60話『背信者(ベトレイヤー)』は恋の病を垂れ流す(2/4)
今回挿絵2枚です
吹き荒れる突風、燃え上がる夜景を背景に2人は向き合う。
「ところで」
「?」
「足元注意」
「?ーーー
ーーードォッ!!!
突如、列車のスピードが急上昇し、乗り物特有の徐々に速度が上がるのではなく、まるでその過程を抜き取ったように突然の急速化。
アイザックは対応できず列車から引き剥がされる。
「なぁッ!?」
気付けばカルヴァトスは列車のスピードに乗るように急接近、拳が飛んでくるが空中故に避けられない。
「ふんーーッ!」
ーーーバキッ!
「ぐぁッ...!?」
顔面に熱湯をかけられたような痛みと、世界が上下に回転する。
その瞬間、突然の急速に列車が対応しきれず脱線、火花と鉄が激しく飛散しあたり一面に飛びかかる。
ーーーーガガガガガガッッ!!!
「...」
その破片をカルヴァトスは次々と受けるが無傷、足場が激しく揺れる事も気にせず華麗なステップを踏んで体勢を維持している。
一方アイザックは脱線した列車に巻き込まれんと地に向けて『魔轟衝』、衝撃波を放ち反動で空高く飛び上がっていた。
「ぐっ...!!」
ーーードンッ!
さらに別方向へ『魔轟衝』を放ち、反動で市街地に飛び込んだ。
「逃がさないよ」
カルヴァトスは破片と糸を繋ぎ、それを投げる。
ーーーボンッッ!!
軽く投げたにも関わらず破片はとてつもない速度で飛び、糸を掴んだカルヴァトスは引っ張られるように跳躍した。
「ーーーがぁぁぁ!!なにが...何が起きてんだよ!!」
アイザックは市街地の間を飛び移り逃げ回る、その下を見るとまるでアイザックと並走するかのように逃げ惑う人々。
「ぎゃっ!」
1人、男が躓いて地面を転がる。
「や、やめーー!!」
それを逃がさんと襲いかかる『獣』の群れ。
「あぁもう!!」
ーーーダンッ!!
アイザックはその間に割って入り、『獣』に向けて『魔光斬』を放つ。腕から伸びる蒼光の刃は『獣』を容易く両断し、その流れを堰き止める。
「あ、ありがーーー
「早くいけぇッッ!!」
「あ、あひぃぃいいい!!」
アイザックの恫喝に男は肩を跳ねさせ、震える足で走り出した。
「くそっ!俺だってこんなことしてる場合じゃーー
「人助けしてる場合かなぁッ!!」
ーーードンッ!!
カルヴァトスに一瞬で追いつかれてしまった、アイザックは息を呑んで構えの姿勢をとる。
「それじゃあーー!!」
ーーーしかし、アイザックの隣を何かが通り過ぎた。
「通るぞ」
「えッ!?」
魔力を感じなかった、その影は拳を突き出し、その照準をカルヴァトスに合わせた。
ーーードンッ!!
「ぐーーッ!?」
その瞬間、カルヴァトスの脇腹が何かによって抉られる、その勢いのまま身体が大きく弾け大通りの奥に吹き飛んだ。
「え、えっと誰でしたっけ!!」
「ガレットだ、ついてこい」
「あぁ!ありがとう!!」
「あと敬語はいらない」
ガレットの背中を追ってその場から離脱する、残されたカルヴァトスは起き上がり膝をさすった。
「...次から次へと...ウジ虫みたいに」
「ノウス・C=カルヴァトス」
響き渡る冷たく機械的な声、アイザックが『変則競技場』で戦った時審判をしていた少女、チクアーノだ。
ふと見渡すとカルヴァトスは『機構星騎士』包囲されていた。
「こんなこと言っても無駄だとは思うけど、お前は包囲されている」
「みたらわかるよ」
白銀の影が無数に行き交う、その数20人。
「はぁ...面倒くさいなぁ、んで?」
ため息をついて一泊、チクアーノは応える。
「大人しく両手をあげて膝をついて、協力するなら命までは」
「はいはい両手ね...」
カルヴァトスは諦めたように肩を落とし、両手を上げようとする。
ーーーその瞬間。
チクアーノの右目が吹き飛んだ。
「両手をあげたけど?」
カルヴァトスはただ言われるがままに両手を上げていた。
「貴様ッ!!隊長に何をしたッ!?」
『機構星騎士』の1人が声を上げる、しかし...。
「...総員ーーー」
「え?」
「あぁ...なるほど」
チクアーノは右目を吹き飛ばされても倒れない、吹き飛ばされたその断面は無数の回路が見えている。
足元には鉄屑の破片が一欠片、右目を抉ったものだった。
「機械...もうそんな技術ができてるんだ」
「ーーー攻撃開始」
「う...うぉぉおおおおーーーッッ!!??」
白銀の影が包囲を潰すようにカルヴァトスに襲いかかる、しかしこの物量を持ってしても彼女の表情は崩れない。
「いいよ、遊んであげる」
とったのは構えーーーではなく舞いのポーズ。
「『天輪天舞』」
...
