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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く - 嘘は嘘を呼ぶ
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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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嘘は嘘を呼ぶ

「スクロールに関しては、案外簡単でしたね」

「高かったけどなぁ……紙って結構高いんだね。知らなかった」

「それは、昔は紙というものは貴重品でしたから、当然かと思われます」


 初めぼったくられたかと思ったよ……とはいえ、ちゃんとお金持って行けば、商人さんはお客さんに親切と言うのを理解できたと思うから収穫……なんだろうか。分からないよ俺には。何も分からない。


「……まぁそっちは良い。まだ、そこ迄でも無かった。問題は羽ペンだよ。インクは兎も角として、何だあのバカみたいな値段……貯金ほぼつぎ込んで、一番安いのしか買えんかったぞ……」

「書けるだけマシ、というモノです」

「こ、コレだけ投資して書くだけしか出来ないとか……正に贅沢品と言うのが正しい」

「牛だとか馬だとかの方が、資金分は働いてくれますしね」


 だ、だが今はコレが必要なのだ……そうだ。そうなんだ。そう思ってないとやり切れないマジで。アレだけあれば当面の食料どれだけ……うぐぐぐぐぐぐぐっ!


「とはいえ、コレで書くという行為が出来るようになりましたし、作家としての活動はよりはかどる様になるのでは? 慣れてるでしょう? 羽ペン」

「慣れざるを得なかったんだよ。アンタに送り込まれた世界旅行でな!」


 あの経験が活きたやったー、なんて決して言えない。あんな理不尽に感謝したくない。それより、これを有効的に使うやり方を模索したい……


「まぁ先ずはお城に出す偽装の手紙からです」

「素直に陳情として書く? 盗賊が出ましたーって」

「それだと嘘だとバレた場合私たちの身が危ないです。友人から私達に託した……という体で書くのが良いかと」

「あ、成程」


 ホント、良く色んな所まで考えていらっしゃる事。


「おーけい、じゃあそんな感じで……」

「酒場で出会った方と話して、その方から緊急で受け取った、という事にしましょう」

「いやぁちょっと怪しい気がしないでも無いけど、まぁ変に言い訳するよりは大分マシ」

「でしょう」


 あーしかし、いよいよ正面切って王子を騙す事になるのか俺ら……バレたら首切られるどころの騒ぎじゃすまなそうなのがなぁ。


「なんか、今更になって怖くなってきた……」

「そうですね。今さらですね。逃げる事も出来ないのでさっさと書いてください」

「ホント容赦ってものを知らないね貴方は」


 まぁ書く事しか出来ないのは悟ってる。とはいえ、羽ペンで書くのもどれくらいぶりかなぁ。確か、ヨーロッパの、名前も知らないどこぞの地方に飛ばされた時ぶりだったか。慣れるまで筆談も出来ないとかね……地獄よ。


「……このインク、質は微妙だなぁ」

「分かる物ですか?」

「そりゃあなぁ。何度も書いたことあるから……つっても書く分には問題ないか」


 えー、どんな書き出しで行こうかなぁ……偽の書類どころか、正規の書類だってあんまり書いた事が無いというのに。メールだって、編集さんに何度も何度も叩き込まれてようやく、ってそんな事のんびり考えてる場合じゃないか。


「良し、とりあえず小説書いている気分で書いてみよう」

「何だったら私が書きますけど」

「いや、羽ペンの使い方に慣れておきたいから……これから世話になる訳だからな。結構大量に」

「あら、察しが宜しいですね。先生らしくもない」


 俺が察しが悪いみたいな言い方は止めてもらいたいんだけど……っと、そういえば一つ気になってたんだけど。


「これ買って、隣迄の旅費って……」

「……その事について言ってたのではないのですか。前言は撤回するとして……」

「いやしなくていいから。俺だって察しは悪くないから」

「当然ながら稼ぎ直しですよ。その羽ペンを活かす……には、まぁ次の紙を買う余裕もありませんし、当分は口頭ですけど」

「あ、そうですか。はい」


 結局は俺は作家の仕事から逃れられやしないと……所で。


「何この紙。クソ書きづらいんだけど。質が酷過ぎないか、マジで」

「それは羊皮紙なので、先生の触れていたような紙とは性質が違うんですよ。頑張って慣れてください」

「……慣れるころには腱鞘炎だとかペンだこ出来てそうだ」


 ぐぬぬぬ。いや、文句言ってても始まらん。書かねば。しかし、そうそう簡単に文言なんざ思い浮かぶものじゃないんだけども。


「『――本日はお日柄もよく』」

「お見合いですか。というか、この場面で出る類の言葉じゃないのでツッコんでしまったんですけど。それは兎も角、そんな前置きいらないので」

「そ、そっか。そうだな。うん」

「はぁ……こういう時は、緊急性を重視する為にも、寧ろ短い文言で書くのが宜しいのではないかと。緊急事態。国境にて大規模な賊を確認。くらいで」

「それでいいのかな。もうちょっと、大袈裟に」

「大袈裟な方が嘘っぽく見えるでしょうに。シンプルイズ、ベスト、です」


 な、成程……


「えっとじゃあ、『先日、野盗の一団が私の屋敷の近くを通ったのを見かけました。向かう先は隣国との国境方向。狙いは、隣国との交易路かと』」

「……なんですか急に流暢に書き始めて」

「舐めんなよ。こちとら作家だぞ。書く方向さえ決まればするりと出てくるってんだ」


 えっと、それで……その野盗の一団について、急ぎ知らせようと思った次第ですと。まぁこんな感じか。


「所で、何故屋敷、という言葉を?」

「そりゃあ普通の人は手紙なんて書かないし……まぁこうしてスクロールに書いて持ってくるような余裕のある人は、それこそ富裕層だとかだろうよ」

「あぁ、なるほど。そこまでは思いつきませんでした」

「俺が気が付いたから良いだろ別に」


 この嘘がバレない様に、出来るだけの細工はさせてもらうからなぁ……所で、なんだけれども。


「これ、言葉は通じてるじゃん」

「そうですね」

「……文字は、どうなんだろう。日本語で書いちゃってるけど」

「先生はこの作品を日本語で書いたのですから、先生の言語、すなわち日本語が通じてもおかしくないのでは?」


 ……そうだと信じよう。うん。


アンデルセン先生ごめんなさい。


世界を旅させられて身に付いたスキル:羽ペンで文字が書ける事

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