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大薮新平 異世界にふしぎな踊り子として召喚され - 24.大薮新平 状況急変
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大薮新平 異世界にふしぎな踊り子として召喚され  作者: BAWさん
3章 邪神王国ドーマ 使徒大戦編
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24.大薮新平 状況急変

 大薮新平は踊ると魔法が掛かるという、ふしぎなスキルを得て異世界に召喚された。家族を守る為に母神セラルーベの復活を進めることになった新平は、使徒オーシャブッチ軍との戦いを決意する。神竜ドムドーマ対策として各地を巡って神獣を仲間を得た新平達は、新たな神獣 飛龍ルドラを仲間に誘う際、自分達の真の計画を明かした。それは第三の神、父神オーヴィスタを復活させ、母娘神に対峙させるというものだった。

 ようやく場面が戻ってきた。

 ここはレンテマリオ皇国から遥か西。ゲルドラ帝国の王都ギルドラ上空だ。

 俺達は神竜ドムドーマ対策として、ここの神獣ルドラを仲間に引き入れるべく説得。破滅しかなかった未来予知を打開する為、父神オーヴィスタの封印石を探し出したことを告げたところだ。



「――こうして俺達は父神オーヴィスタの封印石を見つけ出した。それは当然、オーヴィスタが未だ生きていることの証明になっている訳だ」

『なんと、父神が――』


 巨大な飛龍である神獣ルドラは、翼を広げたまま唸る。


「そうだ。お前達神獣は生み出された後は神々と交信する機会がない。契約した血族の人間達から話を又聞きするしかなかった。アウヴィスタから眠りについたと言われたのを、司祭達は死んだと解釈した。そして世界中の契約者達も神獣にそう説明したから、お前達神獣も一緒に騙されたんだ。

 事実は違った。封印石の存在が示しているように、未だ生きていてこっちへの接触を封じられていただけなんだ」

『……』

「このラリアはオーヴィスタが産んだ神獣だ。こいつを連れて行って、その封印石を見せて確認も取った。確かにオーヴィスタの気配だったと言っている」

『如何にも』


 鷹揚にうなずくラリアを、神獣ルドラが睨みつける。


 父神オーヴィスタの封印石を見つけ出したことによって、俺達は新しい未来視を試した。オーヴィスタの封印石を最初に壊し彼を復活させた未来だ。其処には現在と変わらない世界があった。俺と大神殿は安堵して方針を決定。第一の目標が父神オーヴィスタの復活となったのだ。


「アウヴィスタの力が弱まって、このままでは世界が壊れていく。阻止する為には神々の復活が必要で、タイミングは今しかないんだ。お前等神獣の協力が必要だ。力を貸してくれ」

『…………我に何を求むカ』

「オーヴィスタを復活するだけの神気を与えるには、神獣の数が足りない可能性が高い。セラルーベを復活させるのに、神竜ドムドーマはミルネ、ホウ、ラリア、ウルと5体分の神気を集めようとしてる。俺達はこれに火鳥レンテ、天馬トリス。そしてあんたと、力を取り戻した3体を加えて父神オーヴィスタを復活させようと考えてるんだ」

『……』


 数的にはルドラを入れなくても5体分。ドムドーマは経年で力を落とした神獣達五体から神気を集めたのに対し、こっちは体力全快に復活させた神獣6体で挑む。神獣ウルが協力してくれれば7体分になるから集める神気としては十分だろう考えている。


「ドムドーマは既に耐えられる許容量を越えて正気を失っているらしい。このまま行けばワウル共和国の神獣ウルから神気を奪った段階で暴走が始まる。それでな……」


 俺が神獣達に頼みたいのは2つ。ドムドーマから力を奪うのと、2柱の神を復活させる手伝いだ。

 母神セラルーベが神竜ドムドーマに与えたという、他の神獣から神力を奪う方法。牙にかけた術はセラルーベと会った際に見せられたので、俺も新しい踊りを生み出して皆に付与ができるだろう。それを使ってドムドーマから神気を奪って暴走を止めさせるのだ。弱くなった後はレンテを含めた神獣達全員でボコって従わせる。

 神竜ドムドーマが止まれば、ドーマ王国がワウル共和国に攻め入る決め手がなくなる。そこで大神殿の名を以ってドーマ軍にも介入、戦争を止めさせるのだ。


 次は吸収した分と、神獣達の自前の神気を以って父神オーヴィスタを復活させる。オーヴィスタの封印石は結局五箇所もあった。どうも大陸外周に沿って、魔法陣を描くような要所に設置されていたようだ。それを一箇所ずつ回って神気を奉げるなんて悠長なことはやっていられない。幸い神獣達は分身が出来る。分身の一体が力を奪い、現地に待機させた分身から壊した封印石奥へ神気を注ぐ。それなら吸い取った直後に、オーヴィスタの復活が果たせる。神獣達の体内に神気も溜まらず暴走させる心配もない。もし神気が足りなかったり神獣達がへばったら俺が【癒す女神のムスタッシュダンス】で回復させてやる。そこまでやれば復活するだろう。


