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大薮新平 異世界にふしぎな踊り子として召喚され - 13.大薮新平 使徒VS使徒
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大薮新平 異世界にふしぎな踊り子として召喚され  作者: BAWさん
3章 邪神王国ドーマ 使徒大戦編
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13.大薮新平 使徒VS使徒

 大薮新平は踊ると魔法が掛かるという、ふしぎなスキルを得て異世界に召喚された。原因を知るべくウラリュス大神殿に向かう中、皇都から来た使徒一団と出会う。その別れ際、突然ファーミィ司祭長率いる軍が使徒達へ奇襲をしかけてきた。激昂した使徒は新平達への攻撃を叫ぶ。圧倒的劣勢な状況で、使徒と使徒の軍による戦いの火蓋が切られた。

「アイール隊、ヤーガス隊進めえっ!」


 喚声と共にオーシャブッチ軍の一団が、武器を構えて迫ってくる。響き渡る怒声、振動、緊張感。喧騒に自分まで呑み込まれそうだ。今迄の戦いとは桁が違う。数千の兵が一斉にこっちへ迫ってくる。戦争だ。これはもう戦争。戦争が起きようとしている。俺を渦中に巻き込んで。俺の目の前で。


「迎撃! 構え!」「この場を死守しろ!」


 周囲の隊長達が、兵達に警戒を呼びかける。まずい、普通に戦えば人数の少ない俺達が負ける。


「大将!、加護は出来るかっ!?」

(畜生!)


 遠くから呼びかけられたヴィルダズの声に、俺は咄嗟に動き出す。


「加護を掛けるぞ! 身体の力が向上するからな! ピー―ッ、ピッ! ピッ、ピッ、ピツ!」


 俺が号令を上げると、ずどんと地面から木製の台が現れた。こんな時でもおきる摩訶不思議な現象に頬が引き攣る。焦りと共に乗り上げて踏み台昇降を開始。


 ダンダンダン!


 地面に置かれた木製二段の階段を上る。


「ハイッ!」


 最上段で右手を大きく斜め上に振る。


 ダンダンダン!

 地面に降りる。


「ハイッ!」


 今度は左手を大きく振った。

 ぶわりと周囲の兵達の身体が淡く光り出した。俺の頭に踊りの名が響き渡る。


【踏みしめる戦軍の行進】


「「おおおおっ!?」」


 兵達が喚声を上げる。【踏みしめる戦軍の行進】の効果は、反射速度と思考速度の劇的な向上。敵の攻撃を素早くガードし、相手の隙を攻撃できるようになる。

 俺を中心にして、光を帯びる兵達が加速度的に広がっていく。効果を自覚した兵達からは、驚きと興奮の喚声が次々とあがっていく。しかし


(重いっ!?)


 身体がめっちゃ重い。大荷物を背負わされているみたいだ。何故だ。対象の人数が今迄と桁違いに多いからか。まずい。光が広がって対象者が増える度に、どんどん身体が重くなってくる。このままじゃ押し潰される。


「ぬっ……おおおっ! ハイッ!」


 ダン!


 足踏みの音も桁違いに重いものになっていた。それもそうか。今迄は最大四十名程度だったのに、今回俺は周囲を守るジャンダルメーヤ憲兵千人に、効果を与えようとしているのだ。負担が激増してるんだ。


「兄様?」「使徒殿?」「チーベェさま?」


 俺の異常にリーダ達が気付いた。しかし説明はできない。喋っていたら踊りが解けるからだ。止められない。もう最前列では交戦が始まろうとしている。


「ハアッイッ!」

(くそっ、重いっ!)


 ダン!


 前方では護衛騎士達が、隊列の合間を叫びながら走り踊りの効果と注意を伝達している。そうか、憲兵達はこの踊りを受けるのは初めてなんだ。ぶっつけ本番で上手く扱えるのか。いや、身体能力の向上はしないよりした方がいいに決っている。心配しても仕方ない。俺は皆を守る為に、一人でも多くに効果を届けるしかないんだ。


「「うおおおおっ!」」


 前方で大きな喚声が上がった。一瞬遅れて剣戟が鳴り響く。戦いが始まってしまったのだ。くそ、もう止まらない。【癒す女神のムスタッシュダンス】は残回数「1」しかない。助けられる人数には限りがある。ここで俺が下手を打てば大勢死ぬ。皆死んでしまう。俺達も殺される。負けられない。


 ダンンッ!


(ちくしょう! 重いっ!)


