52:想いは至りて(???編)
メインヒロインと結ばれような!!!!!!!!!
そして。
「――……クロウくん、もう寝ているのか?」
月も隠れた真夜中に、アイリス・ゼヒレーテはクロウの部屋を訪れた。
扉の向こうから返事はない。部屋の主がすでに眠っていることを察したアイリスは、そっと静かに扉を開けた。
「クロウくん……」
ひたり、ひたりと、足音を殺し、ベッドに眠る彼に近寄る。
ああ、よほど疲れているのだろう。まったく起きるそぶりはなく、まるで死んでいるかのように深く眠り込んでいた。
「無理はないな。死にかけの状態から目覚めてすぐに、戦うことになってしまったのだから……」
本当に苦労が絶えない青年だと、アイリスは苦笑を浮かべながら彼を撫でた。
わずかに硬い黒髪の感触が気持ちいい。
この一週間、汗ばまぬよう暇さえあれば拭ってやったモノだ。
「ふふ……なぁおい、酷いじゃないかクロウくん。私はこんなに、キミのことを考えているのに。……お互いの想いだって、あの日打ち明け合ったのに……!」
流れきったと思った涙が再び零れる。
思い返すのは、セイラムの街をクロウと共に歩いた日の記憶だ。
まだ一月も経っていないのに、今やずっと昔の出来事に感じた。
「あの日、あの場所で……お互いに、大好きだって言ったじゃないか……! それなのに、私の師匠と結婚するヤツがあるか馬鹿ぁ……っ!」
溢れた激情が止まらない。
アイリスは崩れ落ちるように膝をつくと、眠るクロウの胸に顔を埋めた。
「どうしてっ、どうしてこんなことになったのだ……!」
理解している。あの決断はクロウにとっても、きっと苦渋のものであったのだと。
国家をまとめ上げるために、王族に身を捧げる決断……。少なくともアイリスには、そんな真似は出来なかった。
「なぁ、クロウくん……! どうか今夜だけは、恋人として……!」
ベッドに乗り上げ、男の身体に跨るアイリス。
ああ、つくづく自分は浅ましい女なのだと理解する。
エルディアの前でクロウを王にすると誓ったのに……彼への想いを拭い捨てると決めたのに、この有様だ。
肉体と肉体の触れ合った部分が熱くなる。腹の奥から、愛する男を求める想いが溢れそうになる。
「クロウ、くん。こんな私を、どうか許して……!」
国のために、只人の生を捨てることを決めたクロウ。
そんな彼へと、アイリスは謝罪しながら身を倒した。
「んっ、あぁ……!」
押し付けた豊満な胸の先に痺れが走る。
一気に押し寄せてきた彼の匂いに、頭がどうにかなりそうになる。
ああ駄目だ。これは麻薬だ。気付けばアイリスは狗のように息を荒くし、クロウの首筋に顔を沈めていた。
もう興奮が止まらない。さらに、そこで息を思うままに吸い込めば……!
「ふぁあぁぁああぁぁあ……ッ!」
アイリスの肢体が痙攣を起こす。濃密すぎる若者の香りに、ビクッ、ビクッと背筋が跳ねて肌があわ立つ。
愛する男の匂いというのはこんなにも魅力的なのか……。
まるで、肺腑の奥まで甘い毒で満たされていくようだ。浅ましい欲望が、もうどうしようもなく止まらない。
“この雄と情欲を交わせ”と――粘ついた女の声が、熟れた胎から脳髄に響く。
「クロウくん、クロウくん……っ!」
もう駄目だ。もう限界だ。こんなの耐えられるわけがない。
一夜でいいから、彼が欲しい――!
「クロウくんッ!」
そして。
アイリスは眠る男の唇を、無理やりに奪おうとし――。
「ク、ロッ、ッゥ……あぁあっぁッ! 馬鹿かッ、私は!」
咄嗟に跳ね起き、柔らかなベッドを強く殴ったのだった。
「はぁ、はぁ……! あぁ、もう、自分が嫌になる……!」
嫌悪感に泣き濡れるアイリス。
卑劣なるくちづけを行おうとした瞬間、彼女の視界にクロウの顔が大きく映った。
まだ二十代にもなっていない、ともすれば少年にも見える顔立ちだ。
――そんな若者が、国家のために身を捨てる覚悟をしたというのに。自分は一体、何をしようとしているのか?