 復活したオーヴィスタに会うには、大神殿奥の神臨の間にある扉から尋ねに行く必要がある。でも俺は瞬間移動でそこにも飛べる。月一回だけ開くという神扉の開く時期も近い。上手くタイミングが合えば、すぐに会って交渉が出来る筈だ。その際は神への謁見資格をもつ大司祭ソゴスも同行してくれることになっている。


 話が無事済めば今度はセラルーベの復活だ。神獣達の神気が減っていたら再び【癒す女神のムスタッシュダンス】で全快させて、神殿シ・ペンへ瞬間移動、セラルーベを復活させる。

 後はオーヴィスタから母娘神と話をつけてもらう。無事済めば親子三者による世界の統治が始まり、俺はセラルーベと交わした契約により日本への帰還が果たされるだろう。

 これが俺達の立てた『真の計画』の全容だった。



 創生神オーヴィスタとの話し合い次第でどう転ぶか分からない雑な案だが、どっちに肩入れしても破滅になる母娘神に頼るよりは遥かにマシだ。なにより、この条件下でのみ【預言するナマモノ未来視】の未来視で、平穏な世界が確認できている。神々が増えるという利点からも、俺達と大神殿に他の選択肢はない。

 幸い創生神オーヴィスタと面識がある古神獣は三体居る。牛の神獣ミルネと、亀の神獣ホウ、そして獅子神獣ラリアだ。彼等はオーヴィスタが生みだした神獣だった。

 ラリア曰く『至尊にて雄大なる我が父』という表現には首をかしげるしかないが、ことなかれで笑ってばかりいる牛神獣ミルネと、おっとりした性格の亀神獣ホウによれば『おおらかな性格』の神様らしい。ならばやはり、未来を託すのは父神一択だろう。


「――だから。お前にも神々の復活に手を貸して欲しいんだ」

『ム……』


 ルドラは唸ったまま黙り込んだ。反応が鈍いな。どうした。自分の親神、セラルーベの復活も掛かっているから簡単に頷くと思ったんだが、読み間違っただろうか。

 先に焦れたのは俺でもラリアでもなく、火鳥レンテだった。


『なにを惑うかヨ。即協力するが宜しヨ!』

『……』


 しかしルドラは唸ったまま喋らない。リーダに良いところを見せて褒めてもらいたがっているレンテが、急かすのだが黙ったままだ。


「何が気に入らないんだ。言ってくれないか」

『……此度の計に、彼の若輩駄馬を含めているナ』

「天馬王トリスか。ああ、連れてきたら喧嘩が始まりそうだから、ここにはいないけどな」

『何故、あの様な奴を含めるカ!』

「――はい?」

『我にあの駄馬と同胞に為れと云うカ!』


 飛龍ルドラは巨大な翼を広げ、殺気を撒き散らしながら、しょうもないことを言い出した。

 天馬王トリスはこいつを酷く嫌っていたが、こっちの方も同じだったようだ。戦争している国同士の神獣じゃ仲が悪いのは当たり前かもしれないが、まさかこれ程だとは。


『なんと云う些事に拘るかヨ!』


 火鳥レンテが叫んだ言葉に、珍しく俺もうなずく。


『主等には判るまい! 天空の覇者たる我の領域を汚す彼奴の卑賤さヲ! 奴は天空を冒涜する存在ゾ!』


 しかしレンテの威圧的な怒声にも怯まず、ルドラは激昂して怒鳴り返してくる。本当に凄く天馬王トリスが嫌いらしい。どうしたもんかな。


(少しお話を聞いて心のうちを吐き出して頂き、落ち着かれてから改めて説得した方が良いかもしれません……)


 リーダが聞き分けの悪い呆け爺さんを説得するみたいな方法を薦めてくる。だが確かに有効か。こいつらは基本、会話が出来る相手に飢えている。

 愚痴聞きかぁ……。リーダと顔を見合わせ肩を落とす。

 しかし、そのリーダの様子を見てレンテがキレた。


『――汝、父母神になんと申し開くつもりカッ!!!』

『『――ッ!』』


 めっちゃ威圧的な怒声が響く。

 言われた飛龍ルドラだけじゃなく、俺が乗っていた獅子神獣ラリアまで一瞬ビクリと飛び上がったくらいだ。流石第一位の神獣。怒らせたら迫力が半端ない。俺も金玉が萎んでいる。びくついたルドラがちょっと可愛かった。


