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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く - ピンチはピンチ
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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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ピンチはピンチ

「稼いだ金が、輝ける未来を指し示す事は無かったねぇ……しかし、どうすれば良いんだコレは。メッチャ、メッチャ……あるじゃん看板」

「圧力が凄いですよね。まぁ、でも行かないと駄目ですので。サポートは致します」


 取り敢えず、普通に観光するつもりで行こうかなぁ。全部うっちゃって。うん。逆に看板の事を考えれば負けまである。頑張れ俺。冷静になるんだ。あくまでナチュラルに事を済ませれば勝ちだ。


「……ふぅううううううう、ヨシ。取り敢えず、大通りとかを普通に、さっさと歩けばいいだろう。任せろ、子供に出来るような事だ、やってやれない――」

「あっ、先生それはだめです、ストップ」

「くぺっ」


 ……む、昔の服って、頑丈、というか。伸びないから、けっこう、しっかり首がぐぎっと締まってしまって、ちょっとダメだよコレ。と、と言うか編集さん、いきなりするんですか!?


「……!」

「視線だけで伝えようとしないでください。ちょっと目力強くて面白いので。笑っちゃいますよ。もうちょっと面白さ抑え込んでくださいよ」

「いや無言無表情でそんな風に見えませんけど?」


 何だったらこの人から失笑を買うんじゃないかな? ってレベルの表情ですけど? 怖いレベルだけど?


「兎も角、大きな町なので、色々道はありますよ。裏道とかね? 色々と」

「えー、それなんで知ってるの?」

「そりゃあ何度も町に行ってますから。色んなルートを確認しておいた方が、万が一も万が一の時、逃げられますからね」


 ……もう、普段から逃走ルートの確認を済ませて置くって言うのは、犯罪に慣れてる人間がやる事じゃないかなぁ。普通に災害の時の避難ルートの確認だって最短ルートしか確認しねぇぞ?


「まぁ、その万が一が功を奏したんですね。分かりました」

「先生は事前に指定したルート……は無理なので」

「あ、無理なんだ」

「地図とか書く事なんて出来ないので。取り敢えず、ここから入って、絶対に大通りに出ないようにだけ気を付けて動いて頂ければ」


 そうね。それで上手く行ってくれると信じたい所なんだけどもね……いや、ここまで来てビビりあがって逃げ出しても仕方ないだろう。やるしかないんだよ俺。頑張れ、めっちゃ頑張れ俺。


「……洒落にもならないレベルでボロカスにやられて死ぬとかになる前に、逃げ帰りたいなぁ。良いですか?」

「最悪の場合は、そうしてくださっても構いませんから限界まで頑張りましょう先生」

「了解了解。行くしかねぇか。良し、やってやる。やってやるってんだ」


 裏路地か……格好と相まって、いよいよもって浮浪者だな俺。ええい、故郷の親に見せられる恰好ではないな到底。ははっ。


「……と言ってもな」


 観光でもない、こうやってうろつくだけって結構、難しくないだろうかと思ってしまうんだよな。散歩ってのは周囲の景色を眺めたり、結局のところ楽しめる要素は幾らでもある訳でさ。


「それに比べて……ここら辺全部壁だしなぁ……」


 しかも汚いし……あっ、本物の方が蹲って……まって、アレって本物どころじゃないんですけども? なんか裾から白い何かが見えてらっしゃいますけど? このまま見つかった場合の俺の人生の行く末の方が座ってらっしゃるけど!?


「あぁはならないように注意しないといけないなぁ……いや、注意したところで、なんかしらのミスでああなりえるんですけども」


 ……さっきの看板が立ってる場所から、そう遠くない場所にしっかりと立ってらっしゃるんだけども、別の看板。なんだろう。ゴンゴン勢いよく立てて行ってんじゃん。めっちゃ俺の事探してんじゃん。いや、俺じゃないけど。


「しかし、なんで俺の事真似たんだろうなぁ犯人くん。俺に恨みがあった、ってなると俺達を追いかけてここまで来てる可能性まであるんですけど」


 いや、ソイツが送り込んだまであるかなぁ。ここに。いや、恨みがあるにしてもとんでもない出力で俺への恨み滾らせてないかい? その努力、もうちょっと別の所に向けられなかったかなぁ?


「……って、あくまで想像の域を出ないかそれは。流石に」


 想像に想像重ねたってしょうがないだろうよ。ったく。なんか、ちょっと前に何か見た気がしないでも無いけど……特に記憶もないし、気のせいだとは思う。


「――おい、聞いたか?」

「あぁ。昨日だってよ! 見た奴が居るんだってな! まさか、戻ってくるなんて!」

「……?」


 なんか聞こえる……っていうか、裏路地にガッツリ人が居ますけど!? こんなクソみたいな場所、は利用しておいて流石に失礼か。いやそうじゃない。まだ見つかるには早いだろ、物陰に身を隠さねば。


「姫様が態々ここに居るこの時に、態々なぁ。運が悪すぎたぜ」

「ボッコボコにされてつるし上げか?」

「いや、そうする前に姫様が潰して終わりだろうよ。しかし、どれくらい持つかな」

「そう持つかよ。例の犯人見つけたっていう話で、姫様が城から大返ししてるんだって」


 ……ぬぁっ、にゅああ!? なっ、んだと!?


「――ん?」

「どうした?」

「いや、今物音が……って、なんだ。唯の浮浪者じゃねえか」

「浮浪者? ホントだ。スッゲェ汚れてる」


 うるせえっ! これは態となんじゃい! 上手く行ってくれてありがたいけど! そうじゃない! 問題は! 今の問題はっ! そこじゃないんだ! くそっ、チャンスとピンチ……いや、ピンチとピンチだこんなん実質!


「偽物が戻って来てる……!? 俺達がピンチになったこのタイミングで!? なんて悪夢だこん畜生!」


 評判が! 評判が落ちる上に! 俺が姫にブロック肉チャレンジされる可能性が! やめて! クソッ! 緊急事態だ! もう逃げるぞ俺は!


アンデルセン先生ごめんなさい。


盤面を動かす為にもピンチにピンチをかぶせていくスタイル。

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