..
.
「ーーーベクトル強化だと?」
「あぁ、そうとしか考えられねぇ...」
「ふーん」
路地裏、アイザックはガレットとシュガーにカラクリを明かしていた。
「ベクトルっていうのは...エネルギーの方向のことかしら?」
「あぁ」
「ベクトル操作なら、古代にその手の魔法があると聞いた事がある」
「「操作」じゃない、アイツは方向を操ってるんじゃない」
「……?」
「最初から決まってる“向き”を、そのまま殺しにくる強さまで引き上げてる、撫でた水も、投げた破片も、走る列車も――元々そっちに進んでただけだ」
「...ふむ」
「でもカルヴァトスは、その運動を“限界まで加速"させる、だから軽く触れただけで、砲弾みたいになったんだ」
「……ベクトルの“強化”か」
「あぁ...操作じゃない、止めもしないし、曲げもしない、ただ...殺せる速さになるまで一気に引き上げるだけだ」
その時、遠くで激しい戦闘音が響き渡る。それはまるでリズムをとるかのように規則的に、そして破壊的に。
アイザックが死の風で感知しにくかったのは単にそれまでは脅威にもならない物が、突然加速したから、だから間に合わなかった。
「でも...多分だけど、直接触れたものにしか効果がない、実際アイツが触ったモノしか飛んで来てないからな」
水滴も、列車も、全て彼女が触れていた、そこから推察できた。
「なるほどな...」
「え、それでアンタ達は...助けてくれたのか?」
「いえ?」
「違う」
「はん??」
「貴方私の『変則競技場』潰したでしょ」
「あ"」
そうだ、シュガーはアイザックが潰した『変則競技場』の支配人だ。アイザックが観客や『変則競技場』のシステムが気に入らず、結果的に観客に間接的な攻撃を続ける事で閉鎖に追いやった。
「で、でもあれはお前らが非人道的な事してたからだろ!」
「それでも私の食い扶持を奪った事に変わりはない、当然報復はするでしょ」
「まぁ...確かに」
「でも、貴方やシオンに報復したい所だけど、あんなのが暴れてたら...そりゃ私情を優先してる場合じゃないわよね」
「え、優しい」
「殺すわよ」
「ごめんなさい...いや、マジで」
「それで、なにか策はあるの?」
「それが全くないんだよな...そもそも近づけないんだ」
小石を少し撫でるだけでそれを吹き飛ばし白銀を蹴散らすカルヴァトス、数十人でかかっていても誰1人として触れられていない。
カルヴァトス周りを意にも介さず、ただ擦り、撫で、舞っていた。
「でも、手足を封じてやれば多分無力化はできるはすだ!」
「それができないからいま『機構星騎士』はボコボコにされてるわけだけど」
「ぐ...こんな時ミークがいればなぁ...」
夕食を必要以上にねだる彼女のニヤケ面を思い出すとすこし腹立たしくなる。
「くそぉ...いて欲しい時にいないなぁ」
だが考えても仕方がない、必死に対抗策を練る。
「強くできるということは、弱くもできるはずだ、そう考えると物理が全て効かないと仮定するべきだろう」
「ちょっと待て、それ強すぎないか!?」
ーーードンッ!!
その時響く轟音、遮蔽物から覗き見るとそれはまるで答え合わせでもするかのように、カルヴァトスは自身に飛んできた大岩を片手で止めていた。
「岩系魔法!?珍しいの使うね!」
「く...くそッ!!」
「じゃこれ返すね」
ーーーボッッ!!
「べぎゃっ」
飛んできた時の倍の速度と威力で大岩が跳ね返る、それを放ったであろう男は潰れた音と血飛沫をあげてアイザック達の隣を通過した。
「うわ...」
「これで確信に変わったわね」
「これどうやって倒すんだよッ!?」
であればアイザックは太刀打ちできない、どの攻撃も無力化されてしまえば対抗策は無い。
「落ち着け、そこがポイントだ」
「ポイント?」
「そう...強すぎるのがポイント」
「あぁ...そういう事...」
シュガーは納得したように頷いた。
「え、つまりどういう事?」
「まだ年端もいかない女がアレほどの力があるなら...
...当然、それを可能にする代償...つまり制約があるはずだ」
次回投稿日は2\12 7:10!
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