おや?モスラの様子が…
モスラの成長を手助けしようと決めたレナは、魔物になりかけの蝶々がテイム対象になるのか、とりあえず試しに契約スキルを使ってみる事にした。
モスラがレナに従属することになるが、それについてはアリスも同意している。
精神を支配される訳ではないし、モスラが望むなら構わないという考えだ。
友達の蝶々が自分を守りたいと申し出てくれて、アリスは嬉しそう。
「…いくよ。モスラ。
私は貴方をテイムしたいです、スキル[従魔契約]!」
レナが鞭を構えてアカスジアゲハをじっと見つめ、スキルを発動した。
モスラの目前には、輝く契約魔法陣が現れる!
スキルが問題なく発動したということは、魔物未満でも従魔対象になりえる可能性が高い。
皆が期待する中、リリーがひらりとモスラを導いて、黒い蝶々は魔法陣を…くぐった。
「………!」
しん、と静まり返る広い客間。
モスラは魔法陣をくぐった状態のまま、動かない。
ゆらゆらと不安定にその場に留まっていて、顔はかろうじてレナを見つめている。
レナの頭の中にも、世界の福音はまだ聞こえていなかった。
ごくり、と誰かが生唾を飲みこむ音が部屋に響く。
『……んっ!』
アカスジアゲハの身体をぽんぽんと優しく叩いてやり、声をかけたのは先輩リリー。
アゲハは魔物になれるほど賢く成長していたが、まだモンスターではないので、従魔契約の仕組みを本能で理解することができず、戸惑っていたようだ。
蝶々たちが目を合わせて頷いた瞬間、レナの頭に高らかなベルの音が響き渡る。
モスラが契約に同意したのだ。
<[従魔契約]が成立しました!>
<従魔:アカスジアゲハの存在が確認されました>
無事、モスラをテイムすることが出来た!
「やったあ…!」
レナは大きく万歳をして、アリスとパトリシアにテイムが成功したことを告げる。
乙女たちは、手を取り合って喜んだ。
魔物ではないただの蝶々のステータスは開示されていない。
まずは進化させる必要があるらしい。レナのスペシャルギフトの[成長促進]効果が、おおいに役立ってくれることだろう。
なお、モスラがテイムされた時点でレナのギフトについてはアリスに説明されており、口外しないという内容の妖精契約が結ばれている。
スキルを持たないモスラは、どのように経験値を積めば良いのだろうか?
生物を倒すにしても、非力な蝶々では攻撃力は期待できない。
魔物になるには、なにか、別の方法があるのだろうか…?レナたちは考え込んでしまった。
皆、うんうんと首をひねっている。
「うーん…。
普通なら、レベルを上げたい時にはモンスターとかを倒すよねぇ。
他の方法って、心当たりある?
生産職みたいに、何かの作業をするとか…?」
「ただの蝶々なら作業なんてできないだろー。
てか、蝶々向けの作業ってなんだ。
虫を倒すとかは?」
『…スキルで虫を[魅了]して、身を、捧げさせる!とか?
かわいそうだけど…』
「「残酷だー!」」
王族候補フェアリーのとんでもないアイデアに、主人と友人が大慌てでツッコミを入れる。
しかし、貴方方もいつもえぐい戦い方をしている事を忘れてはならない。
さすがのアリスも、蝶々を魔物にする方法についてはお手上げようだ。
「普通なら年月を重ねるんだけど…。
進化を早めたい場合は、んー…蝶々だからお花関連なのかなあ。
あっ、体力作りをするとか?」
『『マッチョメーーン!?』』
こらスライム達、余計なことは言わないように。
『体力作りきる前にー、モスラ倒れちゃいそうじゃないー?』
「そうだねぇ。
蝶々がひらひら飛ぶだけだと、体力作りトレーニングにしては緩すぎるしー…手足も細いから、腕立て伏せとかも出来ないかな」
腕立て伏せをするアゲハ…とてもシュールである。
話し合いは、結局新しいアイデアを探す所まで戻ってしまった。
全員でなさけなく眉尻を下げながら、一生懸命思考する。
モスラがふと、つんつん、と触覚でリリー先輩をつついた。
『んっ?』
じーーっ、とアイコンタクトをとるふたり。蝶々同士は、これで念話が出来ているのだ。
ちなみにご主人さまのレナは、まだモスラの言いたい事が理解できない。
期待した表情で、ダークフェアリーを見つめる一同。
『…なんかねー。モスラ、すっごくお腹が空いてるんだってー!