『斯様な些事に拘り事至らぬ場合、汝は神々になんと申し開くつもりかと聞いて居るヨ!』

『グ…………』


 火鳥レンテは高圧的に責め立てる。いや、まずくないか。こんな言い負かすような形で仲間に引き入れても上手くいかない気がするぞ。

 仕方なく俺は取り繕うように理由を聞いた。


「ええっと、聞いて良いか。人間達が戦っている敵国の神獣だからってのもあるんだけど、理由はそれだけじゃないんだろ。なんでそんなにあいつが嫌いなの? いや正直俺もあんまりあいつは好きじゃないんだけどさ。すっげえ変態だし。うん、変態だよな」


 正直に言えば、神獣共全員変態ばっかりで、みんな嫌なんだけどさ。

 たしたし、と足踏みして合図。おいラリア、手伝え。付いて来い。


『……ぬ、確かにあ奴は若輩の分際で、分際を弁えぬモノよナ』

『おお、オウヨッ! そうでアル! 彼奴は分を弁えぬ若輩ゾ!』


 俺とラリアの同意を貰えて、ルドラが助かったとばかりに叫ぶ。こいつもレンテが怖かったようだ。


『空を駆るものとして奴の有り様は許せぬゾ!』

「ほー。そうか」

『空は駆けるものゾ!』

「おお」

『天空は雄の領域ゾ!』

「お、おう」

『断じて人種の雌と乳繰り在う場には、在らズ!』

「…………ちなみに、どうあるべきだと」

『天は羽ばたき、舞い、競り合うものであるゾ!』

「…………」


 固まっている俺に、リーダがそっと囁いてくる。


(このゲルドラでは、騎士達が飛龍に乗り山間部を縫って飛び交う競技が、国技だと聞いたことがあります……)


 なるほど。イニシャル(ルドラ)さんだったのか。空を男の領分として駆け巡るのを至上とするワイバーン達と、処女娘を乗せて戯れながら駆けることを喜びとする天馬達。

 そりゃあ話が合わんだろう。空に対する価値観が違い過ぎる。もしかしてずっと戦争している原因ってそれなのか?


『なんと下らぬ些事かヨ』

『否、仮令火鳥で在れど、我が天の在り様に口出すを認めズ!』


 吐き捨てた火鳥レンテに意地を張る飛龍ルドラ。


『ウム、飛翔の必要在らズ、稚児は自然体を愛でる物でアル。幼ければより良いノダ!』


 余計なことを主張するなよロリコン神獣。話が迷走するじゃねえか。

 足場になっているラリアの頭を蹴り飛ばす。


「……では麗しきレンテさま、天の覇者を問い質す為にも創造神オーヴィスタ様の御復活は成さねばなりませんね。もちろん一番優美なる覇者は既に定まっているのでしょうが」

『ヌ……ホーッ、ホホホホッ! そうで在るのヨ、当然ヨノ! では飛竜よ、その些事、神々に顕現あそばし直言にて問うが宣しヨ!』

『ム……』


 リーダが怒鳴りつけようしたレンテの気勢を制し、上手く話を誘導した。


「そ、そうだな。それに神々が復活した時に、天馬王トリスだけがその場にいるのは面白くないだろ。お前も居るべきじゃないか」

『ムムゥ……』

「見ればお前、大分体力を減らしてるよな。奴は俺が踊って体力を全盛期並に回復させたぞ。このままだと差が付くぞ。仲間になればお前も回復してやる。どうだ」

『全盛期……?』

「おうよ。見ろよ後ろのミルネ達を。こいつ等ドムドーマに力奪われて玉にまで戻ってたのを俺が全快させたんだぞ。天馬王トリスも協力して貰う為に全快させた。お前だけそのままでいるつもりか」

『ムゥ……』


 結局これが決め手になった。散々ごねた末に、ようやくルドラは同行を了解した。



 しかし



『グワハッハハハハハ!!! ウワハハハハッ!』

『ヌオオオオッ!』

『フホホホホホッ!』


 【癒す女神のムスタッシュダンス】で力を回復させた途端、全力を出して飛べるのが嬉しいのか、興奮して王都上空を飛び回りだす飛龍ルドラ。感化されて獅子神獣ラリアも追い掛ける。気がつけば神獣同士で競争が始まった。次いでルドラは集まってきたこの国のワイバーン達にまで号令を掛け、山岳レースを始めるとか言い出す。怒った火鳥レンテがルドラをぶっとばして、引き摺り戻して黙らせた。そういうのは分体作って、俺達が帰った後でやってくれ。

 とりあえず、これで飛竜ルドラを仲間にすることには成功した。さて。

 ふと眼下の王都街を見る。


 ……王都の混乱は収束したようだが、住民達がそこら中で集まり、空を見上げて大騒ぎになっていた。


「……」


 ひや汗が止まらない。


「兄様……やはり先方の王宮へ出向き、今回の件について何らかの釈明が必要なのでは……」

「駄目! そんな時間ないの。用は済んだ。もう帰る、帰るぞ!」


 俺達はルドラの分体を仲間に引き入れ、大神殿へと逃げ帰った。後で大神殿から現地のヴィスタ神殿経由で説明してもらうとしよう。


 