「ジョンペエ! 手伝うっ!」

「!?」


 飛び出してきて腰に抱きついたのはヴィルダズの娘、幼女クリオ(八歳)だった。こんな時に何を言い出すかと見れば、俺の横で手を振って行進を始めた。真剣な顔でやってるが当然意味はない。こいつのはただのお遊戯だ。以前俺がやっていた時に一緒に真似て、父親に効果があったと褒められたので信じていたのだろう。


(アホかっ! そりゃ一緒に出来れば負担減るかもしれないけど、出来る訳ねえだ……ろっ!?)


 驚いたことに少し身体が軽くなった。


(えええっ!? 嘘だろっ!? なんでだ? そんな馬鹿な?)


「ハイッ!」「はいっ」


 揃って掛け声を上げながら足踏みをする俺達。迷っている暇は無い。どんな理屈かは判らないが、今は協力してもらうしかない。


「乗れっ!」「!?……うんっ!」


 ダンダンダンッ!


「ハイッ!」「あいっ!」


 一瞬の隙をついて声を掛け、一緒に台に乗りあげる。劇的に身体が軽くなった。凄い。やったぞ。


 ダンダンダンッ!


「「ハイッ!」」


 揃って手を振る。楽だ。届く、これなら全軍に届くぞ。


「いい調子だよ。先頭はなんとか攻めを受けきった。このままいけるかい」


 気を利かせた女傭兵デルタさんが、傍に駆け寄って状況を説明してくれる。ありがたい。

 リーダがヴィルダズにこちらの状況を伝え、彼が護衛騎士達を通じて憲兵隊の部隊長へ指示を伝えていく。大丈夫だろうか。こんなぶっつけの連携で戦えるのだろうか。不安だらけだがやるしかない。


「……クリオちゃん?」


 震える小さな娘の声が聞こえた。視線を向ければクリオのお守役の少年ヴェゼルと一緒に、商人の娘ビノ(九歳)が驚いた表情でこちらを見ていた。おそらく今迄一緒にいたので、様子を見に来たのだろう。

 クリオは満面の笑みになり、自慢毛に声を張り上げる。


「ハイッ!」「はいっっ!!」


 どう、すごいでしょう、と自慢気に声を張り上げるクリオを見て俺は閃く。


「二人も呼べっ!」「!?……うんっ!」


 戸惑うビノとヴェゼルを呼び寄せる。説得している暇は無い。踊りを止め、二人の肩を掴んで声を張り上げる。


「一緒にやるぞっ! 俺に真似て台に乗れっ! いくぞっ、ピー―ッ、ピッ!」


 ずどんっ!

 あえて声を大にして叫ぶと、予想した通り今迄より全長の長い台が土中から飛び出した。よおし、こいつも分かってるな!


 揃って足を踏み出す俺とクリオを見て、慌ててビノとヴェゼルも台に足を掛ける。


 ダンダンダンッ!


「ハイッ!」「あいっ」「は、はいっ」「ふわいっ?」


 最上段で右手を大きく斜め上に振る。


 ダンダンダン!

 地面に降りる。


「「「ハイッ!」」」「ひゃいっ」


 今度は左手を大きく振る。


 訳も分らず怯えていたビノ達だったか、やっていることは単純だし、クリオは楽しそうに笑っている。直ぐに緊張は解けたようだ。

 回数を重ねる度に四人の声が揃ってくる。横でデルタさん達から「いいよ、いいね、対抗できてる!」と発破を掛けられ、皆のやる気が跳ね上がる。


 ダンダンダン!


「「「「ハイッ!!」」」」


 揃った。効果は更に広がり全軍に行き届いたのを感じる。でも負担はない。これならいける。

 四人で視線を交わし合い、互いに鼓舞しながら俺達は踏み台昇降を続ける。視界の端でアンジェリカ姫が期待した視線を向けているのに気付いたが、流石に姫さんをこの面子に呼びつけて踏み台昇降させる勇気は俺にはない。いや本当にないって。そこで可愛く手を振って催促しても駄目だってば!

