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【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~ - 2-7
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【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第二部

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2-7

 旅は、順調だった。

 たとえ魔物が出没しても、兄とラウルがすぐに倒してくれる。

 二人の剣技は鮮やかで、ジェイダーが雇った冒険者は、自分達の出番はないようだと苦笑していたくらいだ。

(たしかにお兄様もラウルも、強すぎるわね)

 鮮やかな剣技に見惚れるよりも、思わず溜息が出てしまう。

 出番がないのは、ミラも同じだった。

 これから先、何が起こるかわからない。だから魔力は温存しておいた方がいいと、兄に言われてしまったのだ。ラウルもそれに賛同して、魔物と遭遇すると、ミラはすぐに後ろに下げられてしまう。

 兄もラウルも強く、魔物との戦いにも慣れているから、補助魔法や治癒魔法も必要ない。

 たしかに王都に近付くにつれ、魔物が強くなっている。

これから先、二人の手に負えないような、強い魔物と遭遇してしまう可能性もある。だから魔力を温存するのは間違っていない。

(そうわかっているけれど……)

 それでも、ただ守られているだけの今の状況には、少し居心地の悪さを感じていた。

 せめて野営の準備くらい頑張ってみようと思うが、同じく手持無沙汰の冒険者たちも何かしていないと落ち着かないらしい。野営すると決めると率先してやってくれるので、なかなか手を出しにくい状況だ。

 かろうじて料理はミラの仕事だが、手慣れてきたせいで、それほど時間が掛からない。自然と、ジェイダーと二人で火の番をしていることが多くなっていた。

 この日もミラは、ジェイダーの護衛が集めてきてくれた薪を手に、ぼんやりと火を眺めていた。

 火の強さは魔法で調整しているので、こうして見張っている必要はない。それでもこうして燃え盛る炎を見つめていると、心が落ち着く。

 トラブルもなく、予定通り順調に進んでいるから、もうすぐ王都に辿り着くことができる。

 山を越えれば、そこからは整備された街道を進んでいくだけ。心配なのは、この先の町の様子である。

 ミラが祖国を目指して、ラウルと旅をしていたときのことを思い出す。

 魔物の被害を受けながらも、自分達で警備団を結成して町を守っていたところもあれば、領主がしっかりと兵を出して、町を守っているところもあった。ミラとラウルが魔物退治をして、守った町もある。

 だが王都に近い町や、人数の少ない小さな村などは、被害が大きいのではないか。

 そう思うと不安になる。

 旅をしていたときは、さすがに国王代理であるアーサーが守っていると思っていた。旅の途中で、疲れ果てた様子の騎士を見かけたこともある。

 でも、そのアーサーが王都を見捨てて逃げ出したことを考えると、壊滅したのは王都だけではない可能性が高い。

 もしかしたら、怪我人がたくさんいるかもしれない。

 今も苦しい状況下で、助けを待っている人がいるのかもしれない。

 そう思うと、気が急いた。

 落ち着かない気持ちのまま、周囲を見渡す。

 すると、ミラと同じように落ち着かないのか、思いつめたような顔をしたジェイダーと目が合った。

「ジェイダー様」

 思わず声を掛けると、彼は視線を落とした。

「……すみません。こうして落ち着く時間があると、つい色々なことを考えてしまって」

 ジェイダーはそう言うと、笑ってみせた。

「あの町で子ども達を助けたことを、後悔などしていません。ですが、もう少し早く王都に向かうことができたら、兄を止められたかもしれない。王都が崩壊することもなかったかもしれない……。つい、そんなことを考えてしまいます。もう終わったことを考えても、仕方がないとわかっているのですが」

 自分が必ず、この国を再建する。そう覚悟を決めているジェイダーでも、こうして静かな時間にはつい考え込んでしまうのだろう。

 そんな彼に、何と声を掛けたらいいのかわからなかった。

 たしかにジェイダーは王都から離れて暮らしていたが、このロイダラス王国の第二王子だ。彼を支持する者もたくさんいたと聞く。

 だからこそ父である国王が倒れたと聞き、迂闊に王都に近寄ると兄を刺激してしまうのではないかと考慮していたのかもれない。

 でもそれが仇となってしまった。

 アーサーは暴走して独裁者となり、最後は王都を壊滅させてしまったのだ。

「いや。俺は、地方に留まったのは正しかったと思う」

 ふと背後からそんな声が聞こえてきて、ミラとジェイダーは振り返った。

 見回りを終えたラウルが、ゆっくりとこちらに歩いてきている。

「ラウル」

 彼はミラに視線を送って頷くと、縋るように見上げているジェイダーに視線を移した。

「間違って、いなかったのでしょうか?」

「ああ。俺はそう思う」

 ラウルはきっぱりとそう言った。

 倒れたとはいえ、ロイダラス国王の意識がはっきりとしていたのなら、ジェイダーが王都に戻るという方法もあったかもしれない。

 だが実際は、ロイダラス国王は意識のない状態で、アーサーがすべてを仕切っていた。そんな状態の王都に戻っても、アーサーを止められたとは思えない。

 むしろ、長年アーサーにとって邪魔者であったジェイダーは、この混乱に応じて始末されてしまった可能性が高い。

 ラウルはジェイダーに言い聞かせるかのように、ゆっくりとそう説明した。

 たしかにロイダラス国王は、ミラがエイタス王国の聖女であることをジェイダーにしか打ち明けていなかった。いずれはジェイダーを王太子に、と考えていたと思われる。

 きっとアーサーも、薄々それを感じ取っていたはずだ。


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