          ◇



「いよっし!」

「っとと」


天翔集団豚走あまかけるしゅうだんとんそう】の集団瞬間移動で、大神殿内に与えられている部屋に戻って来た。到着した瞬間少し足元がおぼつかなくなるので、着地にはこつが必要なのだがリーダも随分慣れてきた。

 壁際でずっと待機していた衛兵から連絡を受ける。赤司祭達から緊急の要件で会議室に来て欲しいとの事。……なんか嫌な予感がする。

 案内に連れられて、そのまま会議室へ直行。そこでは赤司祭二人が暗い顔で待っていた。


「おお、使徒殿。お待ちしておりましたぞ……っ!」


 喜色で立ち上がった司祭達がぎょっとして固まる。俺達の後ろから火鳥レンテと四体もの神獣達が次々部屋に入ってくるからだ。正直出番まで一室に閉じ込めておきたいのだが、レンテがリーダに付いて来るので、必然と全員連れ回す事態になっている。気分はブレーメンの音楽隊である。いっそ楽器でも持たせてみようか。いつまでたっても一音も合わない気がするけど。

 俺が到着したことを知らせに衛兵が走って行った。上司を呼ぶのだろう。しかし待っている時間が勿体無い。椅子に座りながら聞く。


「すいません。時間がないんで。……先に要件を聞いてもいいですか」


 俺の催促に赤司祭達は顔を見合わせ躊躇していたが、火鳥レンテがばっさばっさと羽ばたきしたのを苛立っているとでも思ったのか、びびって話してくれた。単に暇だったから羽ばたきしただけだと思うが、この際言わないでおこう。


「ワウル共和国の国境、戦場予定地近郊に控えている者より先程連絡が入りました」


 現在ドーマ王国の軍勢と神竜ドムドーマが、ワウル共和国に侵攻しようと進んでいる。俺は戦場と開戦日時をセラルーベから聞いているので、あらじかじめ現地に連絡員を送って状況を監視して貰っていたのだ。連絡用の宝珠により遠隔地からリアルタイムで報告が得られるので非常に助かっている。

 セラルーベから教えてもらった話では、これから六日後に開戦となる筈だ。俺達はそれまでに軍編制を終えて現地に飛び、開戦を阻止しなくてならない。今日迄神獣集めに走り回っていたので、殆ど軍編制に関知せずヴィルダズ達に丸投げをしていた。ちょくちょく戻った際にやる事を説明はしているが、はかどっていないと聞いている。急がなくてはならない。

 また、オーシャブッチは踊りを他人に譲渡して続きを躍らせることにより、二種類もの踊りを実行した。俺達も対抗する為に複数の踊りを駆使する必要がある。その為、多くの人達に複数の踊りを覚えてもらうよう要請している。講師役に爆乳傭兵デルタさんと弟トッポを当てたが二人も苦労しているようだった。


 とりあえず、日程的にギリギリではあるが、なんとか交戦前に現地に飛べるんじゃないかと俺は今のところ踏んでいた。

 しかし、その予想は赤司祭の返事で覆された。


「ドーマ軍推定五万六千が近隣まで到達。明日にでも国境を越えワウル共和国軍と接触する可能性ありとのことです」

「はいいっ!?」


 思わず大声をあげてしまった。一緒にいる神獣達も一斉に騒いだので、キュエーとかグオオとかブモーとか奇声が混じる。おかげで緊迫感が失せる。


「そんな馬鹿な! 開戦まであと六日ある筈でしょ!」

「はあ、確かに使徒殿からはそう伺っておりましたが……」


 俺は確かにセラルーベから聞いた。その日時は六日後の筈だ。奴が嘘を教えたのか。そんな。連中は嘘をつかない筈だ。

 リーダが袖を引いてくる。


「兄様、思い出してください。慈母神セラルーベ様と、どのような会話をされたのですか」

「え。あー…とだな。映像を見せられたんだ。ワウル共和国が陣を敷いてて中央にでかくなった神獣ウルが構えてるんだ。そこにドムドーマが巨体で突っ込んで潰しちまうんだ。神獣はぺしゃんこで光の粒子みたいになってるし、兵達もみんな巻き添えでぺしゃんこの地獄絵図だ。そこにドーマ軍が突っ込ん来て、逃げ惑うワウルの兵達を皆殺しにしていくんだよ。俺が慌てて『これっていつ起きるんだ』って聞いたら、奴が日にちを答えたんだ。それが後六日後。……なんでだ。聞き間違えたのか」

「……いえ、それはおそらく神獣同士がぶつかった日なのです。おそらく軍同士の開戦は、それより早く始まっていたのではないでしょうか」

「あっ……」


 なんてこった。俺の早とちりだ。ちゃんと軍同士が最初に交戦し始めた時を聞かなきゃいけなかったんだ。奴は神獣しか見てないから、戦争が起きた日なんか気にしていない。映像を見せられて、焦って俺が聞き方を間違えたんだ。