 俺達はひたすら声を合わせて踏み台昇降を続ける。直ぐ傍でおきている戦いと、滑稽な俺達の遊戯の落差に、近衛女子達が戸惑った顔を向けているが構っているヒマはない。それより姉の真似をしようとしたけど、背が足りなくてぴょんぴょん飛び跳ねて前方を眺めてるトッポをどっかへ連れて行け。気が散って邪魔だ。


「よし、やった! 受けきったよ! 敵が引いて行くよ!」


 やがてデルタさんが喜声をあげた。俺達からは見えないが、状況が好転したようだ。皆に歓喜と安堵が広がる。

 しかし、俺達が安堵して踏み台を降りるより、切れたオーシャブッチの声が響くのだ先だった。


「何してんだ! 何してんだよお前達! そんな奴等に何を手間取ってんだ! そんだけしかいない奴等に何してんだ! それでも栄誉ある俺様の軍勢って言えるのか! 偽者の連中に負けて恥ずかしくねえのか!」


 オーシャブッチが負け惜しみ、兵達に罵声を浴びせている。完全な暴君だ。悪いなオーシャブッチ。俺達も素人集団じゃないんだ。こんなとこで簡単に死ぬ訳にはいかない。

 やりきった気分でニヤけると、クリオとヴェゼル達も勝ち誇った笑顔を向けてくる。しかし、駆け寄ってきたリーダの表情は強張っていた。忘れていたのだ。俺は誰を相手にしていたのかを。相手が俺と同じ使徒だということを。


「俺が魔法をかけないと駄目なようだな! ミュージックSTARTだああっ! 二番、CRY WAR CRY!!」




               ◇



 ダン、ダン、ダン、ダン! ダダダッダッ! ジャンッ!


 打楽器が打ち鳴らされ、リズムと共に音が高鳴っていく。百以上の演奏者による打楽器が一斉に周囲に響き渡る。壮大だ。続いて銅鑼の音と共に、弦楽器の演奏も始まった。

 知っている曲だ。これも映画の挿入歌だ。アメフトの決戦で仲間達が奮起、めっちゃ盛り上がるシーンの奴だ。くそ、格好良いと思ってしまう自分が悔しい。


「OHH、OHH! YAHH、YAAHHHHッ!!」


 男達の怒声じみた叫び声があがる。戦いの喚声じゃない。掛け声だ。オーシャブッチが立つステージを掲げている男達が声を揃えて叫んでいるのだ。音楽だけじゃなく、あんなのまで練習させてやがったのか。


「使徒殿、こちらへ!」


 後ろを振り向くと、護衛騎士達が土嚢を積んで高台を作っていた。助かった。目立つので狙われ易いという欠点はあるが、それ以上に向こうの前線やオーシャブッチの状況が見える方が良い。あっちなんかステージの上だからな。

 三人に声を掛けて高台を駆け上る。高所から見渡せば半円状に固まる俺達の先方を、オーシャブッチ軍が包囲していた。俺達の正面奥には巨大なステージが掲げられ、その上でオーシャブッチが音楽に合わせて踊っている。


 ダン、ダン、ダン、ダン! (HOOOッ!)


 オーシャブッチが一拍ごとに身体をひねり、手を挙げ、脚を蹴り上げている。見事な踊りだ。流石素人とはキレが違う。


(って、踊っている!?)


 やばい。なんかやっている! 来る、なんか来るぞ!

 背中にぞわりと怖気が走った。何が起きるのか全然分らないがまた怖い。逆の立場になって初めて知るこの言い知れない恐怖。

 どうする。つってもこっちは広範囲に掛けられて有効そうなのは、さっきの【踏みしめる戦神の行軍】しかない。大丈夫か。同じので対抗して大丈夫か。それって負けパターンじゃないのか。


「兄様、隙を見て集団の瞬間移動を生み出してください! もう、それしか脱出方法がありません!」

「ちょおっ!?」


 リーダが凄い無茶を言ってきた。いや分かる。確かに対抗することばっかり考えていてもジリ貧になる。退避策も頭に入れておかないってのは理解できる。しかし、なによりまずはあっちの踊りを防がなきゃならないだろが。


「「OHHH、OHHH! YAHH、YAAHHHHッ!!」」


 オーシャブッチ軍の各所で雄叫びがあがり、兵達が槍を掲げて叩き合わせる音が響き渡る。そして兵達の身体に光が浮き上がった。加護だ。俺の踊りと同じで、なんらかの特殊効果が兵達に付与されたのだ。


 ジャン、ジャン、ジャン!

 ドン、ドン、ドン、ドンッ!


 包囲して兵達の足踏みが振動となって押し寄せる。気迫に、音に囲まれている。やばい。こっちの兵達が動揺してる。雰囲気に呑まれている。向こうが同じ様な力を得たのかと不安になっている。


「どうすんだい!」

「さっきと同じの掛けるぞ! 皆に伝えろ!」


 反射的に伝言役を買って出ているデルタさんへ怒鳴り返す。


「くそっ! こっちもやるぞ、集まれっ! いくぞっ、ピー―ッ、ピッ!」


 ダンダンダン!


