25:何やら帝国側でも思惑があるようです
■ストルス・ガーナトン 40歳
■第485期 Bランク【力の塔】塔主
「塔外での暗殺は失敗だったらしいな」
「しかもそれで帝国の関与がバレたんですよね?」
「暗部を動かせばいいものを騎士になぜやらせますかね」
「軍務卿でしょ? 陛下にいい恰好したかったとかじゃないですか?」
「それでとばっちりがこっちにも、と……」
俺は元々ニーベルゲン帝国騎士団の一騎士だった。塔主となったのが十五年前。
しかも二十神秘である【力の塔】に選ばれた。
国からの支援も厚く、実家のガーナトン男爵家は子爵家に陞爵した。
恩義に報いるべく塔主としての仕事を全うし、順調にランクを上げていった。
途中、横やりも入った。
他国もそうだが、帝国内でも『皇帝派』と『貴族派』が未だに水面下で戦い続けている。
俺は無論『皇帝派』だし、同盟を結んだ四名も同じく『皇帝派』の者ばかりだ。
Cランク【鋼刃の塔】のゲリッジと同じくCランク【魔杖の塔】のミネルバ。
Dランク【詩人の塔】のティアニカ、同じくDランク【噴石の塔】のヴォルカ。
皆塔主としては後輩にあたるし、ランクも俺が一番高い。さらに二十神秘であるという事で必然的に俺が同盟の代表者のような事をしている。
まぁ彼らの実家は某伯爵と縁があったり、某侯爵と繋がっていたりするのだが、バベルにおいては爵位よりも実績とランクだ。
で、今日の議題となっているのが最近一番の悩みの種である。
第三皇子ラスター殿下が【女帝の塔】に消されたと。
塔主戦争を行うに至った経緯はよく知っている。俺たち五人とも総会にいたからな。
殿下が神と【女帝】に食ってかかり、神は遊び半分で煽った。
神の性格を知っている俺たちはあれが殿下を誘い出す為のものだと知っている。それに乗る方が悪い。相手が悪いと。
しかし殿下を止められるはずもなく、神に口出しするなど以ての外。
結局は塔主戦争が決まり、結果は御覧の通りだ。
せめてオープンしていれば殿下を同盟に引き入れ、お守りできたかもしれないがあの場では何もできない。
プレオープン中も色々と支援したつもりではあるが、やたら接触すれば目立つだろうしな。
ともかく殿下が亡くなり、皇帝陛下は取り乱したと言う。
皇族から塔主が、それも二十神秘が出たのだ。期待しないわけがない。
まさかオープン前、500期の第一号として消えるはめになるとは露にも思わんだろう。
かくして暗殺を試みるに至ったようだがそれも失敗。
そのつけは俺たちに回ってきた。まぁこれまでも依頼はされていたのだが。
バベル外での暗殺はすでにフランシス都市長に目をつけられているらしく厳しい。そもそも【女帝】が外に出る機会がほとんどない。
バベル内、自分の塔から出たところで暗殺を試みようものなら【神の裁定者】に消される。
素直に攻略しようと【女帝の塔】に『偽Dランク』を何組か挑戦させたらしいが、そのどれもが失敗。
やはり新塔主としては異例の難易度らしい。想定内ではあったが少なくともDランクに収まらないのは間違いない。
では塔主戦争を仕掛けるしかない――というのが再三きている俺たちへの依頼だ。
塔主でないと理解させるのが難しいから困る。
こちらが塔主戦争を仕掛けたくても早々塔主戦争などできるものではない。
だというのに「意地でも塔主戦争を受理させてさっさと消せ」と言われるのだ。それができれば苦労はない。
「まぁ普通に申請しても却下でしょうね。【女帝】が受ける理由がない」
「申請するにしても同盟戦か交塔戦かって話からだろう」
「交塔戦ならストルスさんの【力の塔】対【女帝の塔】?」
「Bランクの二十神秘相手に受理するわけねえ。いくら新進気鋭の【女帝】でもな」
いくら強いと言っても俺の【力の塔】と直接やりあえれば確実に勝てる。
例のメイドが噂どおりに強いとしてもだ。
しかしBランクとDランクの交塔戦など俺も聞いた事がない。
「かと言って同盟戦の方がもっとありえないでしょ。あっちはDEEの三塔、こっちはBCCDDの五塔だし」
「そこは戦闘条件次第ではないか? 三塔ずつにするとか、何かしらハンデを与えるとか」
「同盟戦の場合は詳細をつめるのに神が立ち会うんでしょ?」
「神が気分次第で向こうに有利な条件にする事も考えられるぞ」
「まぁあの神だからな」
というか条件を決める場に立つには、その前にこちらが【女帝】側に申請して、それが受理されなければそもそも無理だ。