 どうする。集まった軍を引き連れて直ぐに行けるか。無理だろ。未だろくに準備も出来ていない筈だ。じゃあ俺達だけでも行くか。それも駄目だ。今俺だけが行ったらこっちの軍を放り出す可能性が高い。

 俺は自分が目先に振り回されることを知っている。一度現地に飛んだら、もう状況に呑まれるだろう。こっちに戻ってこれないかもしれない。神獣達にも未だ神気を奪う力を与えていないし、今連れて行ったら逆に餌になっちまう。ドムドーマの暴走が始まってしまう。

 どうすりゃ良い。無視すんのか。開戦しちまうぞ。俺達が行くまで何人死ぬ。何百人死ぬんだ。俺が、俺にしか戦争を止められないのに。俺がっ……。


「兄様、落ち着いてください。未だ開戦した訳ではないのです。皆さんと話し合う時間はあります」


 知らず頭を掻きむしっていた。リーダの言葉にうなずいて深呼吸を繰り返す。その際中に金司祭ソルスティスが、他の赤司祭達を引き連れて会議室にやって来た。



          ◇



「そうですか……」

「すいません。俺の勘違いで、皆さんに嘘を伝えていたのかもしれません」

「……いえ、それは今話しても詮無きことでしょう」


 謝った俺の言葉を金司祭ソルスティスはこともなげに流す。


「しかし、思った以上に動きが早かったですな」

「ええ……」


 司祭達の顔に切迫感はない。そうか。開戦を止めたいというのは俺が言い出した話であって、連中の優先はオーシャブッチ軍の討伐だ。彼等大神殿は国同士の争いに基本的に介入しない。キリがないから遺憾の意を示すだけだ。どっかの国みたいである。


「由々しき事態ではありますが、これは事態を慎重に見極めなくてはなりませぬな」

「じゃあ、それまでの戦いで起きる犠牲は見殺しにすると?」

「……いえ、そういう訳ではありませぬぞ」

「ええ。注視すべき事態ですぞ」


 思わず嫌味をぶつけてしまい、ぎょっとされてしまった。リーダに落ち着いてと軽く太腿を叩かれる。駄目だ駄目だ。俺も気が立っている。

 そこへ遅れて大司祭ソゴス、軍編制を行なっている万司長ブジェルとヴィルダズが入って来た。ヴィルダズを総指揮官に当てたので、ブジェルには総指揮官補佐に就いてもらっている。彼らにも改めて現状が報告され、軍編制の現状報告が求められた。ブジェルが答える。


「書類上の軍編制と滞在場所の確保は、ほぼ終えております。ただし編制が決まったのみで、未だ皇都に到着していない部隊もあり、行軍の演習さえ揃っていない状態ですが」


 オーシャブッチが兵を徴集していったので、現在の皇都には兵が残っていない。大神殿は俺の名で皇国内に公募をかけた。それにより各領から兵達が集まって来ている。俺が立ち寄った都市ワウーンやビンマージからは多くの兵が向かっているらしい。俺が病気を治したり、失し物を捜索したりと手伝ったので、恩義を感じたくれたらしいとか。その噂を聞いた近隣領からもぞくぞく兵が集まり、向かって来てるという。道中あちこちの領で人助けをした成果がここで出た訳だ。皆の薦めを聞いて、道中手助けをしておいて良かった。

 しかし、こんな状態ではとても現地に行けない。兵士が揃ってさえいない。

 ヴィルダズに顔を向けると、首を振っている。おっさんは俺の思考をだいたい読めるから話が早い。


「音楽隊や舞踏隊も大枠が決ったくらいだ。曲や振り付け練習も始まったばかり。今連れて行っても使いもんにはならないだろう…ですな」


 実は兵と同時に吟遊詩人や本職の踊り子達も各地から募集していた。オーシャブッチ達の楽隊と複数踊りに対抗する為に、こちらも人数を用意しなくてはならないからだ。現状なんとか人数を揃えはしたが、肝心の俺が神獣集めに出ていたから、全然曲と踊りを練習が進んでいない。


 俺からは最低限の神獣集めが終ったことを報告。これから神竜ドムドーマの力を奪う術を各自の牙に付与して手順を確認。段取りを決めていく予定だ。


 一通り報告し合った後で、ドーマ軍の動きに対して方針を話し合う。だが準備が進んでいない以上、出来ることは少ない。

 最終的には大司祭ソゴスから軍を動かすのは時期尚早と結論を下され、ヴィルダズズ達には編制準備、俺には踊りと楽曲練習を急ぐよう求められる……そうか。やっぱりそうなるよな。


(くそ……っ)


