Arabic Numbers?
アーデルの操る馬車に乗って再び浜辺に向かう。
自分が一人だったときに、炭を作るため、浜辺に打ち上げられた流木は定期的に回収していた。
しかし、一人の時は 、トラヴォアを使って運んでいたため、大きくかさばるものは、回収の対象から外していた。
そういった大きくかさばる流木には、枝の付いた大木や大きな木の根などがある。
ほとんどの流木は、水に浸かっている間に、柔らかい部分が朽ちて、硬い部分だけが残っている。
大木の幹から太い枝が出ている流木は、幹の部分を整形するだけで犁として使えそうだ。
大きな木の根も、余計な根を切り落とせば犁になるかもしれない。
所々に転がっている、大きな流木を吟味しながら、犁に使えそうな部分を切り取り、集めていく。
浜辺のほぼ中間の地点、つまり、自分が最初横たわっていた場所の近くに来た。
水際に大きな流木が打ち上げられている。
根元の部分が波打ち際の砂に食い込んだ状態で、幹の部分が海中に沈んでいる。
海中の幹から人間の腕くらいの太さの枝が海上に突き出ている。
犁の引手にするには理想的な太さと長さの枝だ。幹の部分が水の中にあるので状態が確認できないが、良い犁になりそうな気がする。
しかし、この流木は大半が海中にあるので、このままでは必要な部分の切り出しができない。砂浜に引き上げないといけない。
馬車に繋いでいたブラウンとグレイの引綱を馬車から外し、水際に出ている根の部分に結びつける。
アーデルがブラウンとグレイを導いて砂丘の上に向かう。
根の部分が砂に食い込み、木は中々動かない。
インガとエンマと自分が根の部分を持ち上げる。木が動いた。
だが、自分達3人の持ち上げる力は長く続かない。直ぐに、根が砂に食い込む。
再び3人で持ち上げる。木が動く。根が砂に食い込み、木が止まる。
何回かこの作業を繰り返し、ようやく、幹から枝が分岐している部分が海上に現れた。
褌を脱ぎ、止血帯を外し、斧を手に海中に入る。
枝の分岐点を中心に、犁に使えそうな部分を斧を使って削り出す。
流木は水に浸かっていて表面が滑りやすい。慎重にやらないと怪我をするぞ。
流木から犁に必要な部分を削り出すのに結構な時間がかかった。
削り出した部分を抱え、砂浜に上がり、馬車の荷台に載せる。
荷台に置いておいた止血帯を装着し直し、褌を着ける。
水中で慣れない作業を行って疲れた。少し、休憩をしよう。
インガ達も休むように指示して、乾いた砂の上に横になる。
暫くすると、エンマが近づいてきた。
“Juri, … May … I … ask?"
聞きたいことがあるようだ。
“About what?"
何についてかと聞いた。
“What … is … this?"
これは何と聞きながら、砂に何か書き始めた。
“526"
526?アラビア数字の526に見える。
自分はエンマ達にアルファベットは教えたが、まだ数字は教えていないはずだ。
“Where did you see this?"
エンマの腕を掴み、どこでこれを見たと聞いた。
エンマは自分の剣幕に吃驚して、怯えた顔をした。
エンマはゆっくりと砂丘の上の方を指差した。
“Show me!"
エンマに案内するように叫んだ。インガとアーデルが、吃驚してこっちに振り向いた。
エンマは、びくびくしながらも、自分の手を引いて、砂丘の上に向かう。インガとアーデルも、不審そうな顔をしながら、後に続く。
砂丘の上に着くと、エンマは地面を指差した。そこには平べったい円形の石があった。周りには砂が円状に盛り上がっている。
半ば埋もれていた円盤をエンマが掘り出したようだ。
円盤の中心に、文字が書いてある。いや、書くというより刻印されていると方が適切だろう。
“JURI 0526"
エンマは"0" (ゼロ)を"O"(オー)だと考えて、残りの知らない記号について自分に聞いたのだ。
JURI 0526とは何か?もしかして自分のことか?
“You … wrote … this?"
エンマがこれを書いたのは自分じゃないの?と聞く。
“No!"
自分は否定する。
“Who … wrote … this?"
じゃあ、誰が書いたの?とエンマは再び問う。
“I don't know."
自分は知らないとしか答えられない。