Across the River
みんなに弩用の矢を作らせ、その後、何回か矢を射る訓練を繰り返した。もちろん、矢の補修も自分で出来るようになった。
皮で矢筒を作り、常に10本程の矢を携帯できるようにした。
弩の練習と並行して、泳ぎの訓練も継続して行った。みんな、平泳ぎと背泳ぎは問題なく出来るようになった。インガ、ヘルガ、そして、フレイヤはクロールまでこなしている。
これで、舟を使って遠出することに問題はなくなった。
舟は、今、浜辺に置いてあるが、このままの状態では、遠くからでもはっきり分かってしまう。
そこで、2艘の舟を、扇状地の下手の川岸に置くことにした。
まず、水辺に太い木が生えている場所を選び、その近くに舟を引き上げて置く場所を決める。水辺からその場所まで、木の枝や根を取り除き、整地する。
これで、舟を係留する場所が確保できた。後は、舟を浜辺からこの係留地に運ぶだけだ。
舟を移動する経路は、もちろん、水路だ。陸路では、馬を使ったとしても、重すぎて無理だ。
川の流れは結構速い。だが、浜辺から漕ぎ出して、満潮の時間を待って、川を遡れば、楽に移動できるだろう。
今日は、自分の出血が始まって4日目で、出血が終わる予定の日だ。自分の出血は満月と一致しているので、出血が始まった日が満月だ。満月の日は大潮の日でもある。
明日は大潮から5日目で、大潮ほどではないが、まだ潮の干満の差が大きい。満潮に乗れば移動はかなり楽になる。
舟の移動は1艘づつ行う。問題は、誰を舟の輸送に当てるかだ。
ヒルダとヘルガは、自分の1日後に出血が始まったので、明日も出血しているはずだから、駄目だ。
ヒルダは力のある漕ぎ手だから、その補充のためには、残りの中の年かさの子達を揃えなければならない。
そうすると、インガ、エンマ、アーデル、そして、フレイヤか。
インガ達に、明日、舟に乗ることを伝える。
みんなは、一応、浜に浮かべた舟で、漕ぎ方や、方向転換の練習はしていたが、沖に乗り出すことまではしていない。
インガ達は、始めて本格的な舟の扱いが出来ると知って、興奮している。
ヒルダとグエンは、少し不満そうだ。ヘルガはハーゲンの面倒を見なければいけないので、特段落胆しているようには見えない。
次の朝、いつもより早めに朝飯を済ませ、みんなと浜辺に向かう。舟を海に押し出すには、全員の力がいるのだ。
潮はだいぶ引いていた。舟を海に浮かべると、インガ達と舟に乗り込む。ヘルガ達が手を振って送り出す。
自分達は、それぞれ櫂を採り、沖に向かって、一斉に水を掻く。直に、河口の側まで来た。
もう引き潮は止まっている。暫くして、潮が上がり始めた。一気に河口に入り、舟の方向を川上に転換する。
最初は、掻いても掻いても、中々進まなかったが、徐々に、スピードが出てきた。
よし、このまま上流に遡って、行ける所まで行ってみよう。
小屋のある山から見た限りでは、この川の対岸は、広い平地が続いていたはずだ。多分、湿地だろう。
しかし、自分達が住んでいる側の岸は、扇状地に接するところから、急峻な崖になっていて、詳しく探索したことはない。
この際、両岸をできるだけ詳しく調べてみよう。
上げ潮に押されながら、右手に見える扇状地を楽々と通り越していく。
すると、右手の崖に巨大な洞窟らしきものが見えてきた。
この洞窟はちゃんと調べないといけない。もしかしたら、敵に襲撃された場合の避難所として使えるかもしれない。
しかし、洞窟の正面まで行かない内に、舟のスピードがどんどん落ちてきた。上げ潮が終わりそうだ。
舟を方向転換して、西側の岸で舟を係留できそうな場所を捜す。
水辺に少し大きな木が茂っている。あそこなら、舟を係留できそうだ。
櫂の動きを調節しながら、その木を目指す。
舟を岸に接岸させるが、その木に綱を結びつけるためには、川に入らないといけない。
インガが服を脱ぎ、綱を持ちながら水に入り、木の所まで行き、綱を結びつけた。
自分を含めた残りの者も、服を脱ぎ、服と装備を頭に載せ、岸に上がる。
始めて、対岸の土を踏んだ。眼の前は、丈の高い草が生い茂った湿原だった。