 拳を握り締める。

 脳裏に敗戦国オラリアの廃村が浮かぶ。村の入り口には数百の頭蓋骨が積まれていて、それを見つけた俺達は蹲って吐いた。あんな光景をもう引き起こす訳にはいかない。今俺が飛び出したら失敗する可能性が高い。今度は話の規模が大きいんだ。絶対失敗する訳にはいかない。

 俺は仕方なく準備を進めることを了解した。

 本音としては国を廻ってもう一、二体神獣を確保。万全を期したかったのだが仕方ない。

 俺達は準備を進める為に会議室から駆け出した。




 翌日。神獣激突まであと五日。また事態が動く。


「国境手前迄進軍していたドーマ王国軍に神竜ドムドーマが落下。多数の死傷者が発生し、全軍が大混乱なっているようです」

「「…………」」


 なんと神竜ドムドーマが自国の軍に攻撃をしたというのだ。いや攻撃というのはおかしいか。

 集まった全員が呆気に取られて、しばらく言葉を失っている。


「使徒殿、これは……」

「え……たぶん……神竜ドムドーマは取り込んだ力を抑えきれず、既に正気を失っている筈なんです。王家の連中はそれでもなんとか誘導してワウル共和国との国境まで引っ張ってきたんでしょうけど、制御に失敗して被害を受けた……ということじゃないかと思うんですが……」


 報告では上空に浮遊していた巨大な神獣は、上下左右と大きく迷走、移動しながらもなんとか昨日まで従軍していたという。それが突然地上に落下。自国のドーマ王国軍を押し潰した。ドーマ王国軍は現在進軍を中断して大騒ぎになっているらしい。


「こう申してはなんですが、開戦が遅れたことは『朗報』と言って良いのかもしれませんな」


 確かにそうだ。ドーマ軍とはいえ人が大勢死んだのは悲しいことだが、これで連中が止まってくれれば開戦が遅れる。引き返してくれれば万々歳だ。だが。


「くそ……なんで俺は全部聞いておかなかったんだ」


 自分に腹が立つ。俺は神セラルーベからこんなことが起きるとは聞いてなかった。聞き逃したんだ。あの時、きちんとどういう経緯で戦争が起こるのかを聞いていたら、ここで皆揃って事態に振り回されるなんて、間抜けを晒すことはなかったろうに。

 このままいくとどうなる。ドーマ軍が撤退したら戦争はなくなるのか。神獣同士の激突はなくなるのか。

 俺に疑問にリーダが答える。


「いえ、途中経過はあれど、最終的には指定日に神獣同士が争うことになるのは間違いないのでしょう。神の指摘は必ず当たるのでしょうから。問題はそれまでに軍同士の開戦が避けられるかどうかですよね」

「そっか、そうだな」


 俺が止めないといけないのはソレだ。


「ドーマ軍が撤収した後、神竜ドムドーマだけが暴走を続ける状態ならば、我らの介入も格段に楽になるでしょうな」

「そうですな。対策するのが神竜ドムドーマだけでしたら、使徒殿と参集された神獣様方のみで解決に当たられるでしょうし。我が軍は偽使徒軍へ注力することができます」

「しかしまだ情勢は流動的です。我々は目先の動向に振り回されず、当初の計画通りにて目的を果たすべく軍備を進めるべきでしょう」


 たしかにそうだ。一番焦っているのは俺だ。そして準備が遅れている一番の原因も俺なのだ。


(急がねえと……)


 仕方なく俺はまた準備に戻った。




 神獣激突まであと四日。新たな情報が入る。


「神竜ドムドーマ墜落によりドーマ王国本陣が壊滅、国王陛下以下多くの重臣が亡くなったと判明致しました」

「「…………」」


 再び皆で言葉を失う。

 ドーマ王家壊滅。

 おそらく各国へと侵攻したドーマ王家の首魁。近年諸国を騒乱に巻き込んだ悪の元凶。ひいては俺がこの世界に召喚される元凶の一因たる連中が、勝手に全滅したという。


「となりますと……これは、どうなるのでしょうかな」

「これにて侵攻は中断。ドーマ王国軍が撤退する可能性が大きくなったのではないでしょうか」

「「おお……」」

「戦争は回避された……ということですかな」


 戸惑い気味に交わされる会話は、不謹慎ながらも喜色に溢れている。俺達の目標は戦争回避、ドムドーマ捕縛、神々の復活だ。それ等を無事果たした後、一番の懸念事項となっていたのはドーマ王家とその軍への対応だった。基本的に各国の内政主権に干渉しない大神殿としては、彼等への対応をどうするかは悩ましい問題だったのだ。その一番煩い連中が、勝手に全滅してくれた。喜ぶ気持ちは分かる。俺も気持ちの行き場がなくなって、文字通り宙に浮かせたままの拳をリーダに掴んで降ろされたところだ。


