るべ、と出口に向かったところで、二人組の男性がJKに声をかけてるのが見えた。ナンパか? JKの方は黒いマスクで表情がよく見えないけど、ちょっと困ってる雰囲気。


「あれ、さっきの子だ」


「知り合い?」


「さっきあーちゃんが散々弄んだ子」


「言い方よ」


「わ、わたしもいつ弄んでもらってもいいからね!」


 お前は何を言ってるんだ。

 それはともかく、さっきのサイクロンの人か。たしかに綺麗な子だな。背中まであるストレートの黒髪に、くりんとしたネコ目がかわいい。マスクの下が口裂け女とかでない限り、結構な美人ではなかろうか。制服がグレーのセーラーワンピにライトグレーのタイがシックでかわいいな。それに、凄く背が高い子だ。170ぐらいありそう。胸もデカくて脚も長くてスタイルいいし凄いモテそうな雰囲気。


 でもナンパは困ってそうだし、助けようかと思ってたら目が合った。なんかそのまま近づいてきた。んで肩に手を回されて抱き寄せられた。


「か、彼女いるんで、まに、間にあ、合ってます」


「えっ」


「あらま」


「はぁ!?」


 ……お前は何を言ってるんだ……?

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