いくらでも蜜がお腹に入りそう、って!
いっぱい食べたら、成長、するかな…?』
「ーー食欲を満たす…!その手があったか!」
彼女の口から発せられた一言に、食いしん坊なレナさんは大いに納得している様子。
通訳を聞いた全員も、なるほど!と感心したように頷いていた。
「よしッ!
蜜を大量に蓄える花だなー。私に任せとけ、モスラ!」
また、ここらで魔改造…いやいや、一波乱ありそうである。
▽美味しい蜜をたくさん蓄えるお花を創ろう!
***
ベースとするお花は、モスラの大好きなチューレを選んだ。
アリスがお屋敷の室内ガーデンスペースから、チューレの寄せ植え鉢を持ってくる。
チューレはまだ美しく花を咲かせているが、種をつける種類ではなく球根花なので、開花状態でも[品種改良]の素材として使う事が出来るのだ。
そして問題は、どのような特徴をチューレに付与させるか、なのだが…。
まず掛け合わせるのは[超速アルファルファ]。
これについては、皆同意している。
とても便利な"超速"効果だが、この野生花の種はそうそう見つかる物ではなく、スペシャルレアだと言っておく。
長く花を楽しむには向かない特徴であるが、実を付ける植物にとっては素晴らしい付与効果だ。
ちなみに、パトリシアの夢は青果店ではなくお花屋さん…ごほんっ。
何度目かのアレンジメントで、無事"超速チューレ"が出来上がる。
さっそく成長させて種を増やそうとするが…球根なので、親球のまわりに数個の子球が発生するタイプなのだ。
30分の成長を待って、今回は4つの小球根を入手できたが、効率が良いとはとても言えない。
見た目が分かりにくい場合は、にんにくを想像してみよう。
これらをムダにしないよう、有効な掛け合わせを堅実に試していきたいところである。
「えーっと…花を大きくしたいから、シミールゴールドを使ってみようぜ」
「ダメです!」
▽パトリシアの 提案は アリスに 却下された!
▽パトリシアは ショックを受けている。
「じゃあねー…。
味をもっと良くしたいよね?バリエーションがあってもいいし。
食用超速鬼アザミの苺味に期待しよう!」
「もし蜜が固形になったらモスラが吸えないし、今は味より量です。
ダメです!」
▽レナの 提案は アリスに 却下された!
▽レナは ショックを受けている。
『『ピリリと辛い紅カラシレンゲに一票!辛いの大好き~♪』』
『綿雲草でー、ふわふわもふもふチューレはどうー?』
『見た目を、可愛くしたら…食欲も出るし、サイコトリア・エラータっ!』
「あの…かくかくしかじか」
主人が、申し訳なさそうに従魔の言葉を通訳する。
「ダメですっ…!
アイデアは面白くても、現在求められているものは違いますので」
『『『『がーーーん!!』』』』
▽従魔たちの 提案は アリスに 却下された!
▽従魔たちは ショックを受けている!
「…試すにしても後日です…。ね?」
ラブリー従魔にあからさまに落ち込まれて、アリスもさすがに良心が痛んだらしい。
フォローに入ると、従魔たちは即座に持ち直してはしゃぎ出す。
現金さに苦笑しながら、アリスは、自身のアイデアを皆に伝えた。
「まず、花を大きくすることには賛成なんです。
でも、シミールゴールドではなくビューティゴールドを使いましょう?