 これは助かった……のか。

 戦争は起こらず、俺達もわざわざ介入しなくて、良くなったということなのか。だったら、凄くありがたいんだが。


「……」


 別に俺は戦いたい訳じゃない。殺し合いは真っ平だ。ワウル共和国軍が壊滅してオラリア王国みたいに荒廃するのを防ぎたいだけなのだ。


「まだ気を抜くのは早いですが。少しだけ気が楽になりましたね」

「そう……か。そうだな……」


 リーダもこう言ってくれた。ずっと焦っている俺を気遣っているのだろう。

 そう言われると、確かに少し肩の荷が降りた気がする。司祭達の表情も不謹慎ながらも明るい。


 連絡員へは神獣の動向が急変したら即座に連絡を貰えるよう伝え、その日も解散となった。




 

 神獣激突まであと三日。事態はまた急変する。


「ハヌマーン王国の使徒一軍が行軍速度を上げ国境を横断。ドーマ軍へ迫っているとのことです」

「はいいっ!?」

「なんと」「馬鹿な」「そうきたか」


 司祭達の一部が腰を浮かして動揺を表す。


「内通者より情報が入りました。どうも彼等は混乱に陥っているドーマ軍へ攻め込むつもりのようです」

「なんですと!」「なんということを」「早計な……」


 馬鹿な。何でわざわざ戦争しに行くんだ。あいつ等の目的は神竜ドムドーマの封印だろ。ドーマ王国軍がいなくなれば、それだけドムドーマの封印が簡単になるんだぞ。わざわざ戦いに行く必要なんかないだろ。奴等がドムドーマを連れて帰るとでも思っているのか。


 俺と同じ疑問をもった司祭達が、次々と報告者に疑問をぶつける。大神殿における最高権力者達の詰問にびびりながらも報告者は答えていく。

 その回答をまとめると、どうやら代表者である使徒、オーシャブッチと軍の一部は『ドーマ王国撃破』という功績に眼がくらんだらしかった。


 ドーマ王国軍は現在首脳部が崩壊し混乱している。攻めるならば好機なのである。

 ここで彼らを討てば、オーシャブッチ軍は各国に恐れられていた『ドーマ王国の暴走を止めた』という名声を得られるのだ。本来の目的は神獣の封印だったとしても、ドーマ軍を敗北に追い込んで宣言を挙げれば功績を得られる。その名声が近隣諸国へ及ぼす影響は計り知れない。


「火事場泥棒かよ……」


 神竜ドムドーマを封印しただけでは、事情を知っている限られた連中からしか評価を得られない。しかしあのドーマ軍を敗りその侵攻を止めたとなれば、各国の民衆から絶大な評価を受ける。オーシャブッチの奴が望んでいた『英雄』の名声が手に入るのだ。


「あのおっさん……目先の欲に飛びつきやがったのか」


 つくづく迷惑なおっさんだった。


「どうされますか使徒殿」

「……」


 奴に勝手をされたら、こっちの計画は台無しだ。

 なにより未来予知の映像で観たように、奴が神竜ドムドーマを封印したら、神アウヴィスタがドーマ王国周辺の維持を停止。大地の崩壊が始まるのだ。最悪封印直後に崩壊が始まる。そうなればもう止められない。未来視で見たように近隣諸国、この大神殿まで壊滅する。


「使徒殿」


 昨日までとは一転して、司祭達はお前早く行って解決してこいという雰囲気になっている。

 俺は万司長ブジェルとヴィルダズに顔を向けた。二人の表情は未だ硬い。


「連絡を受けている最後の兵団が本日合流致しました。即時編制に組み入れますが、今日明日では使い物にならんでしょう」

「できれば開戦のギリギリまで準備は進めたいところですな。このままじゃ新参者達が足を引っ張って、全軍の動きに悪影響を及ぼしかねない」


 慣れてきたのか、今迄萎縮していたヴィルダズも、堂々とブジェルと共に答えている。息も合ってきているようだ。あの人のことだ。一緒に軍編制をしているうちに仲良くなったのだろう。


 そして、確かに俺から見ても軍の準備は進んでいない。一番上手くいかないのが踊りの練習だ。即席で集めた吟遊詩人や踊り子達を、日本のダンスチームみたいに揃って踊らせるのは流石に無理があった。全然揃わない。チーム分けして実践したりして、やる事と効果だけは理解して貰ったが、足並みが揃わないので効果範囲が狭い。これを本番でぶつけるには不安がある。

 俺は人への説明が上手くないし、補佐してくれる傭兵デルタさんとトッポも戸惑い気味だ。リーダは火鳥レンテや神獣達が勝手に動かないように離れてお守りをしているので手伝えない。でも事態はもう危うい状況になっている。

