63話 再開?
【藍】のワンダーオーブを手に入れる手掛かりになりえるジョアサンと親密になる為、あえて彼の提案した悪魔祓いに付き合ってあげようと、支度を始めた私。
私の着替えが終わったタイミングで、突然スザンヌが突然私のベッドに倒れ込んで眠り始めた。
「ちょっと!? 職務放棄? いえ、病気か何か? 誰か来て!」
私が人を呼ぼうと扉の方に駆け出そうとする前に黒づくめの男性にぶつかった。顔はローブによって隠されていて、口元しか見えない。
「アンタ…………九年ぶりね。スザンヌが急に眠ったのは貴方のせいかしら?」
「九年か。まあいいや。お前の想像通り。彼女には眠って貰った」
ブランク。顔は見えませんが、この服装は昔から変わらない。背は伸びていて大人になったくらいしか違いはありません。九年間も姿を現さなかったと思いましたが、ついに私がワンダーオーブを手に入れられる目前まで来たから目の前に現れたのね。
「何か用?」
「本気で教会に行くの?」
「ええ? 悪魔祓いして貰うのよ」
「不要だ。行く必要はない」
「私もそんなもの憑いているだなんて思っていないわ」
「じゃあ、なんだ? お前はあいつのことが好きなのか?」
好き? 私がジョアサンのことを? …………嫌ってはいないけど、別にそういう間柄ではないのですけど、なんでそんなことブランクに聞かれなきゃいけないのよ。いいわ、話でもそらしてとっとと退散して貰いましょう。
「そういえば昔、貴方から貰ったこれ覚えているかしら?」
私は机の引き出しから小さな箱を取り出して、中身を取り出した。
「小瓶? ああ、建国祭の時に買ってやった香料入りの瓶か。なんでお前はそんな空き瓶を大切にしまっているんだ?」
ブランクの言う通り、私の手元には綺麗に洗った何も入っていない小瓶がありました。
「いいじゃない別に。そんなことよりこの瓶っていつまで私以外の人が見ることができないの?」
「俺が魔法を解除するか、俺が死ぬかのどちらかだな」
「ふーん?」
「解除したいのか?」
「いいえ、そのままにしておいて。何かに使えるかも知れないじゃない」
つまりこの瓶が他の人にも見えるようになった時は、ブランクが死んだ時ってことなのね。…………その頃にはお互いしわくちゃになってそうね。だってブランクって殺したって死ななそうじゃない。
「それより早くうちのメイドを開放して頂戴」
「…………教会に行くんだな?」
「そう言っているでしょ?」
「チッ、わかったよ」
そう言ってブランクはまたその場から黒い靄になって霧散してしまった。数秒しない内にスザンヌが起き上がります。
「あれ? 姫様?」
「おはようスザンヌ。過労で倒れてしまったのかしら。今日はおやすみなさい。お母様からセシルを借りるわ」
「…………申し訳御座いません」
以前、私をお世話していたセシルは、今は母のメイドとして仕えていました。早速両親のいる宮殿に行き、事情を説明しますと、セシルが泣きながら私を抱きしめました。
「姫様ぁ! ご自分のメイドが他にいる中、わざわざ私をお選びになってくださったのですね!!」
「え、ええ。やっぱりセシルかスザンヌでないと付き人として連れていきたくなくて」
泣いて喜ぶセシルの後ろには、母エリザベートが私を見つめていた。さすがは元悪役令嬢、衰えることのない美貌の持主で、三十歳過ぎた今も、二十代と言っても違和感のない若々しさを保っています。
「クリスティーン、休みの日なのですから王宮でゆっくりしていてもいいのよ。魔法学園での生活は体力の浪費が激しいでしょう? お母様で良ければなんでもして差し上げるわよ」
過保護かっ!! 私は脳内で強くツッコミを入れてしまうほどに、エリザベートが私のことを心配してオロオロしている。思えば、エリザベートの母。祖父母にあった時も異様に孫大好きという雰囲気でしたし、間違いなく遺伝子よね。私は人格形成こそ前世ですけど、遺伝子は間違いなく彼女から半分貰っているのですよね。
でも、どうせなんでもして貰えるのでしたら…………あれよね。
「あの…………今夜一緒に寝てくださりますか?」
これはその私がマザコンだからではない。エリザベートが喜ぶからやる。そう、エリザベートが喜ぶからやるの! 私は断じてマザコンではない。
「それはダメよクリスティーン!」
まさかのダメ出し。正直、一発オーケーだと思っていた私は茫然としてしまい、今度一緒にバラ園の手入れをすることになりました。
ちなみにダメな理由はと言いますと「可愛く育ったクリスティーンと一緒にジェラールを眠らせられるわけないでしょ!!!」だそうです。もっと夫を信じてあげてください。てゆうか、最近は一緒に眠っていなかったから知りませんでしたけど、二人はまだ一緒に眠っていたのですね。尊い。
ジェラールと弟君も早く出してあげたいですね。
今回もありがとうございました。