ある程度の条件を申請時に【女帝】に提示し、それを納得しての受理。
詳細は神との立ち会いで、となる流れだな。
「誰か人質でもとって無理矢理にでも受理させる事ができれば楽なんだが……」
「無理ですね。塔主同士でそんな事をすれば【神の裁定者】が来ますよ」
「塔主戦争をせずしてこちらの負けね」
「素直にいい感じの条件を提示するしかないですか……」
まぁ申請自体は何度もできるから、最初は厳しい条件で却下される前提にしておき徐々にゆるくするくらいでいい。
そうすれば最終的には少々厳しい条件でも「これなら勝てるかも」と錯覚するかもしれない。
それから五人で数日をかけて話し合った。
まずはどういった条件を提示すべきか。
最初から厳しすぎてはその後に繋がらず問答無用で却下だろう。
しかしある程度厳しくしておかないと後が活きない。
俺たちは過去の経験や歴史を元に、申請と共に送る提示条件を模索していった。
そして一回目の申請した翌日――
『塔主戦争申請が受理されました』
「「「「「うそお!?」」」」」
◆
=====
・塔主戦争形式は同盟戦。
【力】【鋼刃】【魔杖】【詩人】【噴石】の同盟vs【女帝】【忍耐】【輝翼】の同盟
・代表者の塔一つずつを出し合っての交塔戦とする。
・戦場となる塔に同盟の魔物を集めても良いとする。
但し自軍総計が千体を越えてはいけない。
・戦場となる塔の塔主討伐、または宝珠が破壊された場合、その塔主だけでなく同盟全てに勝敗が適用される。
報酬の振り分けは同盟内で自由に行う事ができる。
・戦場となる塔主の画面に映る光景を同盟者は見ることができる。
戦場となる塔に同盟塔主が集まって共に指揮することも可能。
但し塔主戦争参加者以外は見ることが出来ない。(神以外)
・塔主戦争は〇日の二の鐘から開始し、勝負が決するまで継続する。
・戦場となる塔は申請を受理されてから塔主戦争当日まで階層構成の変更を禁ずる。
但し同盟の魔物を配置する事は許可する。
=====
『うーん、シャルロットちゃん側はホントにこれでいいの?』
『はい。同盟内でちゃんと話し合いましたので』
『そっかー、いや普通さ、ランクが違うから塔の階層数を合わせたりするんだけどさー』
神よ、そんな助言しないでくれ。
向こうが「これでいい」って言ってるからいいじゃないか。
さっさと了承してくれ。
塔の階層数に関してはあわよくばと思って記載しなかった。
普通に考えれば俺の【力の塔】と【女帝の塔】が代表者になるだろう。
そうなれば十五階と七階の勝負。
これで向こうが勝とうと思ったらこちらの倍以上の速度で攻略していく必要がある。
しかもBランクの塔を、だ。
未だどの侵入者も到達していない俺の塔の最上階へ、その速さで上ってこなければならない。
メイドの力に頼るつもりか?
ヤツを攻めに使えば自分の塔の防衛が疎かになる。
こちらの戦力をいつまでも防ぎきれるわけがない。
こちらの最上階に上ってくる前に、たった七階を攻略すればいいだけのことだ。
ただし気になるのは、最後の二文を【女帝】側が追記要求したことだ。
幸い受理されてから今まで、俺の塔は構成変更をしていない。
これで変更していたらそれを理由に「俺の塔は使用できない」となっていただろう。
が、そんな事は【女帝】が知る由もなし。
もしかしたらそこを期待していたのかもしれないが……残念だったな。
塔主戦争の開催を明後日としたのも、おそらく俺たちに準備をさせたくないということだろう。
こちらは申請をする前の段階で何度も話し合いをもっている。
こういう戦いになればこうしようと、ある程度の詳細はすでに詰めてあるのだ。
全く問題ない。何なら明日からだって戦える。
他の観戦だの報酬だのは目くらましだ。同盟戦にありがちな条文。
こちらは【女帝】さえ消せればそれでいい。
意図に気付かず了承してくれるならば、ただ普通に勝つだけだ。
『まーいっか。じゃあこの内容で塔主戦争しちゃうね! 明後日の二の鐘だからね! みんなよろしく!』
『はい』
よおし! 通った!
これで明日に五人で準備をして、明後日が塔主戦争だな。
それで【女帝】は終わりだ。やっと国にいい報告書が送れるな。
力の塔のストルスさんに当て馬警報が発令されました。至急フラグを立てるのをお止めください。
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