 頭を抱えていると、リーダが袖を引いて来たので発言させる。


「現状、憂慮するべきはオーシャブッチ軍の交戦ではなく、神竜ドムドーマが彼等の射程圏にいつ入るかです。神竜は今、何処におられるのでしょうか?」

「なるほど、そうですな」

「あいつ何処にいんの?」


 神竜ドムドーマは一時遥か上空に上がって立ち去ったかと思えたが、再度降下した。昨日はドーマ軍西二キロの平原を転がっていたらしいが、今日の段階では居場所が確認できていない。


「監視を増やし、すぐにでも確認すべきですな」

「ええ」


 確かに俺達が優先して対応すべきなのは、オーシャブッチ軍じゃなくドムドーマだ。奴が下手にオーシャブッチ軍に向かったら問題だ。嬉々としてオーシャブッチは封印に走るだろうから阻止しなくてはならない。だが、たぶんそうはならないだろう。神セラルーベが予知で神獣同士の対峙を明かしている以上、ドムドーマは三日後神獣ウルに突撃するまでは無事な筈だ。俺達は監視しているだけで未だ何も介入していないから、神の視た未来はそう変わっていないだろう。


 聞けばドーマ軍の動きも鈍い。オーシャブッチ軍の接近には気付いたようだが、迎撃に向かう様子も見られないとのことで、国境前で待機したままだ。ならまだ時間はある。最悪オーシャブッチ達との交戦を放置しても構わない。俺が避けたいのはワウル共和国の崩壊で、好きで攻め込んでいるドーマ軍と、追いかけてるオーシャブッチ軍じゃないのだ。対峙して睨み合ってくれるならありがたいくらいだ。


「だけど、もう動いて準備しておくべきだとは思います。今晩中に神獣達を連れて、オーヴィスタの封印石を再封印してきます。ついでにいつでも封印解除できるように神獣達の分体も置いてくるつもりです」


 俺の決断を早いと責める声は上がらなかった。リーダが補足を促してくる。


「封印石が変化することにより、神セラルーベが気付いて事態が急変する可能性もあります。できれば監視は多くし、戦地だけではなく大陸各国から細目に状況を収集していただけませんでしょうか」


 皆が賛同してくれた。


 深いため息をついた俺に、そっとリーダが小さな手を重ねてきた。苦笑いして礼を言う。


 緊張感が高まっている。

 戦いが近いので焦っているんだ。こんなことは初めてだ。

 俺は今まで迫った事態を、行き当たりばったりで踊りで対処してきた。こんなに時間を掛けて攻め込む側として動くのは初めてなのだ。息苦しい。しかも自分だけじゃなく大軍を率いての戦いだ。この戦いは大神殿が絡んで、大規模な喧伝も兼ねているから絶対に負ける訳にはいかない。しかも神々の復活まで掛かっている。プレッシャーが半端ない。正直、夜もあまり眠れていない。毎日夜中に起き出してはリーダと話し込んでるくらいなのだ。


(ふうぅー……)


 それももうすぐ終わる。あと少しの我慢だ。




 翌日朝、神獣激突まで二日。急報により朝一番で招集が掛かった。


「神竜ドムドーマがワウル共和国軍へ急進。吊られる形でドーマ王国軍の半数が追随! 午後にはワウル共和国軍と交戦域に入ります!」

「これは……予言通りですかな」

「本日中に接敵、明日には神竜ドムドーマが神獣ウルと激突するのではないでしょうか」

「何故ドーマ軍も追随しているのだ、王家の首脳部は居ないのであろう」

「一部の将兵による独断ではないでしょうか。神竜ドムドーマが神獣ワウル撃破と同時に共和国軍側に損害を与えば、それは彼等にとってまたとない好機です。少ない兵でも勝算はあると見込んだのではないでしょうか」

「強引に攻め込んで戦果をもぎ取ろうというのか」


 オーシャブッチ軍と同じように、ドーマ軍にも欲に目がくらんで暴走している連中がいるということなのだろう。王家が壊滅。戦功が目の前にあるとなれば、野心のある連中が活気づくのは道理だ。ドーマ軍は長年各国を攻め滅ぼして暴虐の限りを尽くしている軍である。その手の人材には事欠かないだろうという話も出た。

 こうやって話としては聞けば分かる。確かに分かるが。


「畜生! なんでそんなに戦争が好きなんだよ!」


 どいつもこいつも、なんでそんなに殺し合いをしたがる。なにが楽しいんだ。納得がいかねえ。

 もう待てない。最低限の準備は終えた筈だ。俺達が介入することにより歴史が変わってドムドーマの動きが早まるかもしれないが我慢できない。戦争を止めるのが先だ。

 指揮官二人を見る。万司長ブジェルは硬い表情のままだが、ヴィルダズは仕方ねえなあという風にため息をつく。よし、出発可能と受け取ったぞ。

 俺は机を叩いて叫ぶ。


「今から出る! まずドーマ王国とワウル共和国の戦いを止める!」



 次回からやっとバトルが始まります。

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