ゲームフェイズ1:『5』教皇1
「あっ、タヌキさんが可愛くなってる!」
「はい!可愛いバラでしょ!?でしょ!?お気に入りの品種なんですよう!」
……タヌキの胴体に、かわいいバラのリースがくっついていた!どうやらタヌキ達は……吊るされてきたようである!
「……樺島君。ちょっと」
そして、そこでデュオがちょっとバカを呼んだので、バカはほいほいとそっちへ行く。……すると。
「俺達、『13』の部屋に薔薇があるって聞いたと思うんだけれど……あの、もしかして、数字、間違えた……?」
「ん?うん……うん!?あっ!」
……バカは、ここでようやく気付かされた。
「うん、そうだね……俺達がさっき入ったのは『12』の部屋だよ。『吊るされた男』だ。ちなみに『13』は『死神』なんだけれど……」
「あああああ、事故現場の方……!」
どうやらバカは……デュオ達に、『かわいいバラがある部屋』を間違えて教えていたらしい!
「ご、ごめん……ごめんなぁ、デュオぉ……ごめん、本当に……」
「あ、いや、いいんだ。大丈夫。対処できたし、逆じゃなくて本当によかった、というか……あはは……」
バカがしょんぼりしながら謝ると、デュオは『調子が狂うなあ』というような顔で、しかし苦笑いしながらバカの背中をぽふんと叩いてくれた。なのでちょっと、元気を出すバカである。
「えーと、樺島君、数字を覚えるの、苦手かな?」
「うん……苦手……」
「じゃあ、次からは『こういう部屋だった』って教えてくれればいいよ。そうすれば俺と七香さんが推測できる。幸い、俺も七香さんも、『タロットカード』の番号は把握してる」
「そ、そっかぁ……?デュオはすげえなあ……」
バカは『頭がいい人はやっぱりすごい』と尊敬の念を送りながら、また1つ、覚えた。
デュオが居るところでなら、『部屋の数字』よりも『どういう部屋だったか』を伝えた方が伝わりやすいことがあるようだ。そしてその方が、安全であるらしい!
「ということで、聞いておきたいんだけれど……」
そして、デュオはまた声を潜めて……バカにこっそり、尋ねてきた。
「……『死神』って、どういう部屋だった?事故現場、っていうのは……?」
……なのでバカは、『でけえ馬に乗ったかっこいい骸骨の騎士が槍持って向かってくるから投げ飛ばした!』と教えた。デュオは遠い目をしていた!
何はともあれ、こうして無事に3チームが戻ってこられたのだ。大変めでたいことである。
いつのまにやら、むつとヤエと五右衛門のきゃいきゃいの輪にはタヌキも参戦し、きゃいきゃいぽんぽこ、と楽しく賑やかにやっていた。仲良し!
「さて、次のチーム分けはどうする?」
そして、全員が集まれたので、チーム分けをする。……こうやって、全員が一旦大広間に集まるようにすると、チーム分けがとっても簡単である。バカは『最初とその次は、誰がいつ、どこで何してたか分かんなかったもんなあ……』と思いつつ、仕切ってくれているデュオに心から感謝した!
「もし可能なら、海斗君、俺達のところに来ない?」
「ぼ、僕か?」
更に、デュオはナイスフォローである!これはきっと、『海斗を移動させつつ、バカと五右衛門とヤエは移動しなくていいようにする配慮』なのだ!バカは、『やっぱり陽はすげえ!』と大いに感謝した!
「まあ、僕は構わない。樺島とは友達だが、まあ、ずっと一緒に居なきゃいけないってことも無いしな……。いいか?樺島」
「うん!大丈夫!」
そしてバカは、海斗が居なくたって大丈夫だ。……海斗がバカのことを信じてくれているのだから、バカは、大丈夫なのだ!
「じゃあ、俺と五右衛門とヤエで3人組か!よろしくなあ!」
バカはやる気に満ち溢れてにこにこ笑顔で五右衛門とヤエの手を握る。
……だが。
「あの……よかったら、ヤエちゃん、こっちに来ない?」
「え?」
……そこに、むつがそわそわと、声を掛けてきちゃったのであった!
……ということで。
「ヤエちゃん!よろしくね!」
「うん。よろしく……」
ヤエも、移動した。
……ヤエも、である。
これは全くの計算外だったが……仕方がない。むつが、『同い年くらいの女子が一緒だと安心する……』とそわそわキラキラとヤエを見つめていたので!
そして、ヤエが『行ってもいい……?』というような目でバカと五右衛門を見つめてきたので……バカも五右衛門も、駄目とは、言えなかった!
「……やぁだぁー、ねえちょっとぉー、こっちのチーム、一気に華が無くなっちゃったじゃないのよぉー、ねぇー」
五右衛門がしょんぼりしているが、花の女子高生2人は、手を取り合ってきゃいきゃいやっている。もうこれを邪魔することはできまい。……ああ!四郎がまた、はじき出されてしまって、気まずそうにしている!おっさんはきゃいきゃいの輪に入れないのだ!
