猫ちゃんとキラキラを探して
「シロ! ほらっ、キラキラだよ」
僕はシロの大好きな、キラキラ光るボールを投げて遊ぶ。
シロは投げたボールが、床や壁に当たってキラキラ光りだしたら追いかける。
シロは小さくてまん丸な体をフリフリさせながらボールで遊ぶ。
シロは僕の家族。
僕の大好きなお兄ちゃん。
僕よりも先にママとパパの家族になったからお兄ちゃんなんだ。
シロは僕の傍を離れない。
僕のことが心配なんだよ。
トイレに行く時も、お風呂に入る時も、学校へ行く時も、ドアの前で僕を待つんだ。
でも、今日は僕が学校から帰って来た時、ドアの前にシロはいなかった。
シロは、シロのお気に入りの場所のソファにいた。
「シロ? 今日はお迎えしてくれないの?」
僕がシロの頭を撫でるとシロは嬉しそうに、ゆっくりと尻尾を振った。
元気がないシロ。
「シロ! ほらっ、キラキラだよ」
僕がボールを投げると、壁に当たってボールはキラキラ光るのに、シロは追いかけない。
ママは、疲れているんだよと言うから、今日はシロと遊ぶのを諦めた。
でも、次の日も、また次の日もシロはキラキラを追いかけない。
「シロ? どうしたの? このキラキラは嫌なの?」
僕がシロの目の前にキラキラ光るボールを向けると、シロはゆっくりと目を閉じた。
やっぱり、このキラキラは嫌なんだね。
だから僕は明日、学校が終わったらキラキラを探しに行こうと思った。
友達にキラキラがどこにあるのか訊いてみると、大きな木の上にあるよと言う。
大きな木といえば、学校の帰り道に通る神社にある。
僕は一人で神社へ向かった。
寒くても、怖くても、シロのためにキラキラを探すんだ。
大きな木はたくさんの階段を上ったところにある。
何度か休憩をしながら僕は階段を上った。
どんどんと風が冷たくなる。
暗くなり始め、怖くなる。
風が吹くと、草木が音を立てる。
誰かの叫び声に聞こえる。
怖くて足が止まる。
すると、階段の上から白い何かが下りてくる。
近付くにつれて、その白い物が猫ちゃんだと分かった。
「あっ、猫ちゃん。こんにちは」
「こんにゃちは」
猫ちゃんに挨拶をすると猫ちゃんが返してきた。
「えっ、猫ちゃんが喋った!」
「猫だって喋るよ」
「えっ、でも聞いたことないよ?」
「それは、聞こうとしてないからだよ」
「そうなんだ。シロの声も聞いてみたいな」
「シロ?」
「うん。僕の大切な家族なんだ」
「そうなんだね。ところで、どうしてこんな所にゃ一人でいるの?」
「僕、キラキラを探しに来たんだ」
「キラキラ?」
「大きな木の上にキラキラがあるって聞いたから、探しにきたの」
「へぇ~、ニャーも行くよ」
猫ちゃんも一緒に探してくれるから、なんだか怖いのも忘れちゃった。
シロの話をすると、猫ちゃんは僕を褒めてくれた。
お兄ちゃんのために頑張る僕は偉いんだってよ。
なんだか照れちゃったよ。
やっと階段を上ったら、大きな木が僕の目の前に現れた。
猫ちゃんと一緒に、大きな木の周りを回りながら、キラキラを探した。
何度見ても、キラキラはどこにもない。
せっかく来たのに。
僕は悔しくて泣きそうになる。
「ねぇ、あれじゃない?」
猫ちゃんが前足で差す方を見ると、キラキラ光る物があった。
葉っぱの隙間からキラキラが見えるけれど、よく見えない。
「高いなぁ。取りに行けないよね?」
「ニャーが取りにゃ行ってくるよ」
「えっ、でも大丈夫?」
「うん。ニャーは猫だよ」
猫ちゃんはそう言うと、簡単にキラキラの所まで木を登っていく。
「あったよ」
猫ちゃんは手に取った後、すぐに僕に渡してくれた。
僕が手に取ると、キラキラは光ってた。
どんな形なのかも分からないほど光ってた。
僕はキラキラをポケットに入れた。
「猫ちゃん、ありがとう。早くシロに見せなきゃ」
僕はもと来た道を戻る。
猫ちゃんも一緒に階段を下りる。
「あと一段で階段も終わりだね」
僕が隣を見ると猫ちゃんがいない。
「ニャーはここまでだよ」
猫ちゃんは階段の五段くらい上にいた。
「また、会えるよね?」
「うん、また遊びにゃおいでよ」
「うん、またね」
「うん、またね」
僕は階段を一段下りて後ろを振り向くと、猫ちゃんはいなくなっていた。
僕が猫ちゃんを探していると、ママが僕を呼んだ。
すぐに振り向くと、ママが心配そうに僕の所に近寄って、抱き締めた。
「ママ?」
ママは帰ってこない僕を探していたみたい。
いつの間にかお空は暗くなって、キラキラ星が見えていた。
「ママ、シロのためにキラキラを探して、見つけたんだ」
僕はポケットからキラキラを出すと、それは透明なビー玉だった。
何で?
ビー玉でシロが遊ぶわけないのに。
何で?
せっかくシロのために探したのに。
僕は泣いた。
ママは一年生の僕を抱っこしながら、家に帰った。
ドアを開けるとシロが待っていた。
僕はそれが嬉しくて悲しかったことも忘れた。
「わんっ」
シロがキラキラ光るボールを口に咥えて、僕に渡してきた。
「遊びたいの?」
僕はキラキラ光るボールを投げると、シロは追いかけた。
シロは、キラキラ光るボールが嫌じゃなかったんだ。
シロは楽しそうにしていたから、キラキラを探すことはしなくていいんだと思った。
そして夜は、シロと一緒に眠った。
シロは僕が寝る前に、顔をペロペロと舐めた。
くすぐったくて僕は笑っちゃったよ。
次の日の朝、シロはキラキラ光るボールを抱き締めて、シロのお気に入りのソファで永遠の眠りについていた。
僕が目を覚ますと、ママが泣きながら僕に言ったんだ。
シロは僕と遊ぶのが本当に好きだったんだって。
ほとんど動かない体で、僕が帰るのを待って、最後は僕と遊んでくれた。
「シロ、ありがとう」
僕はシロをギュッと抱き締めた。
キラキラ光るボールが何もしていないのに光りだした。
シロが僕に言っている。
「また遊ぼうね」
お読みいただき、誠にありがとうございます。