そう思い至った刹那、アイリスは理性を取り戻したのだった。
「ごめんね、クロウくん……ごめんね……!」
涙ながらにクロウを撫でると、彼女はベッドから身を下ろした。
そして静かに立ち去っていく。
もう、先ほどのような間違いは侵さないように。今度こそ真に覚悟を決め、アイリスはドアノブに手を掛けた。
「――申し訳ございませんでした、クロウ様。一介の騎士の戯れを、どうかお許しくださいませ」
硬い声で言葉を残す。
それは、クロウを愛する一人の女のモノではなく、彼を王にすると決めた『女騎士アイリス』としての発言だった。
「おやすみなさい、未来の王様。アナタの征く道は、この私が……全力で守りますから……!」
覚悟を新たに、廊下へと消える女騎士。
こうしてアイリス・ゼヒレーテは、鋼の決意で女を捨てることを決めたのだった――。
なお。
「すやぁぁぁぁあああああああぁぁあぁぁ~~~~~~すやぁぁぁぁぁあぁっぁあああああ~~~~~~~~……ッ!」
“国家のために身を捧げる覚悟を決めた若者”ことクロウは、そんなことも知らずに眠りこけていた……!
相変わらずまッッッッたく状況を理解していない男である。
そもそもアイリスは彼と想いを告げ合ったと思っているが、クロウからしたら『(師弟として)大好き』だと言い合ったと思い込んでおり、想いのマッチング率驚異のゼロ%だったりした。
アイリス・ゼヒレーテ、覚悟の固め損である。
無駄にしてしまった鋼の決意でぜひナイフを鋳造してこの男を刺してほしい。
「すぴぴぴぴぴぃ~……(なんかイイ匂いしたり声がした気がするけど、気のせいだよな! あー、高いベッドふかふかできもちいぃ~……)」
そうして一人穏やかに眠りを楽しむクロウ。
腹立つほどに無知であるがゆえ、本人だけはのんきなものだ。
王を叱る件も結局『年上さんに恥をかかせるとか嫌だなぁ』という程度の認識であるため、眠りを妨げるには至らなかった。
察しの悪さとタイミングの悪さ人類ナンバーワンのダブルクソ二冠王のくせに、微妙に善性に溢れているのがこの男の腹立つところである。
「ひゅぴゅー……(最近問題だらけだったけど、色々落ち着いたらマジで彼女とか欲しいなぁ! おっぱいおっきいお姉さんが急に現れたりしないかなぁ~! お金持ちでクロウくんに責任とか求めない人だと、バッチグーです!)」
……周囲がシリアスなことになっているのも知らずに眠るクロウ。
そんな無自覚無責任野郎の下に――死神がごとく、一人の女が現れる……!
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」
その声は、部屋の片隅の影から滲み出した。
「ごめんなさい、クロウ様ぁ……!」
やがてゴポゴポッと水のように影が弾け、薄桃色の髪をした女性が這い出てきた……!
彼女の名は、フィアナ・フォン・アリトライ。
帝国騎士団の支部長の一人にして、武家貴族・アリトライ家の女当主であった。
それに加えて――クロウの貞操を寝ている間に奪った少女、ティアナの実の母親である(※なお未亡人だったりする)。
「あぁ寝息が聞こえるッ! クロウ様ッ、まだ生きてらしたんですねぇえぇぇぇえ……!」
豊かな肢体を犬のように這わせながら、フィアナはクロウにずいずい近寄る。
彼女の細い両目からは大粒の涙がボッタボタ流れ出しており、這い寄った跡はナメクジのように湿っていた。
「クロウさまぁぁぁぁぁぁああぁぁ……!」
……彼女がここまで限界未亡人になった理由。
それは、『自分のせいでクロウが死にそうになっている』と思い込んでいるからだった……!