「四郎ちゃーん、むつちゃんとヤエちゃんのこと、よろしくね?アッ!勿論、手ェ出したら駄目よォー?」
「……俺を何だと思ってやがる」
五右衛門がちょっと茶化しながらも釘を刺すと、四郎が渋い顔をした。
「むつちゃんもヤエちゃんも、気を付けてね!四郎ちゃんぐらいの齢になったって、男は皆オオカミよっ!」
「オオカミ!?オオカミかぁ!?確かに四郎のおっさん、カッコいいもんなあ!オオカミっぽいよなあ!……ん!?男は皆、ってことは……!?なあなあ、俺も!?俺も!?俺もオオカミぃ!?」
「アンタは馬と鹿よ!」
「馬……速いよな!鹿は、ええと、山に強い!うん!どっちもかっこいい!」
……バカが『かっこいい……!』とにこにこキラキラしているのを見て、むつとヤエはぽかんとしていたが、やがて、むつが笑い出し、ヤエもくすくす笑い出してしまった。
バカは、『なんか面白いことあったのか?』と首を傾げていたが……まあ、女子2人が笑ってくれたので、ヨシ!
……そして、ふと隣を見てみると、五右衛門も、なんだか嬉しそうな顔をしていた。彼もまた、むつやヤエがにこにこしていると嬉しいのであろう。
つまり……やっぱり五右衛門って、いい奴なのだ!バカはそう思って、また嬉しくなった!
……ということで。
「まとめるぞ。まず、『5』に樺島と五右衛門さん。『13』に、僕とデュオとタヌキと七香さん。『18』に四郎さん、むつさん、ヤエさん。……この3チームだな」
海斗がまとめてくれたのを聞いてバカは『うん!』と頷き、そして、隣の五右衛門に改めて『よろしくな!』と声を掛けた。五右衛門も『よろしくね』とウインクを飛ばしてくれたので、バカは『前回より仲良くなれてる気がする!』とニコニコである。
「じゃあ、また後で。どこかのチームが余程遅れない限りは、他チームの到着を待ってから移動してくれると嬉しいな」
そうデュオが言い置いて『13』の部屋へ向かっていったのを見送って、むつ達のチームも、バカ達のチームも動き出す。
……五右衛門は、ヤエににこにこと手を振って、『気を付けてね!』と笑いかけてやっていた。ヤエは、このゲームの開始時よりもずっと緊張が解れた顔で、むつと四郎と一緒に『18』の部屋へ向かっていった。
「……じゃ、アタシ達も行きましょ」
「おう!よろしく!」
そうしてバカ達も、デュオの個室から『5』のアルカナルームへと向かうのであった!
エレベーターの中、バカはちょっと考える。『5』のアルカナルームってなんだったっけ、と。
……が、バカはバカなので、思い出せない。今回のデスゲームはゲームがいっぱいあるのでとっても難しいのである!
分からないところへ突入するのは、ちょっと不安だ。バカは、『覚えていられたらよかったんだけどなあ……』と自らのバカさ加減を嘆くが、仕方がない。こればっかりは、しょうがないのだ。バカはバカなので……。
「うーん……アタシ達だけで大丈夫かしら……」
そんな中、五右衛門は五右衛門で、やっぱり不安らしい。……多分、バカよりも不安だろう。バカは、『5』の部屋に一度くらいは入ったことがあったような気がするから、何かは記憶のどこかに引っかかっているものを攻略すればいいだけだが、五右衛門は完全に何も知らないところへ突入することになるのだから。
「アタシ、頭脳派、って程じゃないんだけどぉ……樺島君のサポート、できるかしらぁ……」
……更に、バカがバカであるということもまた、五右衛門の不安の材料になってしまっているらしい!それはそう!
「五右衛門は俺よりは頭、いいよぉ。大丈夫だよぉ……」
「あ、うん、そ、そうね……?……って、そういう話じゃないのよぉー、んもぉー!」
五右衛門にばしばしと背中を叩かれつつ、バカは『もし、パズルとか頭を使うゲームの部屋だったら、どうしよ……』と益々不安になってきた!
……そうこうしている内に、エレベーターは無事、『5』のアルカナルームの前に到着した。
緊張しながらバカがドアを開け、それに五右衛門も続き……そして。
「……これ、どういう……」
五右衛門が険しい表情で見つめる先、部屋の奥の壁には、石板が嵌め込んである。
『法を遵守せよ』『法に背いた者には罰を』
石板にはそう刻まれており、そして……。
「罪を犯した者よ」
バカ達を見下ろす位置に、金刺繍の服を着た人が居た。
「汝らの罪を、ここに明らかにする」
……バカは、この人の服の布地に見覚えがある。
前々回、この部屋に来た時。あの時の、血だまりに落ちていた布の切れ端。……それは、この人の服の布だったのだ。
そして、その人……恐らく『教皇』であろうその人は、厳めしい顔で五右衛門を見つめ……言った。
「汝が最も重い罪を犯した罪人である」
五右衛門は、何も言わない。
「罪状は過失運転致傷罪。17歳少女は5級5号相当の後遺障害を負った」
五右衛門はただ黙って、厳めしい人を見つめ……。
「事故とはいえ、何の罪も無い少女の人生を大きく損なった罪は重い。よって……」
……次の瞬間、五右衛門の手が大きな裁ち鋏になって、厳めしい顔の人の胸を貫いていた。