45「こんな兄貴とかキモくね?」①
由良家で夏樹たちがお寿司を食べている頃、三原家では兄弟が睨み合っていた。
「今日は、杏が世話になったみたいだね。ありがとう」
「……クソ兄貴。あんたの彼女なんだから、ちゃんと面倒見てろよ」
兄優斗の部屋で、椅子に腰掛ける兄をドアに背を預けて一登が睨む。
「杏は幼馴染みだよ」
「……そういえば、彼女作ったんだったな。てっきり、杏や明日香さんとかとくっついているもんだと思っていたから、正直驚いた」
「彼女? ああ、乃亜ちゃんのことかな? あの子とはもう別れたよ」
「……なんだって?」
つい昨日、杏を経由して優斗が恋人を作ったと聞いたばかりなのに、もう別れているとはさすがに弟の一登でも思わなかった。
いくら兄でも節操がなさすぎであろうと呆れる。
「鬱陶しいほど擦り寄ってきたから相手をしてあげていたんだ。夏樹が興味あるみたいだったし、幼馴染みとして悪い子じゃないか調査してあげただけだよ」
「よく言うぜ。なにが幼馴染みだ、杏を使って夏樹くんの家庭をぶっ壊したくせに!」
一登にとっても、由良家の家庭崩壊は忘れられないことだった。
夏樹の母は幼い頃からとても優しくて、杏の父も穏やかないい人だった。夏樹だって昔から兄よりも兄みたいな存在で、幸せになって欲しかったのに、杏の言動のせいで家庭は壊れてしまったのだ。
杏が夏樹に暴言を吐き、兄と比べる度に一登も窘めてきた。ときには怒鳴って注意したこともあった。しかし、なにもかわらなかった。
杏が、夏樹を貶める度に、彼が興味を失っていくのがわかったので、修復ができるうちにと頑張ったのだが、無理だった。
一登としては、兄優斗がなにかよからぬ命令でも杏にしているのではないかと疑っていたが、自分の知る限りしていない。
「夏樹の家のことはよく知ってるし、僕も悲しかったよ。でもさ、僕に原因があるみたいなことは言わないでほしいかな。一登だって、杏の性格にもともと問題があることは知っているじゃないか」
「…………」
「昔から構ってちゃんで、自分がお姫様かなにかだと勘違いしている。自分が一番じゃないと泣くし、喚くし。夏樹に仲良くしてあげてと言われたから、仲良くしてあげているけど、正直、ちょっとうざい子だよね」
「――な」
肩をすくめた優斗に、一登が言葉を失った。
幼い頃から数年間、ずっと一緒にいた杏をまさかうざい扱いするとは思いもしなかったのだ。
優斗の言う通り、杏は性格に少々難がある。気に入らないことがあればすぐ不機嫌になり、しばらく対応に困ることもある。優斗の周りにいる子と仲良くやっているように見えて、裏では悪口を言っていたり、昔からの幼馴染みということでマウントを取ったりもしているのを知っている。
だからといって、散々一緒にいてチヤホヤしてきた相手を「うざい」扱いするとは思わなかった。
「僕ってモテるから、女の子に困ったことってないんだけど、ちゃんと恋人がほしいなって思っても邪魔してくるんだよ。最初は可愛い嫉妬くらいだと思っていたけど、明日香とそろって陰険なこともするし、ちょっとうんざりだよね」
「だったら、関わらないようにすればよかったじゃないか」
なんとか声を絞り出すことができた一登に、「え?」と優斗は不思議そうな顔をした。
「明日香たちもそうだけどさ、お金は持ってくるし、エッチさせてくれるからちょうどいいかなって。くれるって言うならもらっておこうかなって」
欲まみれな発言に、こんな奴の弟に生まれたことを心底嫌に思った。
お待ちかねの優斗くんでした。
もう一話続きます。
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