89:ドロシーさん、相変わらずピンチです!
■ドロシー 23歳 ドワーフ
■第500期 Dランク【忍耐の塔】塔主
五階層の『罠の回廊』は【女帝の塔】の四階層『トラップ回廊』の原型でもあり改良版や。
アップダウンのある細い通路。罠の数は他階層の比じゃないくらい多く、そのほとんどが″殺しにいってる罠″。
魔物は小柄で強くはないがあくまで奇襲要因。魔物に意識を向けておいての罠、というのを徹底している。
未だ誰も突破していないその地獄のような階層を、初挑戦たるアンデッド五人組はぐんぐんと進んでいた。
『や、槍に貫かれても血が流れない……やっぱりアンデッドなんですね……』
『いやそれにしたってダメージないのはおかしいじゃろ。グールとて剣や槍で斃せるはずじゃろう』
『ほら、傷になったところ、黒い靄みたいなものがみえますわ。闇の魔力でしょうか……』
『えっ、なんでギロチンで首がはねられても復活するんです!? おかしいですよこんなの! ズルです、ズル!』
画面の向こうのみんなはやんや言うてるけど、ウチは歯噛みしかできん。
とにかく魔物が来ようが蹴散らすし、罠にかかろうが無視するし、死んだと思っても不死身だし、こっちの手が全て無意味だと言わんばかりに進んで来る。
時間稼ぎの階層のはずが、たいした時間稼ぎになっていない。
期待も空しく四階層は突破された。あとは五階層と最上階のみ。
五階層の『砦』にある大ボス部屋を抜けられれば最上階にはうちしかおらん。あとペットのソリッドヘッジホッグ。
『砦』は中規模な部屋を経由して進むような、いわゆる『連続小部屋』のような造りになっている。あれの部屋が少し大きいバージョン。
出迎えるのはストーンゴーレムやアイアンゴーレム。この階層は大ボスを含めてゴーレムだらけといった感じや。
ゴーレムに狭い回廊やら沼地やらは無理やからな。最後にまとめてドドンと出すと。
罠は非常に少ない。ここまできたら罠で殺すよりも単純な戦力で殺すと、そういう階層設計や。
これに対しアンデッド五人組は真正面から戦いに挑んだ。
いくら不死身だろうが、いくら闇の魔力の何某があろうが、装備はあくまでDランクの冒険者相当。
さすがにアイアンゴーレムの防御力相手だと厳しいらしく、斃すのに時間がかかっていた。
『こ、これ、いけますかね……』
『どうじゃろうな。ほら見てみい。後衛のやつ、杖を捨てて殴りかかったぞ』
『前衛も武器が壊れたら肉弾戦になりそうですね』
『そちらの方が強いのではなくて? 肉体は不死身なんでしょうから』
こんなに神聖属性を欲したことはない。おそらくゼンガーさんなら一発で斃せるやろ。
神聖属性じゃなくても火属性とかでもいい。こんなことなら【力の塔】同盟から手に入れたフレアドレイク召喚しておけばよかった。
……まぁ固有魔物やしTPがバカ高いけど。
そうこうしているうちに大ボス部屋までやってきた。
アンデッド五人組がその扉を開け――そこにはグランドタートルが横っ腹で通せんぼしとる。
当然アンデッドたちはこぞって殴り始める。
「粘れグランドタートル! 耐えろ! 頑張って耐えてくれ!」
本当は眷属のグランドタートルは逃がそうと思っていた。やっぱ眷属は思い入れがあるし。
でも相手が何をしてくるか分からない。もしかしたら切り札を持っているかもしれない。例の『自爆』みたいな……。
だから最後の最後まで時間稼ぎに徹することにした。
殴られても殴られてもグランドタートルは微動だにせず。ウチの自慢の無敵要塞であり続けた。
でもそれがいつまでも続くはずもなく――グランドタートルはついに光となる。
「グランドタートルありがとう! 助かった!」
消えゆくグランドタートルに塔主らしく感謝した。
そして大ボス部屋にアンデッドたちが入って来る。
「クリスタルゴーレム! 三体ずつ襲わせるんや! 時間いっぱい使え!」
クリスタルゴーレムの前に並ぶミスリルゴーレム、十体のうち三体ずつで仕掛けるよう指示を出す。最後まで気を抜いたらあかん。
