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国に飼い殺され続けた魔女、余命十年の公爵の養女になる? 〜養女契約のはずが、妻の座を提案されてしまった〜 - 50.牢での出来事
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50.牢での出来事

「グローミングの若様、ようこそおいでくださいました。場所が場所だけになんのもてなしも出来ませんが……」


 コツコツと靴音が牢に響いた途端、監視役の男ががばりと立ち上がって頭を下げた。対して、ヴェスペリオンは先日と打って変わって堂々とした立ち居振る舞いで監視役に労いの言葉をかけている。賭けは半々だったが、こうして姿を現したという事は皇太后は彼の提案を受け入れたらしい。


「お気になさらず、私にとっても叔母上の役に立つチャンスですから」


「ご覧の通り魔力拘束具は付けておりますので安心ですが、くれぐれも近付きませんよう……。それではよろしくお願いいたします」


 一礼した監視役が牢から出て行く。いくらヴェスペリオンが六大公爵家の者とはいえ、一人で牢に残すとは。先ほどの発言といい、監視とは名ばかりでナディアがなにかを出来るとは露ほども思っていないようだ。


「さて……、お会いするのは二度目……で間違いないでしょうか? 先日とは印象が随分と違うようですが」


 話しかけられると思っていなかったナディアは予想外の質問に戸惑ったが、別に変な事は聞かれていない。ここは素直に答えるべきかと口を開いた。


「……ああ、そういえば先日はまだ子供の姿でしたね。あの姿ではなにかと不便なので元の姿に戻ったのですよ」


 ヴェスペリオンはセレスティンを送り届けた翌日にはトワイライト公爵家へと戻っていった。出立時に挨拶が出来れば良かったのだろうけど、生憎とあの日は突然押しかけてきたヴェレクンディア皇女への対応に追われ、ナディアは顔を出せなかった。だから大人になった姿にヴェスペリオンが驚くのも無理はない……と思ったのだけど。


「なるほど……魔女というのは比喩的表現だと思っていましたが、誇張ではなかったのですね」


 眉間にしわを寄せ、同じ空間に居たくないと言わんばかりにナディアへと顔を背けるヴェスペリオン。言うや否や、あっと言う間に牢を出て行ってしまった。


 ナディアとヴェスペリオンは協力関係にある。だからたとえ内心で皇太后側に有利な証言をするつもりだったとしても、こちらに疑われないように接してくるだろう……。そう思っていたので、どストレートに嫌悪感を表したヴェスペリオンの行動は、ナディアを酷く混乱させた。


(……なんだ? 居るかもしれない監視を意識しての演技か? それとも、私の姿を見て心変わりを? もしくは最初から皇太后側で、取り繕う事も出来ないほど嫌悪感を抱いたのか?)


 どれもあり得そうですぐには判断がつかない。


 魔女。嫌悪感もあらわにこの単語を言われたのは森を出て以来初めての事で、初めて言われた時のように胸が痛んだが、ナディアはそれをおくびにも出さなかった。


 彼の態度は想定外だけど、イノセントが居るのだから計画が破綻する事はない。そう自分に言い聞かせてみたものの、ナディアの予想とは裏腹に戻って来たヴェスペリオンの表情は険しいままだった。


 どれくらいの時間が経っただろうか。ヴェスペリオンは押し黙ったまま、ナディアの方を見ようともしない。鉄格子がはまった小さな窓から見える空の様子は、先ほどまで憎らしいほど変わりがなかったが、ここに来てようやく橙色へと徐々に染まりつつある。


 効きもしない魔力拘束具をつけて大人しくしているのだから、書籍の一冊や二冊くらい暇つぶしの為に差し入れても罰は当たらないぞ……とくさくさしながら、ようやく訪れた日没にナディアは安堵した。


 今のところ、差し出された食事に毒が盛られていた以外に怪しい動きはない。これで殺せると踏んだようだけど、生憎とナディアは長い森暮らしで毒耐性が鍛えられている。一向に様子が変わらない事に気付き、そろそろ本格的に動き始めるはずだ。


(さて……考えたくはないけど、もしイノセントが裏切ってたらどうするべきかな? 暗殺者を返り討ちにすれば牢屋行き。だったらいっそ、暗殺者に殺された方がこの先苦しまずに済む? いやいや、イノセントが裏切ったと決まった訳じゃない、弱気になっちゃ駄目だ。それにもしここで私が死んだら、エバーナイト公爵家はどうなる?)


 当主が意識不明な上、爵位を受け継ぐ者も居ないとくれば没落まっしぐらだ。バーナードやカトリーヌ、気の良い使用人達や領民の今後がナディアにかかっていると言っても過言ではない。自分が苦しみたくないからといって安易な結論に走っては彼らに恨まれてしまう。


 それは一瞬だった。察した殺意の方向に目を向けると、窓の鉄格子の隙間から矢が飛んでくるのが目に見えた。しっかりと頭部を狙ってきたそれを、慌てる事なく首を傾けて回避する。


 遠くから、舌打ちのような声が聞こえた。しくじるとは思っていなかったのだろう。だけど矢を射る一瞬の殺意が隠せていなかった。そんな人物にやられるほどナディアは安穏と生きてきたつもりはない。


(舐められたもんだね……!)


 だが警戒されすぎるよりは良いのかもしれない。お陰で次の攻撃まで一瞬の間が空いた。ナディアはその隙にヴェスペリオンの様子を盗み見た。


 驚いたように目を見開き……恐怖のあまり今にも泣き出しそうな表情で椅子から立ち上がっている。彼の行動と表情は、ナディアが確信を持つのに十分だった。

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