シミル成分が一度種に混じってしまえば、その後の改良が大変になりますから。
次は、多くの蜜を蓄えさせる方法ですが…花自体の蜜にプラスして、クルミ草のように、硬い種の中に甘い養分が詰まっているチューレを創るのが良いと思います。
球根ではなく、種を作るチューレの開発を目指しましょう。
ちなみに、花が複数付けば、なお良いかと。
…どうでしょうか?」
「「さすがでございます…!!」」
残念乙女なお姉さんたちは、手放しでアリスのまともな創花アイデアを絶賛している。
自分たちに花創りのセンスが無い事は、さすがにうっすら自覚してきていた。
このように都合のいい花を創るとなると、何度もアレンジメントをする必要があるだろう。
特徴抜き出しの失敗も、少なくはないはず。
低燃費な[品種改良]スキルとはいえ、パトリシアの魔力とも相談しつつ、慎重に掛け合わせの手順を考えて、作業を進めていく事にした。
目的の花が出来上がるまでは、モスラにはガーデンスペースで蜜をちびちび吸って待っていてもらう。
「スキル[品種改良]…"アレンジメント"!」
可愛い友達 兼 妹分を守るナイトを育てるのだ。
パトリシアはいつも以上に気合いをいれて、花創りの魔法を発動させ始めた!
***
「できた…!"超速蜜クルミチューレ"!」
「おめでとうパトリシアちゃん!」
「すごい…今日中に完成するなんて。なんて幸運なの。
お姉ちゃん、ありがとう…!」
「へへっ、おうともよッ!」
何度も何度も[品種改良]を重ねて、窓の外はもう暗くなってきている。
たくさんの種をムダにしたし、原種の"超速アルファルファ"も全て使い切ってしまったが、なんと8時間ほどで、イメージ通りの花の種が完成したようだ。
疲れてはいたが、客間の皆の顔には晴れやかな笑みが浮かんでいる。
濃い紫色の種はクルミ型で、この中には栄養満点の甘い蜜がたっぷり入っているのだ。
花が成長する速度も速いし、一本の太い茎に20ほどの実を付けるので、モスラのお腹も満たされるだろう。
たくさん食べて、大きく成長して欲しい。
フラグの立つ音が聞こえた。
ガーデンのお花の蜜では足りなかったらしくお腹を空かせた状態のモスラが、フラフラとアリスのもとに飛んでくる。
「さあ。どうぞっ」
「たらふく飲めよー!」
収穫したクルミの実をパトリシアが力ずくで割り開け、アリスの手のひらに乗ったモスラに差し出す。
蝶々はストロー状の口吻をぐっと伸ばして、蜜をぐんぐん吸い始める。
すごい勢いだ!
『『あ・そーーーれ!一気!一気!』』
『モスラ、頑張れーー!』
『制覇せよーー!』
従魔先輩の応援を受けたモスラの吸引は、いっこうに止まる様子を見せない。
…だんだんと、ヒト族3人の目が点になってくる。
普通サイズのアゲハチョウが、吸った蜜の量だけどんどん大きくなってきているのだ!
アリスの手のひらが、ついに蝶々の重みでプルプルし出した。
度重なる改良により肥大化したクルミの実は重量級、殻の大きさも直径15cmはある。
ちなみに中の蜜は、後にレナのお菓子作りの材料にもなりえた、上品な甘さの一級品だ。
成長し続けるアカスジアゲハは、片翅だけでもうアリスの顔よりも大きい。
まだまだ、食欲は止まらない。
どんどんとクルミの殻が積まれていく。
パトリシアが引きつった声で「良い飲みっぷりだなー」と呟いて、本日3つ目の"超速蜜クルミチューレ"の種を成長させ、彼のおかわりに備えている。
これまで、実に35個分のクルミ蜜を吸収していた。
アリスはとっくにモスラを手のひらから降ろし、自らの膝の上に乗せて成長を見守っている。
勢いを衰えさせず蜜を飲み続けたモスラは、ついに、クルミ60個分の蜜を飲み干した…!
