26.門の外へ
「他の素材探しがてら、門の外出てみるか?進化したのが2人になったんだし、多少敵が強くてもなんとかなると思うけど。」
「そうですね。この骨の中から選ぶと、間違いなく可愛くなくなりそうです。」
「いうねえキキョウちゃん。今はマミーだもんね。
そりゃ早く違うのになりたいか。」
「そりゃ女子はみんなそうだよ!どうしてこうなった…って思ったもんチュートリアルのとき!」
「だろうな…」
「私もそうしたいわね。行きましょうか。」
「俺に乗っていくか?」
「おっ、いいなそれ。俺は乗れないが。」
霊体だからな。
「私は走れるからいいよ。コウも足速いし、レナとキキョウは乗っけてもらったら?」
「えー僕も乗りたいよー」
だよな。俺もだ。
「また今度な。」
タカアキが四足歩行になった。二足歩行の時は人間の体にライオンの毛皮を被せたような姿なのだが、四足歩行時は完全なライオンに変身するようだ。
そうしてみんなで全速力で門まで行ったのだが所要時間なんと30分強。正直移動の遅さはかなり参っていたので、思いっきりスピードを出せてすっきりした。
「これいいね!」
「人獅子は絶対パーティーに1人いた方がいいよ!」
「爽快でしたね。」
「本当に。まさか移動がこんなに楽しくなるなんて。」
さて、門を開けましょうかね。
「行くよー!せーのっ!」
みんなで協力して押す。思ったより簡単に開いた。
扉の向こうは緑で溢れていた。
これは錬金素材が沢山ありそうだ。
「イェーイ!森だー!」
よほど嬉しかったのか、ナツキが森に向かって走り出した。何が潜んでいるかわからない森において、致命的と言える行動だ!
「ちょっと!危ないわよ!」
遅かった。
前脚が鎌になっている緑色の蜘蛛。
木の枝の上から糸で釣り下がり、ナツキの首を刈ろうとしていた。
〈リップスパイダーLv.9〉消音
「ナツキ!」
「え?」
「ダメだ、間に合わないよ!」
俺を含め、パーティーメンバー全員が、ナツキの死を幻視した。
ある人物を除いて。
『ハウリング!』
ガアアアァァァァァァッッッッッ!!!!
タカアキの咆哮で、蜘蛛が怯んだのがわかった。
「タカアキくんナイス!でもさっきの咆哮でモンスターが集まってくるかもしれない!このまま戦うけど、不意を打たれないように!特に木の上には気をつける事!」
「りょうかい。ボス。」
冗談交じりに返しておく。
こういうセリフ一回言ってみたかった。
そして予想通り、識別にガンガン引っかかる蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛!
気持ち悪っ!
『リザーブ・ウインドソード!』
『プロヴォケイション!』
『首刈り!』
『虎哮拳!』
『シャドウバンデージ!』
みんな次々とスキルを発動する中、レナが、初めて聞くスキルを使った。
『鋭身弱心』
その瞬間に感じた喪失感と、その代わりに力が湧き上がってくる感覚。
「パーティー全員の物理攻撃力を上げ、魔法防御力を下げる〈戦術〉スキルよ!この森ではあまり派手な魔法は使わない方がいいから、今回は物理攻撃主体でいきましょう!」
後で聞いたのだが、〈戦術〉とは【軍師】の魂4つ目で獲得したSSのこと。
詠唱無しでパーティー全体に同じバフとデバフをかけるものらしい。
一度に全員にかけられるのは付与魔法を一人一人にかけるよりずっと速いという利点があるが、1種類しかかけられないため、
今の俺のように、恩恵が薄いどころかデバフのみが機能しているようなメンバーも出てくるから使いどころが難しいらしい。
「この蜘蛛、攻撃は強力だけど脆い!シャドウバンデージが効いているうちに仕留めるぞ!」
タカアキが吼える。なるほど。
『コピー!』『リリース!』