「「「「ハイッ!!」」」」


 ぶわりと兵達を包む淡い光が広がっていく。沈静効果か、高揚効果を与えたのかは知らないが、こっちの兵達も雄叫びを上げていく。


 ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 単調だが勇ましいリズムの打楽器と銅鑼と共に、奴等が押し寄せて来た。来る。第二ラウンドが、戦いが始まる。


「「UOOOOOHH!!」」

 

 向こうの兵達の雄叫びが前回よりも迫力がある。大丈夫か。こっちはもつのか。


 ――――ッ!!!!!


 激突した。

 激しい剣戟と地響きが響き渡る。お互いに興奮しているのか、怒鳴り合い、叫び合いながら戦っている。大丈夫か。連中のは踊りはどんな効果なんだ。こっちは対抗できているのか。


「GAAAAAAッ!」

「OHHHHHHッ!!」


 ダンダンダン!


「「「「ハイッ!!」」」」


 気にしながらも俺はクリオ達と踏み台昇降を続ける。踊りを止める訳にはいかない。横で前線を睨んでいたデルタさんが経過を叫ぶ。


「大丈夫! なんとか持ちこたえてるよ!」

「相手の兵が受けてる魔術効果は何か予想できますか。さっきまでと、動きはどう違って見えますか!?」


 傍に控えているリーダがすかさず問い掛けた。対応策を考える為、彼女は其処に注目している。


「そうさね……さっきより勢いは確かにあるけど。いや、勢いだけか。統制取れてないね。戦意過多になってんじゃないのかい。倒れた味方を平気で乗り越えて襲い掛かって来てるよ」

「戦意向上……狂戦士化ですか!?」

「ああ……そうだね。そうかも。あれはそう言った方が合ってるかもね、何箇所か勢いに押されて崩されたところあるけど、周囲がすぐ助けてるよ」

「それならっ……前線に伝令を!!」


 戦意向上か。ならこちらに勝ち目がある。こっちのはヘイ〇ト。反射速度と思考速度の向上だ。どんなに猪みたいに突っ込んできても、冷静に判断して切り返すことができているだろう。

 リーダがさっそく護衛騎士達経由で、ヴィルダズに向こうの魔法内容と対処法の指示を伝える。護衛騎士達が散って、各所で声を張り上げている。


「「OHHHHHHッ!!」


 前方の各所で次々喚声が上がる。こちらが競り負けている箇所もあるが、やり返しているところが多いようだ。


「いける、ような気がするけど、どうかねっ。こっちと向こうじゃ勢いも人数も違う。何度も来たら、いつまで持つかわかんないよ!」


 一傭兵なのに戦況を読んでいるように話すデルタさんが頼もしい。しかし、そこへオーシャブッチの声が降ってきた。


「やるじゃねえか小僧! 偽者のくせに大したもんだ! だが本気はこれからだ! 所詮偽者は本物に敵わないってのを教えてやるぜ!」


 気になる発言に目を凝らせば、奴の下へ若い男が駆け寄ってきた。細身の男で武器は持っていなく全身タイツみたいな動きやすい格好をしている。なんだ。

 そしてオーシャブッチは――踊りながらタッチするように彼の肩を叩いた。

 

 グンッ!


 弾けたように踊り出す若い男。その踊りは今迄オーシャブッチが踊っていたものだ。オーシャブチは踊りを止め、息を整えている。ぐん、ぐんっと大きく背を沿って男は踊り続ける。


 ダン、ダン、ダン、ダン! (HOOOッ!)


(――なんだって!?)


 オーシャブッチは踊りを止めている。しかし周囲の兵達が纏った光は消えていない。やつの横では、今迄オーシャブッチが踊っていた踊りを別の男が踊っている。それはつまり――



 踊りを他人に渡して、効果を継続させている!



(嘘だろ? そんなことが出来るのか!?)


 ハッとして一緒に踏み台昇降運動をしている三人を見る。

 クリオは最初飛びついて来て接触し。二人には俺が肩を掴み、話してから踊りを始めた。そういうことか。

 俺の驚きを余所に、オーシャブッチはこちらを指差して叫んだ。それは更に俺を驚かせる内容だった。


「さあ! 第二ミュージックだ。六番 Queen of Babylon!」




 ダラッダダー、ダッタダッター! ダラッダダー、ダッタダッター! ダダダダダダッダン!