思わず拍手する一同。
そして、レナの脳内に華やかなベルの音が響く。
<☆進化の条件が満たされました!>
<従魔:モスラが魔物に進化します>
<進化先:ジャイアントバタフライ・ネオ>
<進化させるには、種族名項目をタップして下さい>
進化先の種族名を見たレナさんが、驚愕の声を上げる。
「うわあ、絶対大きくなるよこの子…!」
「えっ。これ以上…!?」
「毎日の食料調達どうすんだよ?」
レナの発言を聞いて、アリスとパトリシアも顔を少々青ざめさせていた。
『『『『おめでとーーー!!』』』』
先輩従魔たちは気楽なものである。
困ったように、全長80cmもあるアカスジアゲハを乙女全員で見つめるが、モスラ本人は『これでアリスを護れる!』とでも言うように、キリリとした瞳で小さな友人を見つめていた。
「…モスラ…私のために頑張ってくれたんだよね。ありがとう…!」
即、陥落するアリス。
可愛い蝶がここまで身体をはってくれたのだ。感動だってする。
迷っていてもしょうがないし、もう早々にモスラを進化させてしまおうと決めたレナは、苦笑しながらギルドカードを手にする。
詳細を見るため種族名項目をタップした。
詳細を確認するためタップをするとすぐに進化してしまう仕様はちょっと不便だな、などとぼんやり考えている。
モスラがどれだけ大きくなるのかは分からないが…この部屋より大きくなって、潰されることは無い、と思いたい。
細い指が、ジャイアントバタフライ・ネオの項目をトンッとタップした。
【ジャイアントバタフライ・ネオ】
…とにかく大きなバタフライ。
進化後の全長は1M、その先に更なる巨大化が見込めるジャイアントバタフライ種の"新種"。
詳しい生態は不明。
特殊スキル[吹き飛ばし]、[威圧]、[風斬]を進化時に取得する。
※ギフト【大空の愛子】☆5を進化時に贈られます!
「新種ってなに!?」
「てか、ギフト☆5ってまたとんでもなくレアだな!?」
「ど、どこまで大きくなるんだろう…」
もはや皆、驚き疲れている…。
モスラの秘めたる能力にも、ご主人さまのチートギフトの性能にもだ。
ちなみに言うまでもないが、ギフト☆5はたいがい珍しい。
種族の特徴にビビっている一同だが、モスラの進化はもう始まっている。
床に降りた蝶々は、まるでコウモリのように翅を丸めてボディを覆う。
口吻を伸ばして上に向けると、そこから…なんと、糸を吐き出し始めた!
漆のような光沢を放つ糸がモスラを包んで、漆黒の繭が出来上がる。
皆が息をひそめる中、客間には一瞬だけ鋭い風切り音が響く。
繭の上部が、さっそくの[風斬]スキルでスパッと斬り開かれた。
中から、光沢のある闇色の翅を伸ばし……ネオ・モスラが姿を現した!
芸術品のような、漆黒に赤模様の蝶々。
皆がほうっと見惚れている中、モスラは乙女たちの前でヒラリと翅をはばたかせ、彼なりの最敬礼をとる。
言葉の通じるレナをじっと見つめて、語りかけてきた。
『…レナ様。
本当にありがとうございます。
私の成長を手助けして下さって、アリス様に手を差し伸べて下さって。
心から感謝しています!
貴方のギフトの恩恵がなければ、ここまで早く魔物になることはできなかったでしょう…。
魔物になる前に、ともすると寿命を迎えていたかもしれません。
…………。
私は、長く寄り添ってくれたアリス様を護りたい。
その一心で、貴方の助けを借りながらですが魔物になりました。
どうか今一度、さらに強くなるために、力を貸して頂けないでしょうか?
身勝手な願いだとは自覚しております…。
しかし、レナ様に仕える魔物として恥ずかしくないよう、精一杯の努力をして強くなると誓います。
どうか…お願いしますっ!』
モスラの丁寧すぎる懇願を聞いたレナは、目を丸くしている。
さすが、他の先輩従魔よりも長い年月を生きてきた知能の高い蝶々というところか。
頭を下げて助力を請う様子に、主人は苦笑した。
不安そうな顔でレナとモスラを交互に見ているアリスに「大丈夫だよ」と声をかけて、モスラに会釈を返す。
「こうして話すのは初めまして、だね。モスラ。
頭を下げなくてもいいから、普通にこちらを見て。
私は、魔物使いの藤堂 レナです。
これからよろしくねっ!
契約上は私が主人だけど、常に私の側にいることを強要するつもりはないから。
強くなって、アリスちゃんの側にいて護ってあげて欲しい。
私にとっても大切なお友達だから。護衛は貴方にお任せするね。
強くなるお手伝いは、もちろんさせて!