剣を武器として意識して振り回したのは久しぶりな気がする。いつも投げるような感覚で使ってたからな。
剣術なんてわからないのでとにかく滅多斬りにして正面の蜘蛛を倒す。
それと同時にウインドソードは消えた。
斬りまくればウインドソード1回につき1体蜘蛛が倒せるとわかったので、どんどん仕掛けていく。
他のメンバーも順調に倒して行っているようだ。
骨や鎧と闘ってきたメンバーなのだ。蜘蛛の身体なんて豆腐並に柔らかく感じるのではなかろうか。
特にタカアキは1番討伐数が多い気がする。
爪で相手を切り裂いて、いとも簡単に屠っている。
もう蜘蛛が綿詰めのぬいぐるみのように千切られていくのは軽くホラーですらある。
次いでナツキ。虎哮拳で衝撃を体内に伝え、効果的にダメージを与えていっている。
レナとコウは2人で1体ずつ仕留めているようだ。
久しぶりにスケルトン組の連携を見たが、今日も好調のようで何よりである。
キキョウはシャドウバンデージで敵を捕まえるのではなく、木々に絡みつかせて蜘蛛の道を制限するのに使っている。1本1本で蜘蛛を押さえつけるよりもよほど簡単だし、その労力をシャドウバンデージの本数を増やすことに当てられる。軍師並の戦況判断だと思う。
程なくしてリップスパイダーの群れは全滅。
多少のHPの減少はあったものの、キキョウの回復により、1人もかけることなく生き残ったのだった。
「ごめんなさい…」
自分が悪いのはわかっているらしい。ナツキがみんなに頭を下げた。
「大丈夫よ。いいスキルレベル上げになったと思いましょう!」
レナがフォローになってそうであまりなってないフォローをいれるが、ナツキはまだ俯いたままだ。
「ドロップアイテムがかなり旨いしなこいつ。」
〈切り裂き蜘蛛の鎌〉
リップスパイダーの前脚。
加工することで草や枝を容易に切断できる。
庭師達の憧れである。
〈切り裂き蜘蛛の糸〉
伸縮性が高く、服の生地に用いた場合、軽くて着心地の良い服が作れるが、防御力は一切上昇しない。
なかなか汎用性の高そうな素材だ。それぞれ8個落ちた。
大量に倒せたのはむしろ手間が省けたといえる。
「…そうだねぇ。ありがとうみんな。」
「それはそうと、みんなどんな進化をしたいとか、あるか?知ってた方が探しやすくなるだろうし、ちゃんと聞いておきたい。」
聞いてみたところ、みんなそれぞれ取り込んだ魂の通りのスタイルでやっていきたいそうで、
レナは鷹などの目が良い生き物、
キキョウは呪詛は変わらず使えて、見た目が今よりマシな生き物、
ナツキとコウは人型で、身軽であれば良いらしい。
キキョウのが一番難しそうか?
他の3人のは、比較的簡単に達成できそうだが、
呪詛を持っているモンスターならほぼ確実にアンデッドだろう。で今よりマシな見た目、といえば、真っ先に浮かぶのはヴァンパイア。だがそれは間違いなく高位のモンスターだ。今の時点で出来る気がしない。
パンシーとかは、
「あのー、これはトウキくんにかなり負担がかかる提案だから、却下してくれて全然構わないんだけど、他の人たちで試してみるのはどうかしら?」
「それはどういう風に?」
「進化先に干渉できますって書き込みを掲示板でして人を集めて、いろんな組み合わせで生物錬成してみるってこと。どの素材を使ったらどう進化するのか確かめるの。」
「生物錬成が失敗するかもしれないぞ?」
「だからどんな姿になろうと自己責任ですって書いておくのよ。」
「また恐ろしいことをさらっと言うね。」
「ご不満?」
「まさか。」
「そうと決まればさっそく始めましょうか。私とトウキくんは掲示板に書き込む係ね。他の4人は素材を出来るだけたくさん集めてきて。」
いつもよりも展開が急だな。
今日は忙しくなりそうだ。