ミスリルゴーレムは指示通りにアンデッドと真正面からぶつかり――
――カラァン――カラァン――カラァン――
そこで五の鐘が鳴った……タイムアップ。
アンデッド五人の姿が転移の光に包まれ――
『ターニアさん! あの人たちを追って下さい!』
『シャル! 儂も見るぞ! 絶対に見失うな!』
シャルちゃんとフゥが追跡をしてくれるらしい。
『ふぅ、なんとか防衛は成功、ですわね……』
『せ、成功は成功なんでしょうけど、まだ終わってないと言いますか……全然安心できないですよぅ』
確かに成功は成功や。あんな無茶な攻め込まれ方をして、なのにウチは生き残っている。
紛れもなく成功には違いない……でも――
「うあああああっっ!!! 絶対に許さんからな!!! どこのどいつか知らんけど首洗って待っとけやボケカス!!!」
『ひぃぃぃっ!』
『まぁそうなりますわよね』
◆
五の鐘が鳴った時点で塔内にいる侵入者は強制的にバベルへと転移される。
それはどこの塔でも毎日ある光景で、鐘の直後はバベル内に人が溢れるんや。朝の混雑ほどじゃないけど。
【忍耐の塔】の入口にも何組ものパーティーが放り出されるわけで、その中から見失わないようアンデッドの五人を探さなあかん。だからシャルちゃんとフゥは焦ってたわけや。
さすがに半日も見続けた連中を見逃すわけもなく、五人はすぐに見つかった。
こちらは二人体制なのをいいことに、ターニアさんがアンデッドのすぐ近くを見張り、フゥが遠目で広く監視することにした。
いつだれが接触するかもしれんからと。
しかし五人は誰とも接触しないままトボトボと歩き続ける。繁華街を外れ、徐々に街の端へと。
そうして行き着いた先は――
「共同墓地?」
『まぁアンデッドを隠すにはうってつけじゃの。こんな街の端っこになどあることも知らんかったわ』
『バベリオ住民でなければ利用しないでしょうしね。で、当然誰かが接触してくるのを待つんですわよね』
『ほ、本当に来ますかね。わざわざ塔から離れた墓地なんかに……逆に目立ちそうですけど』
『来ないはずがないじゃろうな。あの五人という証拠を残したままでいるはずがない』
うん、ウチもそう思う。犯人はあの五人をできるだけ早くに処分なりちゃんと隠すなりしたいはずやろうし。
もしそう思わんやつなら馬鹿が確定する代わりに、余計に対処が難しくなる。
ウチらは監視を頼みつつ反省会めいたことをしつつ時間を潰した。
そうして外が闇夜に染まった頃、どうやら犯人は動き出したらしい。フゥのファムがそれに気付いた。
『どうやら姿を完全に隠しておるようじゃの。魔力で姿形は分かるが視覚では透明のようじゃ』
『姿隠し……魔法ではないですわよね。また限定スキルでしょうか』
『外套のようなものを羽織ってるようじゃからそういう神授宝具かもしれぬな』
『外套型の神授宝具……何人かは分かりますわね』
アデルちゃん、ほとんど全員の神賜覚えとるんか。
秀才タイプの天才とかほんと恐ろしい。味方で良かったわ。
その後、アンデッドに合流した犯人は彼らに手を触れると、五人はパタリと倒れたらしい。死人に戻ったと。
あらかじめ掘ってあったらしい穴に五人の死体を放り込み、土で埋め、さっさとバベルへと戻っていったらしいわ。
これは再利用するのかもしれんな。ということはノノアちゃんとこに来たヤツらも近くに埋まってるんやろか。
ターニアさんとフゥ、二人に見られているとも知らず犯人は自分の塔へと戻る。
向かった先はバベルの24階。
入った転移門、その上に掲げられたプレートは――
『【死屍の塔】……』
聞いたことがある。それは確か……。
『Bランクの【死屍の塔】――【傲慢の塔】の同盟のナンバー2ですわね』
あいつらかい!!! あの変な名前の同盟の!!!
はい。ということで犯人でした。碌なことしませんねこいつらは。
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