Search for Freya
家に返った頃には既に日が落ちていた。
事情の説明はヒルダ達に任せ、夕飯を作る。
夕飯の間、みんな鎮痛な表情で、話もしなかった。
"Tomorrow, we all search for Freya!" 食後、動作を交えて、明日全員でフレイヤを捜すと宣言する。
今日の狩りの時は、泣き声を上げられると困るのでハーゲンを連れて行かなかった。
しかし、明日は捜索だ。ハーゲンの泣き声は問題にならない。
フレイヤが怪我や衰弱している場合に備えて、馬も連れて行く。
ロムとレムも連れて行く。警察犬の真似事みたいなことができるかもしれない。
つぎの朝、早めに朝飯を済ませて、狩りの身支度をする。
全員に弩を携帯させる。ただし、矢を装填した状態にするのは、慣れているインガとヒルダだけにする。
慣れていない子達に矢を装填したまま弩をもたせると、事故が起きる危険性がある。直ぐに矢を装填できるように弦は引いた状態にさせる。
グエンは左手が不自由だが、弦を引くことに問題はない。
今はもう3月半ばだ。クマが徘徊していることも考えられる。何かあったら直ぐに対処できるようにする。用心に越したことはない。
出発だ。みんな纏まって行進する。
昨日アーデルが馬と待っていた場所に来た。
馬二頭を連れてきたので、アーデル、グエン、ハーゲンを抱いたヘルガ、そして、インガをこの場所で待機させる。
ヒルダとエンマを連れて、馬から離れた所に立つ。
フレイヤが寝具として使っている毛皮をロムとレムに嗅がせる。
さて、上手く行くか?
ロムとレムは、最初、戸惑ったように自分たちの周りを何回か回った。
ロムが、何かに気がついた様子で、昨日フレイヤが走っていたと思われる方向に走り始めた。
自分たちはレムと一緒にロムに付いていく。
自分達が少し走りロム達に追いついたところで、ロムとレムが一緒に何かに向かって急に駆け出した。
ロムとレムが茂みのところで立ち止まった。
茂みに近づくと、そこに血の跡を見つけた!鹿の血か、それとも、フレイヤの血か?
この近辺は昨日探したつもりだったが、見落としてしまったか。
ヒルダが不安そうな表情を浮かべる。
ロムとレムを撫で、血を嗅がせ、血の跡を追うように指示する。
ロムとレムは、再び走り出した。
自分たちは急いで後を追う。走りながら地面を確認すると、所々に血が付着している。
かなり走った。もう昨日探した範囲を超えている。
ヒルダが、フレイヤの名前を大声で叫んでいる。エンマも大声で名前を叫ぶ。
応答する声が聞こえた!
いた!
茂みの中からフレイヤが這い出してきた。ちゃんと立てないようだ。
ヒルダが駆け寄ると、フレイヤはなぜか得意げな顔で茂みを指差した。
茂みの中には、牝鹿の死体があった。自分が仕留めたと言うのだろう。
ヒルダは、フレイヤの頬を激しく叩いた。フレイヤは吃驚した顔で膝をついた。
ヒルダは、両膝をつき、フレイヤを抱きしめて泣き出した。フレイヤもつられて泣き始めた。
鹿はまだ若い比較的小型のものだった。しかし、まだ小さいフレイヤにとって運べる大きさではない。
鹿の脇腹には矢傷がある。フレイヤの弩の矢だ。ただ、その場で死ぬような傷ではなく、ここまで逃げてきて力尽きたのだろう。
フレイヤは深追いしすぎて、途中で足を挫いたようだ。それでも、フレイヤは血の跡を追ってここまで辿り着いた。
しかし、夢中で追ってきたから帰り道がわからない上、戻る体力も残っていなかったというところか。
この鹿をここで処理すると血の匂いが辺り一面に撒き散らされてしまう。みんなが待っている所までだいぶ距離がある。
血抜きなどの処理はみんなのいるところで行おう。
フレイヤの足の様子を見る。骨は折れていないようだ。フレイヤは、ヒルダとエンマにかわりばんこにおんぶすることになった。
鹿は自分が背負って運ぶ。
ロムとレムが先導し、みんなのいるところを目指して帰る。
かなりの道のりだったので、みんなのいるところまでたどり着くのにかなり時間が掛かった。
返った頃には昼はとっくに過ぎていた。ハーゲンが乳を求めて泣いている。
ハーゲンに乳を飲ませながら、鹿を木に吊るし、その下に深い穴を掘るように指示する。
準備が出来たら、ハーゲンをヘルガに返し、鹿の処理を始める。
内蔵は問題なく除去出来た。しかし、死んでから、だいぶ時間が経っているので、血が固まり始めていて血抜きが十分にできない。
ちょっと血なまぐさい肉になってしまいそうだ。まあ、この際文句は言ってられないが。
処理した鹿を一頭の馬に、フレイヤをもう一頭の馬に乗せ、帰路につく。
ああ、馬に名前を付けていなかった。
ヘルガ達と出会って26日目、浜辺で目覚めてから1026日目、3年目の3月18日のことだ。