一緒に頑張ろうっ」
『………!はい!ありがとうございますっ』
「もう。丁寧すぎるよー?」
嬉しそうに触覚をピコピコ動かす大きな蝶々がおかしくて、レナは柔らかく微笑む。
モスラと会話出来るようになった先輩従魔たちがこぞって彼を構いにかかって飛びつき、またも場はパッと賑やかになった。
アリスとパトリシアと共に、モスラのステータスが表示されているギルドカードを覗き込むレナ。
「名前:モスラ
種族:ジャイアントバタフライ・ネオ♂、LV.1
適性:緑魔法
体力:20
知力:15
素早さ:12
魔力:15
運:8
スキル:[吹き飛ばし]、[威圧]、[風斬]
ギフト:[大空の愛子]☆5」
成る程…普通の生物がモンスターに変質すると、通常種より強くなる、というのは本当らしい。
レベル1とはとても思えない強さである。
行く末が恐ろしい。
ちなみにアリスの知識によれば、モンスターに変質する際には極まれに「ネオ」の名を持つ新種が生まれるそうだ。
レナさんの幸運は今日も絶好調のようである。
スキルとギフトの詳細を見ていこう。
ーーー
[吹き飛ばし]…大きな翅で風を起こし、対象を吹き飛ばす。通常時のはばたきに威力補正がされる。
[威圧]…対象を睨む事により、精神を恐慌状態にさせる。睨む強さにより、どれだけの圧をかけるか調節が可能。
[風斬]…鋭い風の刃で相手を切り刻む。
連続で使用していけば、徐々に威力が上がっていく。そのぶん消費魔力も多くなる。
【大空の愛子】…空に愛された者に贈られるギフト。
愛子が空を飛んでいる時は天候に恵まれる。また、常に風向きが追い風となる。
ーーー
なんてズルさなんだ!
これから強くなる、とモスラは言っていたが、レベル1の時点で既にスキルとギフトが充実しまくっている。
呆れたようにレナとモスラを見やるパトリシアとアリスの視線を、冷や汗を流しながらスルーして、ご主人さまはモスラ育成計画をすでに考え始めていた。
同時に、これから息子たちがどのようなちょっかいをかけて来るかを予測し、その対策を練っている。
相手は自分たちよりはるかに"オトナ"。
人生経験もあるし、貿易会社社長としての社会的信用も人脈もあるだろう。
アリスはこれから起業する。
その経歴に、自分たちが傷をつけてしまってはいけない。
レナたちが単純に暴力に暴力で返したら、そこから揚げ足を取られてバイヤーアリスの信用が落とされてしまうかもしれない。
幼い少女を暴力で脅す卑怯者なのだ。
自らの悪事は隠し、幼女を陥れるくらいするだろう。
相手の意表を突く作戦を立てて、動揺しているうちにたたみかけて脅し、アリスとお屋敷を諦めさせなくてはならない。
相手の退路を全て完璧に絶ってしまえば、追い詰められて凶行に走る危険もあるので、おどろかすくらいが丁度良さそうだ。
腹立たしくはあるが…その分、死ぬほど驚かしてやろうと決めた。
奇をてらった作戦は、レナの超得意分野である。
利用できるものは、惜しみなく利用しよう。
スッと目を細めたカッコイイご主人さまを見て、従魔たちは同意するように黒ーく笑い、パトリシアは拳を天にかかげてみせ、アリスが「頼もしいよお姉ちゃんたち」と呟き明るく笑う。
小さなオレンジ髪の頭が、全員に対して丁寧に下げられる。
「迷惑をかけてしまうけど…お願いします、お姉ちゃんたち。
私を助けて下さい」
…お姉ちゃん達の返事はもちろん、決まっている!
小さな友達のために。
息子だろうが荒くれ者だろうが、何だって撃退してみせるつもりだ。
「まかせてよー!」
「悪い奴はぶっ飛ばしてやらなきゃなっ!」
かくして、アリスを守ろう大作戦!が始まった。
▽Next!モスラを強化しよう!
▽不届き者たちの情報を集めよう。
▽協力者を探そう。
ご主人さまの運は相変わらず最強でした。
そして従魔契約の判定は結構いい加減なようです!
読んでくださってありがとうございました!