「あ、あの日ッ、クロウ様が龍の討伐を命じられた日、わたくしが支部長としてアナタをちゃんと庇えていたら……!」
クロウの残った右手をヒシィィイッと握るフィアナ。
腕ごと巨大な胸に抱き寄せ、クロウの手の甲に頬ずりしまくる。
「わたくしのせいで、クロウ様は死ぬことに……ッ!」
溢れる涙が止まらない。
今フィアナは、こんな精悍な若者がなぜ今夜にも死ななければいけないのか――という、二周遅れの問題について悩んでいた。
そう。このフィアナという女も、まッッッッたく状況を把握していないのである……!
彼女の認識は、『今日でクロウが死ぬ』という段階で止まっていた。
娘のティアナを引き取った際にクロウのことも見舞っているが、まさかそこから謎パワーに覚醒して復活したなんて思ってもいなかった。
「クロウ様っ、可哀想なクロウ様……! あぁ、どうかこのフィアナをお怨みくださいッ! 身体だけしか熟れていない脳の退行した無能な雌だと罵りくださいッ!」
ガバッとクロウに抱き着く限界未亡人2号。
アイリスがクロウに抱き着くまでには部屋に入ってから一分ほどかかったが、彼女はそれを大きく上回る28秒の記録を叩きだした。淫乱選手権第一部門優勝である。
「あぁぁぁぁ、欠けた左腕の痕が痛々しい……! 呼吸は……意外と静かですが、これは逆に喘ぐ活力すら残っていないということですよねぇッ!? あああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
……フィアナはまったく気付かない。クロウがとっくに元気なことに。
魔力の無駄な消費を抑えるために左腕を消したことが、彼女から状況把握のチャンスを奪ってしまった。
だがしかし、だ。
もしも正面から屋敷に訪れていれば、エルディアやアイリスからクロウの状態を教えてもらうことが出来たのだが……。
「ふ、ふふふふふ……。申し訳ありません、クロウ様。影から影への移動を可能とする我が兵装、『隠滅宝珠ハデス』を使ってまで、お部屋に忍び込んでしまって……」
薄暗い闇の中、胸にかかった闇色の宝石が仄かに光る。
魔導兵装『隠滅宝珠ハデス』。闇との一体化を可能とする冥王ハデスの兜の一部から精製されたモノであり、それを使えば屋敷に忍び込むことは容易であった。
――ではなぜ、そんなことをしたのかと言うと……?
「クロウ様……わたくし、責任取ります」
フィアナは上着に手を掛けると、ガバッッッと躊躇なく脱ぎ去った……!
自分の半分ほどの年齢の男に跨りながら、豊かな肢体を闇に晒す。
「アナタの人生を、何も残せないまま終わらせるわけにはいきません。ゆえに、誰にも知られるわけにはいかない行為だとはわかっていても……クロウ様ッ!」
意を決すると、フィアナは勢いよくクロウの唇を奪い取った――!
触れ合う男女の口の先。そこから漏れ出す熱い吐息がベッドの上の空気を染める。
一人の男の寝室が、二人が交わう愛の巣へと変貌を果たしていく。
「んっ、ちゅ……♡」
――クロウと二人きりになってからキスするまでのスピード、堂々の第一位決定であるッ!
これまでの成功者はフィアナの娘のティアナだけだが、部屋で二人きりになってからキスするまでは数時間もかかった。
だがしかしッ、共に食事をするなどまだるっこしいことをしていた娘とは違い、この女は1分でソレを成し遂げて見せたッッッ!