 アップテンポに楽器がかき鳴らされる。


「HOOOOーーーーツ!!」


 大きく仰け反ったオーシャブッチが、両手をひるがえしてステップを踏む。台の下から大勢の人が上がってきた。何をするかと思えば、中央に立つオーシャブッチの背後左右に立つ。うち数人はリーダと同じ様に杖をマイクみたいに持ちだしている。もしかして、いや。もしかしなくてもあれは。


『AHーッ! AHーッ HAーッ、HAーッ 女王よーっ!』


(歌いだしやがった! バックコーラスかよ? 歌まで教え込んでやがったのかあいつ!?)


 信じられない。他人に踊りを譲渡して、自分は二つ目の踊りを始めやがった。あんなのありか。あんなことできるのか。


 ダラッダダー、ダッタダッター! ダラッダダー、ダッタダッター! 


 激しいリズムに乗って、オーシャブッチがステップを踏む。新たに後ろに並んだ男達が、彼の踊りに合わせてキレのある動きを始める。うおお、あれだ。ミュージックビデオとかでやってるあのダンスだ。すげえ、全員ぴったり揃っている!


 ダラッダダッ! ダッタダッター!


『俺達の嘆きが聞こえているか! 心の叫びが届いているか!』


 コーラスだと思った連中が歌いだしやがった。音楽とコーラスとバックダンス。まるで向こうはコンサート状態だ。


「フッ、ハッ、ハッ、ハアッ!」


 その中央で主役として踊るのはオーシャブッチ。ダイナミックに背を沿って、跳ねて、動き回る。


「HOOOOッーーー!」


 曲の一小節を終ったと思われるところで、オーシャブッチの身体から新たな青い光が広がり、兵達の身体に降り注いでいく。高揚していた表情のオーシャブッチが仰け反る、キメポーズだと!


「HAAッ!」

「「UOOHHッ!!」」


 新たな光を浴びて、向こうの兵達が改めえて雄叫びを上げていく。目に見えて攻勢が強まっているのが俺にも分かる。轟く剣戟と怒声の合間から、叫び声や焦った罵声が聞こえてきた。

 押されている。こっちの兵達が勢いに押されて、各所で悲鳴があがっている。


「なんだいあの動き、おかしな動きだね……ぐにゃぐにゃ動いて無理矢理打ち合ってる……」

「無理矢理打ち合って……こちらは、かわせていないのですか?」

「ああ。こっちが避けようとしてるのに、なんか無理矢理剣がぶつかってんだよ。まるで剣同士が引き寄せ合ってるみたいで…いや、盾でかわしているのもいるね。違う、ありゃ避けれないんだ!」

「避けれない? 向こうの攻め手には必ず攻撃が当たる魔術が掛かっているとでも」

「それだよ! あれは必中の攻撃だ。勝手に腕が動いて剣が当たりに来てるんだ! おかげで今迄かわせていたのに、今は打ち合っている。マズイね、兵数はあっちが多いから、手数で負ける。どんどん囲まれるし、すぐに追い込まれるよ!」


 こっちは反射速度上昇のみ。向こうは戦意高揚と必中攻撃、そして戦力数は向こうが遥かに上。


『世界よ答えろ、今すぐに! 本物の王の戦いを!(HOOOOーッ!)』

「UOOOOOOーーッ! 」


 ザッ、ザッ、ザザザンッ!

 オーシャブッチとバックダンサー達が揃ってステップを踏む。中空を指差し、両足を揃えて一斉にターン。一回、二回、そして背面から振り返り俺達を指差して叫ぶ。


「HAWWッ!」


 オーシャブッチ達から強い光の膜みたいなものが広がり、更に兵士達の上に降り注ぐ。兵達が一斉に奮い立つ。


「UOOOOOOAーーッ! 」「UOOOOGAAAーーッ! 」「UOOOOOOーーッ!!!! 」

 

 膨れ上がった雄叫びと共に、剣戟の音が爆発的に増えた。それは敵の一斉攻撃の証。

 次から次へと後続から敵兵が襲い掛かってきた。まるで津波だ。こっちの憲兵団が、敵兵の津波に呑まれていく。


「グアアーッ!」「うわああっ!」「アアアーッ!」


 怒声が、悲鳴が上がっている。俺達の兵側からだ。各所で絶望的な叫びが上がっている。勢いが違い過ぎる。兵数が違い過ぎる。駄目だ。


「くそ、くそおおおっ!」「駄目だああっ!」「隊長! 無理です!」「畜生!、畜生め!」 

「前方が崩れたよ!」

「堪えさせろ!」「駄目だ! もたない!」「横から突っ込まして勢いを削ぐんだ!」「無理だ!」「崩れたぞ!」「やばいぞ!」


 総崩れになった。

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