淫乱選手権第二部門優勝である。ダブルクソ女誕生の瞬間である。
しかも王太后の邸宅に不法侵入して夜這いをかますというテクニカルポイント百億万点の犯罪級(※実際犯罪!)プレイをやってのけたのだからもう圧巻だ。
残念ながら観客はいないが、フィアナの二つの卵巣内では未来の子供たちが万雷の拍手をかましていた。閉経すればいいのに。
「さぁクロウさん、『生きた証』をどうかわたくしに残してくださいッ! どうかわたくしに、責任を取らせてくださいませぇー---ッ!」
――かくして、情欲の夜が始まった。
クロウ(※未成年者)に対し、どこかの女騎士が必死で踏みとどまった行為を全速力で犯していくフィアナさん(※三十六歳・子持ち)。
ああ、娘のティアナはキスと同じく数時間も葛藤したというのに、なんという速さなのか。
淫乱選手権第三部門、堂々の総合優勝決定。人類不貞ランキングナンバーワンのトリプルクソ女王がここに君臨を果たしたのだった。
そして、フィアナは加速する。
「申し訳ありませんクロウ様申し訳ありませんクロウ様申し訳ありませんクロウ様申し訳ありませんクロウ様申し訳ありませんクロウ様申し訳ありませんクロウ様申し訳ありませんクロウ様申し訳ありませんクロウ様申し訳ありませんクロウ様申し訳ありませんクロウ様申し訳ありませんクロウ様ッッッ!」
謝るごとに倍速になっていくフィアナの動き。ベッドすら壊れ始めるその力強さ。
さらに、彼女が亡き夫(※政略結婚ゆえ愛してなかった)からの指輪を放り投げた瞬間、その出力はさらに跳ね上がった――ッ!
「クロウ様ぁああああああー-------!」
その躍動に、その生命の輝きに、実は部屋の隅で行為を見ていたクロウの魔導兵装たちが『これが人間の強さか……!』と戦慄する……!
ヒトを食い物にしか見ていない闇の兵装たちが、人類との和解を考えた瞬間である。
「クロウ様っ、クロウ様っ! 申し訳ありませんッ、クロウ様ぁー-----ッ!」
闇へと響く絶対女王の咆哮。
今、彼女は全力でクロウに申し訳ないと思っていた。
王族の邸宅に侵入して娘の友達の十代の若者をブチ犯すという罪科の満漢全席みたいな真似をかましながら、その心は滅私奉公の想いに溢れていた。
間違いなくその清き精神の在り方が、彼女の強さの秘訣だろう。
クロウを襲った理由は娘と同じく『死に向かっている男の種を残してあげたい』という切実なモノだが、支部長でありながらクロウを死地へ送ってしまったフィアナは、娘よりも何倍もその思いが強かった。
ゆえに、限界未亡人のフィアナは無敵だ。
アイリスのように罪悪感に圧し潰されることは一切なく、むしろ『自分は正しいことをしている』と思い込んでいるのだから――ッ!
「クロウ様ぁああああー----!」
「すぴぃぃぃぃぃぃー-----!?(ぎゃああああ!? なんかどんどんエネルギーが吸われていくんですけどぉぉぉおおおおおッ!?)」
……こうして、状況を何も把握していないダブルクソ王者は、状況をもっと理解していないトリプルクソ女王に喰い尽くされるのだった。
ある意味、裁きが下った瞬間である……!
――なお、翌日。
「……こんにちは、エルディア様。その、クロウ様はやはりもう逝ってしまわれましたか……?」
「あぁ! クロウさんなら、謎のパワーに覚醒して元気になりましたよ! まぁ今朝はなぜかグッタリしてますが」
「えッッッ!?」
……驚愕と共にお腹を押さえるフィアナ。
ずっしりと重い感覚が、手のひらから伝わってくる。
「『えッッッ』てなんですかフィアナさん? まさか、クロウさんの回復が嬉しくないと……!?」
「いッ、いえいえいえいえいえいえいえいえそんなことはないですよエルディア様ぁッ!?」
片手をブンブン振って誤解を解きつつ、フィアナは下腹部を押さえ続ける。
“え、クロウ様が無事? じゃあ『コレ』、どうすれば……?”
と、トリプルクソ女王も苦悩の時を迎えるのだった……!
クロウ「お金持ちで巨乳で美人な彼女ほしいなぁ!」←クソ!
フィアナ「王族の屋敷に侵入して娘の友達の未成年の子を……!」←クソ!
よしハッピーエンドだな!!!!!!!!!!!!!!
ここまでありがとうございました!
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』
と思って頂けた方は、感想欄に希望やら疑問やらを投げつけたり最後に『ブックマーク登録!!!!!!』をして、このページの下にある評価欄から『評価ポイント!!!!!!!!』を入れて頂けると、
「 フ ィ ア ナ さ ん が 妊 娠 す る 確 率 」が上がります! 特に、まだ評価ポイントを入れていない方は、よろしくお願い致します!!!